まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「哀愁のマンデイ(I Don't Like Mondays)」ブームタウン・ラッツ(1979)

 おはようございます。

 今日はブームタウン・ラッツの「哀愁のマンデイ」です。


The Boomtown Rats - I Don't Like Mondays (Official Video)

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The silicon chip inside her head
Gets switched to overload
And nobody's gonna go to school today
She's going to make them stay at home
And daddy doesn't understand it
He always said she was as good as gold
And he can see no reason
'Cause there are no reasons
What reason do you need to be sure

Tell me why
I don't like Mondays
Tell me why
I don't like Mondays
Tell me why
I don't like Mondays
I want to shoot
The whole day down

The Telex machine is kept so clean
As it types to a waiting world
And mother feels so shocked
Father's world is rocked
And their thoughts turn to their own little girl
Sweet sixteen ain't that peachy keen
Now, it ain't so neat to admit defeat
They can see no reasons
'Cause there are no reasons
What reason do you need oh, woah

Tell me why
I don't like Mondays
Tell me why
I don't like Mondays
Tell me why
I don't like Mondays
I want to shoot
The whole day down Down, down
Shoot it all down

All the playing's stopped in the playground now
She wants to play with her toys a while
And school's out early and soon we'll be learning
And the lesson today is how to die
And then the bullhorn crackles
And the captain tackles
With the problems and the how's and why's
And he can see no reasons
'Cause there are no reasons
What reason do you need to die, die


Tell me why
I don't like Mondays
Tell me why
I don't like Mondays
Tell me why
I don't like, I don't like, I don't like Mondays
Tell me why
I don't like, I don't like, (tell me why) I don't like Mondays
Tell me why
I don't like Mondays
I want to shoot, the whole day down

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彼女の頭の中のシリコンチップが

オーバーロードしてしまったんだ

それで今日は誰も学校に行かない

彼女のせいで生徒たちは家にいることになるだろう

父親には理解できない

彼がいつだって娘はとても行儀がいいと言っていたから

彼には理由がわからない 理由なんてないんだから

どんな理由だったらみんな納得するんだ?

 

なぜか教えてくれ

月曜日が嫌いなの

どうしてなんだ

月曜日が嫌いなの

なぜか教えてくれ

月曜日が嫌いなの

1日を全部 撃ち落としてやりたかったの

 

テレックスの機械は ニュースを待ちわびる世界に向けて

タイプを打っているときも きれいに保たれている

母親はとてもショックを受け

父親の価値観は揺さぶられている

そして、彼らの気持ちは自分の娘にむかう

素敵な16歳なんてそんな素敵なもんじゃない

負けを認めることはそんなにきれいごとじゃない

彼らには理由がわからなかった

理由なんてなかったから
どんな理由が望みなんだい?

 

なぜか教えてくれ

月曜日が嫌いなの

どうしてなんだ

月曜日が嫌いなの

なぜか教えてくれ

月曜日が嫌いなの

1日を全部 撃ち落としてやりたかったの

撃ち落としたかった、、

遊び場で遊ぶことは全部止められた

彼女は自分の人形で少し遊びたい

学校は早く終わり 僕らは学ぶのさ

今日の授業はどうやって人は死ぬか

そして、拡声器はパチパチ音を立て

警部はその問題と、方法と理由に取りかかるが

彼には理由がわからない

だって理由などなっかたのだから

死ぬことにどんな理由が必要だというんだろう

 

なぜか教えてくれ

月曜日が嫌いなの

どうしてなんだ

月曜日が嫌いなの  

1日を全部 撃ち落としてやりたかったの      (拙訳)

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 リアルタイムでこの曲を聴いた方は、当時アメリカで銃乱射事件をおこした16歳の少女が、その理由を「月曜日が嫌いだから」と言ったことから、この曲が作られたというエピソードとともに記憶されているのではないかと思います。

 僕もそうなのですが、その印象が強すぎたせいで、自分から積極的にこの曲を聴くことはなかったのですが、今回ふいにあらためて向き合ってみようかと思い、取り上げてみました。

 

 ブームタウン・ラッツアイルランド、ダブリン郊外のダン・レアリー出身のメンバーで1975年に結成され、1977年にデビューしています。

 時代的に、パンク・ムーヴメントの影響を大きく受け、デビュー曲「Looking After NO.1」は全英11位のヒットになっています。


Boomtown Rats - Looking After NO 1 (TOTP)

 翌年「Like Clockwork」(全英6位)では、当時のロック・シーンの変化にしっかり対応して、ニューウェイヴ・サウンドになっています。


The Boomtown Rats - Like Clockwork

  1978年には「Rap Trap」で全英1位を獲得。アイルランド出身バンドとしても、パンク/ニュー・ウェイヴ系のバンドとしても、当時はじめてのナンバー・ワンだったそうです。僕にはパンクでもニューウェイヴでもなく”ストリート・ロック”(ブルース・スプリングスティーン系)の曲だと思えます。ボブ・ゲルドフという人は、結構対応力の高い器用なソングライターのように思えます。


Boomtown Rats - Rat Trap [totp2]

 そして、その勢いに乗ってリリースされたのがこの「哀愁のマンデイ」でした。

 日本人には「哀愁のマンデイ」の一発屋のイメージがありますが、イギリスやアイルランドでは結構な数のヒットを持っているバンドなんですね。

  そして、バンドのリーダーであるボブ・ゲルドフがこの曲を着想したのは、アメリカ・ツアー中のことだったと言います。

 カリフォルニア州サンディエゴのクリーブランド小学校の向かいに住んでいた16歳の高校生、ブレンダ・スペンサーが1979年1月29日の月曜日に父親からクリスマスにもらったライフルで学校を銃撃したという事件が起きました。

 事件後自宅に立てこもった彼女に、電話で記者から理由を聞かれた彼女は "I don't like Mondays. This livens up the day." (月曜日が嫌い。これで1日が盛り上がる)と答えたと言われています。

 ボブはこう語っています。

 

アトランタでジョニー・フィンガーズ(バンドのキーボーディスト)と一緒にとラジオ・インタビューをしていたら、横にテレック機械があったんだ。そのニュースが出てきて読んだんだ。月曜日が嫌いだという理由で誰かに何かをするのは、ちょっと奇妙だよね。ホテルに戻る途中で考えて”彼女の頭の中のシリコンチップがオーバーロードしてしまった”と言ってみた。それを書き留めた。彼女にインタビューしていたジャーナリストたちは、”Tell Me Why?”と言っていたけど、あれはすごく意味のないことだ。これは完璧に無意味な行為であり、その行為の理由として完璧に無意味なものだった。だから、たぶん僕はそれを説明するために、完璧な無意味な歌を作ったのかもしれない。悲劇を利用しようとしたわけではないんだ」

                      (Songfacts)

  この曲はこの曲は32カ国で1位を獲得しましたが、その題材の話題性に頼ってヒットしたのだとずっと僕は思い込んでいたのですが、全英1位ヒットを飛ばしたばかりの人気バンドの、ドラマティックでキャッチーな新曲としてチャートを駆け上り、それを追いかけるようにその真相が広まっていき、という流れだったようです。

 月曜日は嫌い、というのは万人に共感されるフレーズですから、ただのポップ・ソングしてもすごくキャッチーなものだったわけです。

 ただし、実際にその事件が起こったアメリカでは楽曲のオンエアを控える放送局もあって、ヒットには至っていません。

 

 僕がこの曲を聴いてあらためて感じたのは、非常に印象的なアレンジがほどこされているということです。

 プロデューサーはベイ・シティ・ローラーズやスウィートを手がけたフィル・ワインマン。印象的なストリングスはフィアチア・トレンチによるもの。彼はポーグスの「ニューヨークの夢」の弦アレンジも手がけています。

 そして、リリカルなピアノはメンバーのジョニー・フィンガーズ。スプリングスティーンのピアニストのロイ・ビタンを思わせる、ストーリーテリング・スタイルの曲にぴったりな演奏です。

 

 ちなみに、彼はのちに日本に住み、 UAや荻野目洋子などのプロデュースや忌野清志郎のバンドにも参加しています。ボブが「哀愁のマンデイ」を着想した時に一緒にアメリカにいて曲作りにも加わっていたとして、彼は曲の著作権を求めてボブを訴え、2019年に和解し共作のクレジットと金銭的な補償を得たようです。

 

 さて、これは僕個人の見立てでしかありませんが、「哀愁のマンデイ」は仮に銃乱射事件と関係なくてもヒットポテンシャルがかなり高い曲であった(その事件で着想したわけですから、曲と事件は切り離せないですが)、事件とのリンクにより想定以上の大ヒットになったが、同時にその代償として彼らの他のレパートリーの印象が薄くなってしまった、いわば彼らにとって”劇薬”のような曲になったようにも思えます。

 

 事件からかなり時間がたったことで、事件との関係性の印象が薄れた結果、憂鬱な月曜日の歌の代表として、ラジオなどでオンエアされることも多くなっているようですが、同時に十代の若者により銃乱射事件のニュースを目にすることも少なくなり、やはりそういう事件との関わりで見直される機会も絶えないようです。

 

 客観的にポップ・ソングとして判断することが、いまだに難しい曲なのかもしれません。

 最後はトーリ・エイモスの2001年のアルバム「ストレンジ・リトル・ガール」に収録されていたこの曲のカバーを。 


I Don't Like Mondays

 

 弦アレンジャーがこの曲と同じ、ポーグスの「ニューヨークの夢」 

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