まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「トラックス・オブ・マイ・ティアーズ(The Tracks of My Tears)」ザ・ミラクルズ(1965)

 おはようございます。

 今日はスモーキー・ロビンソン率いるミラクルズの代表曲「トラックス・オブ・マイ・ティアーズ」です。


Smokey Robinson & The Miracles - The Tracks Of My Tears (Audio / Extended Stereo Mix 2005)

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People say I'm the life of the party
'Cause I tell a joke or two
Although I might be laughin' loud and hardy
Deep inside I'm blue

So take a good look at my face
You see my smile looks out of place
If you look closer it's easy to trace
The tracks of my tears

I need you (need you)
Need you (need you)

Since you left me if you see me with another girl
Seemin' like I'm havin' fun
Although she may be cute
She's just a substitute
Because you're the permanent one

So take a good look at my face, uh-huh
You see my smile (looks out of place)
Yeah, look a little bit closer
It's easy to trace, oh the tracks of my tears

Oh-ho-ho-ho I need you (need you)
Need you (need you)

Hey hey yeah
(Outside) a masquerading
(Inside) my hope is fading
(Just a clown) ooh yeah, since you put me down
My smile is my make-up
I wear since my break up with you

Baby, take a good look at my face, uh-huh
You see my smile looks (out of place)
Yeah, just look closer it's easy (to trace)
Oh, the tracks of my tears

Baby, baby, baby, baby
Take a good look at (my face)
Ooh, yeah you see my smile (looks out of place)
Look a little bit closer (it's easy to trace)
Yeah, the tracks of my tears

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 ”みんな僕のことをパーティーの盛り上げ役だって言う 

  ジョークの一つや二つ言うからね

  大声で笑っていても、胸の奥ではブルーだとしても 

 

  だから 僕の顔をよく見てごらんよ

  場違いな微笑みが浮かんでいることに

     近くから見たら 簡単にたどれるはずさ

  僕の涙のあとを

 

 君が必要なんだ 必要なんだ

 

 君が僕のもとから去った後で 

 もし僕が他の女の子と一緒にいるところを見かけて

 僕が楽しそうに見えても

 その娘がキュートでも、ただの身代りなんだ

 だって 君が永遠の恋人だから

 

  だから 僕の顔をよく見てごらんよ

  場違いな微笑みが浮かんでいることに

     近くから見たら 簡単にたどれるはずさ

  僕の涙のあとを

 

  君が必要なんだ 必要なんだ

 

   (外見は) 見せかけだけで

   (心の中は)望みが消えかけている

    ただの道化師、そうさ、君が僕を打ちのめしてから

    君と別れてしまってから、笑顔は自分を装うメイクなんだ

 

    だから 僕の顔をよく見てごらんよ

    場違いな微笑みが浮かんでいることに

       近くから見たら 簡単にたどれるはずさ

     僕の涙のあとを                                                        ”  (拙訳)

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     " track"は、本来は車や船の通った跡。轍(わだち)、航跡、などと訳される言葉です。"大きなサイズの跡"なんですね。それをほんの小さなサイズであるはずの”涙が流れた跡”に使ったということが、絶妙なインパクトになっているんですね。

 

 陽気なふりをして強がる主人公の目元にぐっとズーム・インしていくと、画面いっぱいのサイズで、涙の跡が映し出される、そんな効果が、このTrackという言葉を使うことで演出されているわけです。

 

 とてもわかりやすい言葉を使っていて、ひっかかりもありながら、とても深く心にしみてくる歌詞になっています。

 この曲はグループのギタリストであるマーヴ・ターピンが先に曲を作ったのですが、スモーキーがそれに歌詞をつけるのに半年もかかったといいますから、本当に苦労してたどり着いたものだったのでしょう。

 

 ちなみに、ネットを検索していたらイギリスの音楽誌「MOJO」が2000年に、ポール・マッカートニーブライアン・ウィルソン、ジェリー・リーバー、ハル・デヴィッド、ラモン・ドジャーキャロル・キングなど、伝説的なソング・ライターたち20名に”史上最高の曲ベスト10”を選ばせた企画があったらしく、その結果が出ていました。

 

1. In My Life — The Beatles
2. (I Can't Get No) Satisfaction — Rolling Stones
3. Over The Rainbow (虹の彼方に)— Judy Garland
4. Here, There And Everywhere — The Beatles
5. Tracks of My Tears — The Miracles
6. The Times, They Are A-Changing (時代は変わる)— Bob Dylan
7. Strange Fruit(奇妙な果実) — Billie Holliday
8. I Can't Make You Love Me — Bonnie Raitt
9. People Get Ready — The Impressions
10. You've Lost That Lovin' Feelin' (ふられた気持ち)— The Righteous Brothers

 

 この曲は堂々5位なんですね。

 ちなみに、6位に入っているボブ・ディランがかつてスモーキー・ロビンソンのことを「現代アメリカの最高の詩人」と評したことも良く知られています。

 もっと言えば、1位のビートルズの「イン・マイ・ライフ」はポールによると、スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズの曲の影響で書いたそうです(歌詞を書いたのはジョン・レノン)。

 

 何が言いたいかと言うと、スモーキー・ロビンソンって、本当にむちゃくちゃすごい人なんだなあ、ということです。僕が言うのもなんなんですが、、。

 

 これは、彼が凄い才能があるのに、奥ゆかしい、いい人だという(勝手な推測だけですが)、ことに起因することじゃないかなどと、僕はまた勝手に思うわけです。

 

 だいたい、あのモータウン・レコードベリー・ゴーディが彼に出会ったことによって生まれているんです。そして、彼はベリーの片腕として副社長も務めていました。いわば”モータウン土方歳三”なんですね。

 司馬遼太郎のおかげで”土方歳三”も年々クローズアップされるようになりましたが、昔の時代劇で新撰組をやると決まって、一番の大物俳優が近藤勇、当時のイケメン俳優が沖田総司を演じて、土方はだいたい渋目の俳優がやっていたものです。NO.2っていうのはなかなか目立てない宿命なのかもしれません。

 

 ちょっと、話が脱線してしまいましたが、並外れたヒットの勘とカリスマ性を持つベリー・ゴーディーと作詞作曲の才能と甘くソフトな声を持つスモーキーが、見事に補填しあえる関係だった結果、それが”モータウンの核”になったわけです。

 

 スモーキーの代表曲であるこの「トラックス・オブ・マイ・ティアーズ」ですが、発売当時は全米最高16位と、意外にそこそこのヒットで終わっていました。時間をかけて”スタンダード”になっていったんですね。

 その最初のきっかけは、まず2年後にジョニー・リバースがカバーし、オリジナル以上のヒット(全米10位)になっています。


Johnny Rivers - The Tracks Of My Tears

 実はこのカバーが収録されているジョニー・リバースの「Rewind」というアルバムは、以前にこのブログで紹介したフォー・トップスの「ベイビー、アイ・ニード・ユア・ラビン」のカバーも入っていていました。

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 ジョニーの「ベイビー、アイ・ニード・ユア・ラビン」は全米3位(オリジナルは11位)で、次のシングルが「トラック・オブ・マイ・ティアーズ」でした。

 どちらも、オリジナル以上にヒットしているんですね。この2曲はともに、時間をかけながらモータウンの歴史の中でも屈指のスタンダードになっていて、ジョニーのカバーがその最初のきっかけになっているのです。

 

 その後、リンダ・ロンシュタットもこの曲をカバーして全米25位まであがっています。


Linda Ronstadt - Tracks Of My Tears (Official Music Video)

 リンダはミラクルズの「ウー・ベイビー・ベイビー」ものちにカバーしています。

 *「トラックス・オブ・マイ・ティアーズ」と「ウー・ベイビー・ベイビー」はともにミラクルズの最高傑作である「Going To A Go-Go」というアルバムに入っています。

 

   この悲しく切ない曲にぴったりな声質の、コリン・ブランストーンも1982年にカバーしています。

www.youtube.com

 

 また近年では、オフィシャルなリリースはないようですが、2018年に若くして亡くなってしまったDJアヴィーチによるものがアップされています。


Avicii -Tracks Of My Tears (HQ)

 

 

 

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