まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「ミラクルズ(I Believe In Miracles)」ジャクソン・シスターズ(1973)

 おはようございます。

 今日はジャクソン・シスターズの「ミラクルズ」です。

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I believe in miracles, baby
I believe in you

They say the day is ending
Let's watch the Sun go down
And plan a holiday for two
For all eternity
We'll ride a cloud so you can see
The world I created just for you

Oh, I saw you standing on the street
I wanted to meet, just stop a while
You give me a smile to say hello
You made me feel so good inside
That I realized that I couldn't hide
The feeling that came when you failed to say

I believe in miracles
I believe in miracles
I believe in miracles
Don't you, don't you?


I don't know what people are saying
Or what games that they are playing
Or if they're playing that same old game on me
People never knowing where they're going or what they're showing
So, come on boys, show a little love for me

I believe in miracles
I believe in miracles
I believe in miracles
Don't you, don't you?

Here we are together, face to face
Forever in a place that I created
Just for you, you, you
So, people are better than what you give
Believe in dreams and think they're real
And, one day soon, your miracles will come true

I believe in miracles (Dont you?)
I believe in miracles (Dont you?)
I believe in miracles
Dont you, dont you?
I believe in miracles (Dont you?)
I believe in miracles (Dont you?)
I believe in miracles
Dont you, dont you?
I believe in miracles (Dont you?)
I believe in miracles (Dont you?)
I believe in miracles
Dont you, dont you?
I believe in miracles (Dont you?)

 

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私は奇跡を信じるわ、ベイビー

私はあなたを信じる

私は奇跡を信じるわ、ベイビー

私はあなたを信じる

 

1日が終わるわ

太陽が沈むのを見ましょう

そして、二人の休日の予定を立てよう

永遠に

雲に乗れば、あなたにも見える

あなたのために私が創った世界


ああ、通りに立っているあなたを見たわ

顔を合わせたくて ちょっと立ち止まると

あなたは微笑んでハローと言う

すごくいい気分になれた

隠せないと気づいたから

あなたが言えなかった時の気持ちを

私は奇跡を信じるわ

私は奇跡を信じるわ

私は奇跡を信じるわ

あなたは?あなたは?

私は奇跡を信じるわ、ベイビー

私はあなたを信じる

私は奇跡を信じるわ、ベイビー

私はあなたを信じる

 

みんなが何を言っているかわからない

どんなゲームをやっているの

それとも、いつもと同じゲームを私にしているとしたら

みんなには決してわからないわ

自分たちがどこに行くのか 何を見せるのか

だから、さあ、愛を私に見せて

 

私は奇跡を信じるわ

私は奇跡を信じるわ

私は奇跡を信じるわ

あなたは?あなたは?


私たちはここで一緒に 顔を合わせて

私の創った場所で永遠に

ただあなたのために

だから、みんなはみんなが与えるものより優れているの

夢を信じて 本当になると思って

いつかもうすぐ あなたの奇跡は実現するの

私は奇跡を信じるわ(あなたは?)

私は奇跡を信じるわ(あなたは?)

私は奇跡を信じるわ

                    (拙訳)

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 ジャクソン・シスターズカリフォルニア州コンプトン出身で、ジャクリーン・ジャクソン・レンチャー、リン・ジャクソン、パット・ジャクソン、ライ・ジャクソン、ジェニー・ジャクソンの五人姉妹、1971~2年頃に結成されました。

 男性の目を怖れる過保護な父親のおかげで、家の前庭でさえ遊ばせてもらえなかった彼女たちは、裏庭で退屈しのぎに一緒に歌ったり踊ったりするようになり、その後タレントショーに出たことをきかっけに、デビューしました。

 

 マイケル・ジャクソンのいたジャクソン5が大活躍していた時代でしたが、ジャクソン5は彼らの父親が金儲けしようと、子供たちに徹底的に芸事を仕込んだのに対して、彼女たちは父親から家に閉じ込められた中で、楽しみのために自主的に歌や踊りを始めたわけですね。

 

  彼女たちはProphesy Records(すぐにMums Recordsに名前を変えます)と契約し、

1973年に「(Why Can't We Be)More Than Just Friends」というシングルを出しますが、この曲のプロデューサーの一人に「カリフォルニアの青い空」のアルバートハモンドの名前があります。この時期彼は同じレーベルに所属していたんですね。

 

 そして、その次にリリースされたのがこの「ミラクルズ」でした。

  興味深いのは共作者で共同プロデューサーがボビー・テイラーだということです。この人はジャクソン5モータウンに紹介し、最初のアルバムを共同プロデュースした、まさにジャクソン5の”生みの親”なんです。

 ちゃんと、ジャクソン5とつながりがあるんですね。

 

    また共同プロデューサーのひとり、ドン・アルフレッドは「カリフォルニアの青い空」のプロデューサーで、さかのぼるとジャン&ディーンのシングルでビーチ・ボーイズもカバーしている「パサディナのおばあちゃん」を共作するなど、1960年代のサーフミュージックやソフトロックの仕事をたくさんしている人です。

 

 さて、彼女たちはスモーキー・ロビンソンがミラクルズを離れる時のフェアウェル・ツアーの前座をやったそうですが、”I believe in miracles”って歌詞がまさにぴったりだったから選ばれたんでしょうね。

 

 他にも人気TV番組「ソウル・トレイン」にも出たそうですが、彼女たちはもともとスターになりたいと思ったことはなく、ただただ家から出たかったのだと、のちに語っています。

 

 結局ヒットを出せないまま、1974年頃には彼女たちはアーティスト活動をやめてしまったようですが、1976年にタイガー・リリー(Tiger Lily)レコードというところから彼女たちのアルバムがリリースされています。

 

 このタイガー・リリーのオーナーがモーリス・レヴィという、ジャズやロックンロールの全盛期にレーベル(ルーレット)やジャズクラブ(バードランド)と著作権で大儲けした、マフィアとも太いパイプがあったという人物。

 ジョン・レノンの「ロックンロール」というアルバムは、レヴィから盗作訴訟騒ぎを起こされ、和解案として彼が著作権を所有するロックンロールをカバー・アルバムを作らざるを得なくなったために録音されたという話があります。

 

 ウィキペディアによると、タイガー・リリーはレヴィの税金対策で作ったもので、利益を上げることを目的せず、アーティストやスタジオからデモテープを入手し、アーティストの同意なしに、時にはアーティストも知らないうちにリリースした、という記述があります。

 

 ですから、このアルバムはほとんど市場に出回らなかったと言われています。

 

 また、アルバムにはシングルとは別のヴァージョンが収録されています。

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 そして、彼女たちが注目を集めたのが1980年代後半、イギリスのクラブシーンから始まった”レア・グルーヴ”のムーヴメントの中でした。それは、リアルタイムではヒットしなかった音源から、クラブで映える素晴らしいものを見つけようとする動きでした。

 1987年にこの曲はイギリスのヒットチャートに入るまでの人気曲になりました(全英72位)。

 ”レア・グルーヴ”は、日本のクラブ・シーンにも大きく影響を与え、”渋谷系”の原動力になりました。この「ミラクルズ」はその象徴ともいっていいように思います。

 

 そして”レア・グルーヴ”のムーヴメントで人気になった多くの曲が、再び消えてゆく中、この「ミラクルズ」の人気は衰えていないようで、2016年には日本でシングル盤がリリースされましたが、即完売したようです。

 

 

 そういう「ミラクルズ」のリバイバルを、実は彼女たちは長い間知りませんでした。

 

 2003年に、姉のリネッタ・コールマンが子供達に自分が「ソウルトレイン」に出ている映像を見せようと思いグーグルで検索して、はじめてイギリスや日本で大変な人気になっていることを知ったそうです。

 

 彼女たちは、自分たちの曲がまだ流通しているとは思いもしなかったと言っています。

 「ミラクルズ」の再評価の対価は彼女たちにはいっさい払われていなかったんですね。

  それは、彼女たちが所属していたマムス・レコードが1975年に閉鎖したときに、曲の権利と一緒に彼女たちの印税の権利も売ってしまっていたからのようです。本人たちに無断で。あきらかに彼女たちのものではない(スペルの間違った)サインのされた契約書があったそうです。

 彼女たちは訴訟を起こしたようですが、どうなったかは不明です。

 

 デビュー当時も、彼女たちの印税は、コンサートやプロモーションの資金に充てるということで一切払われなかったと言わていますから、アーティスト活動で彼女たちはほとんどお金をもらっていなかったことになります。

 

 

 ポップ・ミュージックの世界というのは、大衆には夢のような世界を描いてみせながら、現実では、創り手や演じ手にとって、ものすごく不利なシステムでまわっていました。彼女たちのようなエピソードは本当につきなくて、やはり辛い気持ちになります。

 

 

 今後も「ミラクルズ」の人気が続いて、何らかの対価が彼女たちに払われるようになることを祈るばかりです。

 

 あらためて「ミラクルズ」を聴き直してみると、メジャーレーベルでは作れない、荒削りだけれど、音盤からはみ出してくるような勢いを感じます。純粋なエネルギーというか。

 そういうところが”レア・グルーヴ”の流行が終わっても、変わらず今も人気がある理由のひとつであると思います。

 プロ志向ではなかった彼女たちのアマチュアっぽいみずみずしさが、うまく引き出された、まさに”奇跡”の1曲なのでしょう。

 

 最後はこの曲を共作者である、イタリア出身のシンガー・ソングライター、マーク・カパーニが1974年にセルフ・カバーしているので、そちらを。この曲を含め、わずか2枚のシングルしか残していませんが、なかなか魅力的なアーティストです。

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( 参考:Daily Journal   February 2009)

 

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