まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました(苦笑)。古今東西のポップ・ソングをエピソード、歌詞の和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。みなさんの音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればうれしいです。みなさんからの情報や思い出話などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「プリーズ・ミスター・ポストマン(Please Mr.Postman)」ザ・マーヴェレッツ(1961)

 おはようございます。

 今日は「プリーズ・ミスター・ポストマン」です。


The Marvelettes - Please Mr. Postman (1961)

 

 ” あっ!ちょっと待って 郵便屋さん

   待ってよ 郵便屋さん

 

  郵便屋さん 見てみてよ

  カバンに私あての手紙はない?

  どうしてこんなに時間がかかるの

  彼からの手紙が届くのに

 

     今日こそ何かあるはずよ

        遠くにいる彼が書いたものが

        どうか、郵便屋さん 見てみてよ

  手紙があるかどうか 私あての 

 

  ここに立ってずっと郵便屋さんを待っていたのよ

  じっと我慢しながら

  ハガキ一枚か手紙一通のためにね

  彼がこっちに帰ってくるって連絡を

 

  どうか、郵便屋さん 見てみてよ

  手紙があるかどうか 私あての 

  どうしてこんなに時間がかかるの

  彼からの手紙が届くのに

 

  もう何日も過ぎていったわ

  この目に浮かんだ涙を見てよ

  あなたは 立ち止まってハガキか手紙を渡して

  私の気持ちを晴らしてはくれなかったの

  

  郵便屋さん 見てみてよ

  カバンに私あての手紙はない?

  どうしてこんなに時間がかかるの

  

  ちょっと待って ちょっと待って

     郵便屋さん 調べてみてよ 

  (通り過ぎないで 私の涙が見えるでしょ)       ”(拙訳)

 

     この曲はモータウン最初の全米No.1ヒットです。それまでは、スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズの「ショップ・アラウンド」が第2位が最高でした。

 しかも、これはデビュー・シングルでしたので、それだけ楽曲のインパクトがあったのだと思います。

 

 マーヴェレッツは高校のグリー・クラブのメンバーを基に作られた女性ボーカル・グループ。その高校でタレント・ショーがあって、優秀者はモータウンのオーディションを受けられるということで、勝ち抜いた彼女たちはモータウンのスタッフにも高く評価されデビューすることになったそうです。

 

 「プリーズ・ミスター・ポスト・マン」はモータウンのオーディション用に彼女たちが用意したオリジナル曲で、メンバーのジョージアナ・ドビンズの友達のミュージシャンが作ったブルースの曲を彼女がグループに似合うようにドゥー=ワップ調に直したものでした。

 しかし、ドビンズは家の事情でオーディション後にグループを辞めることになり、かわりに新しいメンバーが加入しデビューすることになります。

 その際にモータウンのソングライターたちがこの曲を再度ブラッシュアップします。参考にしたのが、当時ヒット・ポップスを量産し始めた”ブリル・ビルディング”のソングライターたち(キャロル・キングなど)の作品だったと言います。

 そのモータウンのソングライターの中にブライアン・ホランドもいました。後に、スプリームスなどのモータウンの象徴的な大ヒット曲を量産するソングライター・チーム”ホランド=ドジャー=ホランド”のひとりです。

 

 彼はこの曲の共同プロデューサーでしたが、もうひとりプロデューサーで曲作りのパートナーでもあったロバート・ベイトマン(二人には”ブライアンバート”というチーム名がついていました)が、マーヴェレッツの大ヒットで調子に乗ってニューヨークに行ってしまったそうです。そして、そのベイトマンが自分の後釜としてホランドと一緒に曲を作ってはどうかと勧めたのがラモン・ドジャーだったらしく、1960年代最高のヒット・ソングライター・チームである”ホランド=ドジャー=ホランド”結成の引き金になったのが、このマーヴェレッツだったわけです。

 

 それからこの曲のドラムをマーヴィン・ゲイが叩いているというのもなかなか興味深いところです。

 

 さて、もともと大ヒットだったこの曲を、一段と大きなスケールで世界中に広めたのが二つのカバー・ヴァージョンです。

 

 まずはビートルズ。もともと彼らのライヴのレパートリーで、1963年のアルバム「ウィズ・ザ・ビートルズ」に収録されました。日本ではシングルとしてもリリースされていますので、日本中にこの曲が知られたのはこのビートルズのヴァージョンだったのでしょう。

   「ウィズ・ザ・ビートルズ」で彼らは他にスモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズの「ユー・リアリー・ガッタ・ア・ホールド・オン・ミー」やバレット・ストロングの「マネー(ザッツ・ワット・アイ・ウォント)」(日本のシングルのカップリングがこの曲でした)といったモータウン最初期のヒット曲を取り上げていて、かなり早い時期からモータウンをチェックしていたことがわかります。

 

 *ジョン・レノンはこういうポップなロックンロール ・ナンバーを歌わせたら間違いなく世界最高のシンガーのひとりですね。


The Beatles — Please Mr. Postman

 

 僕がこの曲をはじめて知ったのはこのヴァージョンでした。1974年のカーペンターズのシングル。彼らの三枚目の全米NO.1で、これが彼らにとって最後のミリオン・ヒットになりました。

 


Please Mr Postman [HD-Music Video] - Carpenters

 

 ディズニーランドで楽しそうに過ごしている映像ですが、このころすでにカレン・カーペンターは神経性の摂食障害になっていて、リチャードも過労でコンディションが相当悪い状態でレコーディングをしていたようです。

 そう思うと、映像の二人は痩せていて表情も物憂げに見えてしまうのですが、音源だけを聴く限りボーカルもアレンジも素晴らしく、完璧にカーペンターズの世界になっていると思います。

 

 モータウンビートルズカーペンターズ、と同じ曲を一世を風靡した3つのスタイルで楽しめるというのは貴重なことだなあと思います。今聴いても、それぞれにポップスの醍醐味を感じます。

 

 ただ、そんな中で、愛する人からの手紙を待つ、というシチュエーションだけが、すごい勢いで消滅しつつあるなあ、としみじみ思ったりするわけですが、、。