まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「ベイビー、アイ・ニード・ユア・ラビング(Baby,I Need Your Loving)」フォー・トップス(1964)

 おはようございます。

 「アメリカのラジオ、テレビで史上最もオンエアされた曲ランキング」というのがあって、ずっと1位だったライチャス・ブラザースの「ふられた気持ち」を21世紀に入ってからポリスの「見つめていたい」が抜いてトップに立っています。3位にはビートルズの「イエスタデイ」、そして4位はというと、これにはちょっとびっくりしたんですが、このフォー・トップスの「Baby,I Need Your Loving」なんです。

 


The Four Tops - Baby I Need Your Loving

 ”ベイビー、君の愛が欲しいんだ ベイビー、君に愛されたいんだ

 そばにいない時でも 君の声が聞こえる

 昼も夜も 君を抱きしめたい とてもさみしいから

 男が請い求めるなんて弱気な証拠だって言う人がいるけど

 でもそれで君がいてくれるなら、弱気なほうがいいよ

 最近よく眠れないし

  ベイビー、君の愛が欲しいんだ 君の愛をすべて手に入れたい

  ベイビー、君に愛されたいんだ 君の愛を残らず僕のものにしたい”(拙訳)

                            

 まさに、直球で愛を懇願する歌です。

 

 しかし、これが数多あるモータウンのヒット曲の中で一番、いや全ての黒人アーティストの曲の中でも、最もオンエアされたというのは、なぜなんだろう?と思ってしまいます。

 

 だいたい、フォー・トップスに限っても、もっと世界的に有名な曲があります。


Four Tops - Reach Out (I'll Be There) (1967) HD 0815007

  あと、僕はこの曲も好きです。


The Four Tops-I Can't Help Myself (Sugar Pie, Honey Bunch)

 

 フォー・トップスは1953年に結成し1956年にデビューしましたが、いっこうに売れず、1963年に昔からの知り合いのベリー・ゴーディーに招かれ最初はモータウン傘下のジャズレーベルと契約、ジャズアルバムを1枚作りますが、時流を見て売れないと判断したゴーディーがアルバムをお蔵入りさせ、彼らをポップス路線に変更させます。

 そのポップス路線第一弾がこの「ベイビー、アイ・ニード・ユア・ラビング」でした。曲を書いたのは前期モータウンのメイン曲をほとんど書いた作家チーム”ホランド=ドジャー=ホランド”で、メンバーがデトロイトのナイトクラブでショーをやっている時に曲の準備ができたから来いという電話があって、夜中の2時にレコーディングをしたそうです。

 そしてリリースされると全米最高11位の大ヒットになったわけです。

 

 さて、前述したラジオ・オンエア数ランキングですが、これはカバー曲もカウントされるんですね。

 で、この曲のテレビ、ラジオのオンエア数にかなり貢献したんじゃないかというカバーがあります。

アーティストはジョニー・リヴァース。1967年リリースで、こちらはフォー・トップス以上の成績で全米最高3位まであがっています。


Johnny Rivers -- Baby, I Need Your Lovin'

 ジョニー・リバースは1960年代にヒット曲を数多く出したシンガー・ソングライターで、自身が経営する会社からジミー・ウェッブを世に出した人でもあります。グレン・キャンベルの「恋はフェニックス」は彼がオリジナルでした。

popups.hatenablog.com

 ジョニー・リバースの「ベイビー、アイ・ニード・ユア・ラビング」の興味深いところは、演奏を”レッキング・クルー”がやっていることです。

 ハル・ブレイン(ドラムス)、ジョー・オズボーン(ベース)、ラリー・ネッチェル(ピアノ)、S&G「明日に架ける橋」の3人ですね。そこにギターのマイク・ディージービーチ・ボーイズ「ペットサウンズ」他)、ストリングスにマーティ・ペイチ、バックコーラスにはフィル・スペクターものでおなじみ、ダーレン・ラヴを含むザ・ブロッサムズと、素晴らしいメンツが集まっています。

 

 そしていかにもレッキングクルーらしい、アメリカ西海岸ポップス・サウンドになっています。

 

 モータウンを演奏していた”ファンク・ブラザーズ”と西海岸の”レッキング・クルー”

と、1960年代のアメリカン・ポップスを象徴するサウンドの”両巨頭”が演奏し、両方が大ヒットしたという貴重な曲でもあるんです。

 

 ジョニー・リヴァースの大ヒットによって、この曲は「Reach Out I'll Be There」や「I Can't Help My self」のような”典型的なモータウン・ヒット”というくくりに縛られない、王道のスタンダード・ポップスの地位につくことができたのではないかと僕は推測します。

 

 黒人白人の分け隔てなく、シンプルなラブソングとして広まることになったのです。

 

 ちなみに僕がこの曲を知ったのはもう少しあとで、この人のカバー・ヴァージョンでした。エリック・カルメン、1978年のアルバム「チェンジ・オブ・ハート」に収録されていました。


Eric Carmen baby i need your lovin'

 

 21世紀に入って、この曲の作者チーム”ホランド=ドジャー=ホランド”のひとりラモン・ドジャーが2度セルフカバーしています。

 まずは2002年のもの。


Lamont Dozier- Baby I Need Your Loving (Official Audio)

 

 そして、2018年。


Lamont Dozier - Baby I Need Your Loving ft. Lee Ann Womack (Official audio)

 基本アコギ一本でリー・アン・ウーマックという女性シンガーとデュエットしています。

 この曲をアレンジをとりのぞいて、歌だけにフォーカスしていくと、”カントリー”とシンクロしていく、そんな印象が僕にはあります。

 R&Bをカントリー・アレンジにしたというわざとらしさは感じません。元々こう言う曲だったと錯覚しそうです。そういう要素をこの歌は本来持っていたんですね。そして、作者自ら50年以上の歳月をかけてそれを引き出してみせたわけです。

 

 それで、僕は、この曲がアメリカ人に広く愛される理由がわかった気がしました。

黒人の音楽( R&B)と白人の音楽(カントリー)の要素が、意図せず見事なバランスを保ったまま支持され続けている、本当にめずらしい曲なんだと思います。

 

   それから、バリー・マンはこの曲が大好きで、同じようなクオリティと感情が込められた曲を書いてみようと思って「ふられた気持ち」を書いたとコメントしています。そう言われると確かに、ですね。

 

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