まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ハッピー・エンディング(Happy Ending)」ジョー・ジャクソン(1984)

 おはようございます。

 今日はジョー・ジャクソン。ゲスト・ヴォーカルにエレーヌ・キャズウェルを迎えた「ハッピー・エンディング」を。


TOPPOP: Joe Jackson - Happy endin

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I'm in a movie where boy meets girl
What happens to me in this brave new world?
Do I listen to my heart, do I listen to my head?
Do I look at what I see, or remember what I read?
When I tell you how I feel, do I wonder what I've said?
Is there nothing we can do about it?

Anyone
Anyone can be so hard hearted
But everyone
Still everybody wants a happy ending

It's not so easy, it's '84 now
How tough must we be to ask for more now?
Do I listen to my head, do I listen to my heart?
Do I try to feel the same as I feel when we're apart?
Do I think about the end when it's only just the start?
Is there nothing we can do about it?

Anyone
Anyone can be so hard hearted
But everyone
Still everybody wants a happy ending

I get so scared when I see the evidence against our case
Each movie so far this year ends up with someone crying
Or even someone dying

Do I listen to my head, do I listen to my heart?
Do I try to feel the same as I feel when we're apart?
Do I think about the end when it's only just the start?
Is there nothing we can do about it?

Anyone
Anyone can be so hard hearted
But everyone
Still everybody wants a happy ending

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   ”僕は映画の世界の中 ”ボーイ・ミーツ・ガール”ものさ

    この”すばらしい新世界”で 僕に何が起こるだろう?

    僕は自分の心に耳をすませたのか

    自分の頭にちゃんと聞いたのか?

    見えているものをしっかり見ているか?

    それとも読んだものを思い出しているのか?

            どんな気分か君に伝えた時 今何を言ったのか不思議に思うのか

 

    僕たちにできることは何もないのだろうか?

    誰か、ひとりひとりはとても無情になってしまうことがある

   でもみんなは、今もまだ幸せな結末を求めている

   

   生きやすい時代じゃない いまは1984年だ

   もっと何かが欲しいなら 僕たちはどれくらい強くならなくちゃいけないのか

   自分の頭に、自分の心にちゃんと耳を傾けてるか?

   僕たちが離れ離れになった時と同じように感じようとしているか

   いま始まったばかりでも 終わりのことを考えているか?

   

   僕たちにできることは何もないのだろうか?

    誰か、ひとりひとりはとても無情になってしまうことがある

   でもみんなは、今もまだ幸せな結末を求めている 

   

   (映画の)結末を見ると、僕は怖くなる 

   僕たちの望んでいるものとは逆だから

   今までのところ 今年のどの映画も

   最後は誰かが泣いて終わるか、もしくは死んでしまう

 

   自分の頭に、自分の心にちゃんと耳を傾けてるか?

   僕たちが離れ離れになった時と同じように感じようとしているか

   いま始まったばかりでも 終わりのことを考えているか?

   

   僕たちにできることは何もないのだろうか?

    誰か、ひとりひとりはとても無情になってしまうことがある

   でもみんなは、今もまだ幸せな結末を求めている ”       (拙訳)

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 この曲はジョー・ジャクソン1984年に発表したアルバム「ボディ・アンド・ソウル」からのセカンド・シングルでした。

 歌詞の中にさりげなく”In This Brave New World"と"It's '84,now"という言葉が出てきます。

 ”Brave This World”はオルダス・ハクスリーの「すばらしい新世界」の原題です。

ということは"it's '84"というのは、この曲が発売になった年ということだけじゃなく、ジョージ・オーウェルの「1984」にかかっているんですね。

 世界二大”ディストピア”小説に象徴されるような”終末的な世界”で、この歌の主人公は葛藤しているという設定なんです。

 

 この曲から35年以上たったいま、”ディストピア”をテーマにした映画が本当にたくさん作られています。

 そして、本物の世界もひょっとしたら”ディストピア”に向かっているのではないかという不安感が世界中で日々大きくなっているようにも僕には思えます。

 そして、まるで未来を予告した曲のようにも思えてきます。

 

 さて、この「ボディ・アンド・ソウル」というアルバムからの最初のシングルは「You Can't Get What You Want (Till You Know What You Want)」というもので、お前が自分が欲しいものが何なのかちゃんとわかるまでは、おまえの欲しいものなど手に入らない、と歌っていました。


Joe Jackson - You Can't Get What You Want (Till You Know What You Want)

 そして、この「ハッピー・エンディング」では、”ちゃんと自分の頭と胸に耳を傾けているか?”と自問しています。

 ジョー・ジャクソンは”自分の頭でちゃんと考え、自分の心で判断するんだ”と言っているわけですね。

 得体の知れないムードに巻き込まれずに、自分で考える、確かにできることはそれしかないな、と思います。

 

 ジョー・ジャクソンはパンク・ニューウェイヴが真っ盛りの1979年にデビューしたイギリスのシンガー・ソングライター。ソリッドなR&Rスタイルから、はじめはエルヴィス・コステロらとともにロンドンの”怒れる若者”の代表としてメディアに扱われました。しかし、クラシックやジャズなどの素養がしっかりとある彼は、シーンの中でが異色な存在で、その後彼の音楽スタイルは変化していきます。ジャズやラテンをクールに取り入れたこの「ボディ・アンド・ソウル」やその前作で、彼の最大のヒット「ステッピン・アウト(Steppin' Out)」の入った「ナイト・アンド・デイ」の時代が最も商業的には成功した時期でした。

 しかしその後も彼はコンスタントに活動を続け、毎回異なったテーマ、音楽性の作品をリリースし続けています。昨年末にはいかにも彼らしい雰囲気を持つ新曲も発表しています。


Night by Night

 

 

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