まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「アワ・ハウス(Our House)」マッドネス(1982)

 おはようございます。

 今日も昨日に続いて”僕達の家”の歌です。マッドネスの「アワ・ハウス」。


Madness - Our House (Official Video)

 

 ”  親父はよそ行きの服を着て

  おふくろは疲れて 休みが必要

  ガキどもは下の階で騒いでる

     姉ちゃんは眠りながらため息ついてる

  兄貴はデートがあるから 家でぶらぶらしてられないんだ

     

  オレたちの家 この通りの真ん中あたりにある

  オレたちの家   真ん中あたりに

    

    オレたちの家は 大人数で

 いつも何かが起こって いつもすごく騒がしい

 オレたちのおふくろは 家の整理が大好きで

 彼女をスピードダウンさせるのは無理

 ちらかってるのが許せないんだ

 

 オレたちの家 この通りの真ん中あたりにある

 オレたちの家 真ん中あたりにある

 ここから抜け出さなきゃいけないって 思うんだけどね

 

 親父は寝坊して仕事に遅れそうで

 おふくろは親父のシャツにアイロンをかけなきゃいけないし

 そのあと、子供達に軽くキスして学校に送り出す

 いろんな意味で 彼女はみんなにとっていなくちゃ困る人なんだ

 

    あの頃のことを思い出すと

 何もかもがウソがなくて ほんとに楽しい時間だった

 あんなに素晴らしくて あんなに幸福な時間

 おぼえてるよ

 オレたちがいかにただ遊んで毎日過ごしていたかをね

 だから言うよ 何もオレたちの邪魔するものはなかった

 ふたりのドリーマーのもとで

 オレたちの家 それはオレたちの城 オレたちのキープ(天守

 オレたちの家 この通りの真ん中あたりにある

 

 オレたちの家 それはオレたちが眠った場所

 オレたちの家 この通りの真ん中あたりにあった” (拙訳)

 

 クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤングの「僕達の家(Our House)」はロサンゼルスの恋人同士がくつろいで過ごす場所でしたが、こちらの「アワ・ハウス(Our House)」はロンドンの労働者階級の大家族が騒々しく暮らす場所です。

 

 マッドネスは1979年にデビューした”2トーン・スカ”のバンド。”2トーン・スカ”とはイギリスのパンク・ムーヴメントの後期に人気が爆発した、ジャマイカで生まれた”スカ”(日本の代表は東京スカパラダイス・オーケストラですね)をベースにしたロック。2トーンとは白黒2色のことで、ブームの中心バンド、スペシャルズが運営していたレーベルが”2トーン・レコード”という名前だったこと、白人と黒人が混ざったバンドが多く、黒人ルーツの音楽を一緒にやるという人種融合の意図もあって、そういうジャンル名で呼ばれるようになったようです。そして、何より日本人にもわかりやすかったのが、ジャケットが白黒(2トーン)だったことというのがあります。

 

 マッドネスもスペシャルズに続いて2トーン・レコードからシングルを出してデビューしましたが、2トーンとの契約はシングルだけだったらしく、アルバムを作りたかった彼らは、エルヴィス・コステロニック・ロウを輩出した”STIFF(スティッフ)レコードに移籍します。

 

 そして、彼らのデビュー2作目にして、一躍名前を広めたのがこの「One Step Beyond」です。


Madness - One Step Beyond (Official Video)

 これは”キング・オブ・スカ”と呼ばれるプリンス・バスターのカバーでした。


Prince Buster - One Step Beyond (1964)

 また、プリンス・バスターのレパートリーには”マッドネス”という曲もありました。


Prince Buster - Madness

 マッドネスの前身バンドは”ノース・ロンドン・インヴェイダーズ”と言って、スカはレパートリーの一部だったそうですが、ライヴでの受けがあまりにも良くてそれで注目されることになります。そして、バンド名もプリンス・バスターの曲からとって”マッドネス”に変更することにします。

 

   この頃僕は中高生だったのでおぼえているのですが、あくまでもシーンの本命はスペシャルズのほうでマッドネスは親しみやすく面白い対抗馬、という感じだったと思います。

 イギリスの全く違うエリアで偶然似た音楽をやっていただけで、スペシャルズの真似をしたわけではないとメンバーは語っています。スペシャルズはもっとパンクの影響を受けていて、僕らはパンクは好きだけれど影響は受けていなかったとも。

 

 特にこの「アワ・ハウス」は彼らの最大のヒットで、アメリカでは彼ら唯一のトップ10ヒットになった他、イギリスでは彼らの曲を使った同名のミュージカルも作られ2002年初演で2017年まで公演されていました。

 

 曲を書いたのは、バンドのギタリストのクリス・フォアマンとトランペッターのチャス・スマッシュ。彼らは、それまでバンドのメインのソングライターではありませんでした。

 特にチャスは前身のノース・ロンドン・インヴェイダーズ時代のベーシストで、マッドネス結成後にトランペッターとして復帰した人です。スカ・バンドじゃなかった時代の人が復帰して曲を書いたことが、結果的にバンドの”脱スカ路線”を決定づけることになるわけです。トランペットという”スカらしい”楽器に持ちかえたにも関わらず、というのが面白いですね。彼自身もともとスカに限らずいろんな音楽が好きだったようですが。

 その後の曲の歌詞をチャスが手がけることが多くなるので、この「アワ・ハウス」の歌詞もチャスが書いたと思われます。

 インタビューで彼は、オレたちは”労働階級のピンク・フロイド”だといった発言をしていますが、この「アワ・ハウス」はまさに労働者階級の家族の幸福感を描いたスタンダードとして英国民に長く愛される結果になっています。

 

   2012年のロンドンオリンピック閉会式での「アワ・ハウス」。


Madness Our House (Live) Olympics Closing Ceremony August 12th 2012

 

 

 

Best of

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  • アーティスト:Madness
  • 発売日: 2014/04/08
  • メディア: CD