まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「シェリー(Sherry)」ザ・フォー・シーズンス(1962)

 おはようございます。

    今日は、フランキー・ヴァリ率いるザ・フォー・シーズンズの代名詞と言ってもいい「シェリー」です。 

 


The Four Seasons - Sherry (Official Audio)

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Sherry, Sherry baby
Sherry, Sherry baby

Sherry baby (sherry baby) baby (Sherry baby)
Sherry can you come out tonight?
(Come, come, come out tonight)
Sherry baby (Sherry baby)
Sherry can you come out tonight?

(Why don't you come out, come out)
Come out to my twist party
(Come out) Where the bright lights shine
(Come out) We'll dance the night away
I'm gonna make you mine

Sherry baby (Sherry baby)
Sherry can you come out tonight
(Come come, come out tonight)
(Come come, come out tonight)
You'd better ask your mama (Sherry baby)
Tell her everything is alright

(Why don't you come out, come out)
With your red dress on
(Come out) Mmm. you look so fine
(Ccome out) Move it nice and easy
Girl, you make me lose my mind


Sherry baby (sherry baby) baby (Sherry baby)
Sherry can you come out tonight?
(Come, come, come out tonight)
(Come, come, come out tonight)

Sherry, Sherry baby
(Come, come, come out tonight)
Sherry, Sherry baby
(Come, come, come out tonight)
Sherry

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シェリー、シェリーベイビー
シェリー、シェリーベイビー

シェリーベイビー(シェリーベイビー)ベイビー(シェリーベイビー)
シェリー、今夜出てきてくれないか?
(さあ、さあ 出てきてよ今夜)
シェリーベイビー
シェリー、今夜出てきてくれないか?

(どうして出てこないの、出てきてよ)
僕のツイスト・パーティーにおいでよ
まぶしい光が輝く場所へ
(出ておいで)夜通し踊ろう
君を僕のものにするよ

シェリーベイビー 
シェリー今夜出てきてくれないか?
(さあ、さあ 出てきてよ今夜)

ママに訊いたほうがいいよ
何も心配いらないからと言って

(どうして出てこないの、 出てきてよ)
赤いドレスを着て
(出ておいで) う〜ん、すごくきれいだよ
(出ておいで) そっと体を動かして
ガール, アタマがおかしくなりそうさ


シェーリーベイビー (シェリーベイビー)ベイビー (シェリーベイビー)
シェーリー今夜は出てきてくれない?
(さあ、さあ 出てきてよ今夜)


シェリー、シェリーベイビー
(さあ、さあ 出てきてよ今夜)
シェリー、シェリーベイビー
(さあ、さあ 出てきてよ今夜)
シェリ

          (拙訳)

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    1960年代半ばのアメリカのアーティストで、ビートルズに対抗してヒットを飛ばせたのは、ビーチボーイズモータウン、そして彼らフォー・シーズンズだけだったと言われています。

   今の日本ではビーチボーイズモータウンより知名度はぐっと低いですが、クリント・イーストウッド監督が彼らの歩みを描いた「ジャージー・ボーイズ」(もともとブロード・ウェイの人気ミュージカルでした)で知った人もいるでしょう。

 「ジャージー・ボーイズ」でもしっかり描かれていましたが、彼らの魅力と言えばなんといっても、ボーカリストフランキー・ヴァリの個性が際立ったボーカルでしょう。

 ヒット曲の最重要要素のひとつは、ボーカル。それも求められているのは”上手さ”ではなく、一聴してそれとわかる特徴のある声質です。もちろん、ヴァリは歌もとんでもなく上手いですが。

 

 この曲のどあたまの”シェ~リ~”という、黒人のような、女性のような、ファルセットに全米のリスナーは一気に、がつんと、つかまれたわけです(デビュー曲でしかもメジャー・レーベルでもないのに、瞬く間に全米NO.1、しかも5週連続というすごい結果でした)。

 そして、もうひとつの最重要要素、もちろん、曲です。

 ボブ・ゴーディオという天才ソングライターがグループに加わったことで、”売れる”ことが見えてきました。ボブはフランキーのことを、レコードビジネス史上最もめずらしい声のひとり、と評していて、彼に歌を書くことはとても”素晴らしい挑戦”だったと振り返っています。

 ボブは、以前このブログで紹介したフランキーのソロ楽曲「君の瞳に恋してる」も作って(共作)しています。また、「ジャージー・ボーイズ」のミュージカル、映画両方の音楽も彼が担当しています。

 彼はフォーシーズンズに加わる前に参加していたロイヤル・ティーンズというグループで全米2位の大ヒット曲を他のメンバーと共作しています。何と、彼はまだ15歳だったそうです。グループ名がロイヤル・ティーンズですからほかのメンバーも十代だったようですが。そして、彼らの「Short Shorts」という曲は日本では一部の人はほぼ”毎週耳にしている”有名曲です。


ロイヤル・ティーンズ The Royal Teens/ショート・ショーツ Short Shorts(1958年)

 そう、「タモリ倶楽部」ですね。しかしあの有名な、深夜の大人向け番組の、下着の女性がお尻を振る映像とともに流れている曲を演奏しているバンドが全員十代というのも面白いもんだなあ、と思います。

 

 さて、フォーシーズンズに話を戻します。

 当時は黒人のコーラス・グループが人気があって、彼らもバンド演奏もしますが、コーラス・グループのスタイルも踏襲しています。そして、彼らのレーベル”ヴィージェイ(Vee-Jay)”は黒人が設立して黒人アーティストだけをリリースしていたところで、彼らがレーベル初の白人アーティストでした(その後ヴィージェイは、ビートルズの最初のアメリカでの発売権を得て大儲けします)。

 

 ボブ曰く「シェリー」は15分で書けたそうです。出ました、このブログでお馴染みの、

 大ヒット曲は短時間で書かれれることが多い

 という法則にのっとった曲がここにもありました。

 ただし、曲はできても、シェリーという名前になかなかたどり着かなかったようで、ジャッキー、テリー、ペリーと女性の名前がいろいろ変わっていったそうです。最後はボブの友達のDJの娘の名前がシェリーに落ち着いたとのことです。

 

 しかし、こうやって毎日書いてますけど、つくづく、ポップスというのは”白人”と”黒人”の化学反応の産物なんだなあ、と思います。多くの白人アーティストは、黒人の音楽に憧れてそれを作品に昇華させていますし、マイケルのように黒人でありながら、白人にもアピールすることを命題としていた人もいます。

 そして、その化学反応を絶え間なく起こす環境として、新しい魅力的な”商品”を世の中に循環させてゆく市場主義社会というのが必要です。ヒットを出せば、貧困な階級の人間も金持ちになれるという機能もあって、それが多くのミュージシャンのモチベーションになっています。

 その土壌に圧倒的に恵まれていたのが”アメリカ”というか、そういう土壌だったアメリカだったから生まれた”特殊なもの”がポップスだったんでしょうね。

 今も社会的にはシリアスな人種差別が解決されることないままですが、音楽では純粋な敬意に基づいた交流、というのが長年にわたって確実にあったわけで、それはすごくかけがえのないものです。

 人種や階級などいろんな”枠”を超えながら、”商品”としての明快な魅力も持ったものが

ポップスだとも言えるのでしょう。

 そして、それに憧れていた日本人が日本の風土に添うものとして”品種改良”していったのがJ-POP。

 ちなみに、フォー・シーズンズをモチーフにした日本の曲では大瀧詠一の「ロング・バケーション」に収録されていた「FUN×4」があります。

 

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