まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「パーフェクト・ウェイ(Perfect Way)」スクリッティ・ポリッティ(1985)

 おはようございます。

 今日はスクリッティ・ポリッティの「パーフェクト・ウェイ」です。

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I took a backseat, a backhander, I took her back to her room
I better get back to the basics for you, oh yeah
You gotta conscience, compassion, you got a way with the word
You gotta heart full of complacency too

I don't have a purpose or mission, I'm empty by definition
I got a lack girl that you'd love to be
You wanna diva a deduction, you wanna do what they do
Wanna do damage that you can undo

Apart from everyone away from your love
A part of me belongs apart from all the hurt above

I got a perfect way to make a new proposition
I got a perfect way to make a justification
I got a perfect way to make a certain a maybe
I got a perfect way to make the girls go crazy

I took a day job amendment, I took a liking to you
I took a page out of my rulebook for you
You wanna message a confession, you wanna martyr me too
You wanna margin of error for two

Maybe tomorrow the next letter or when the weather gets better
I've got to wait here for your moon to turn blue
I made an offer, an exception, I made a sense out of you
You took a good look at your book but I knew

In times of tenderness in terms baby so true
Until such time as I can understand all the things you do

I got a perfect way to make a new proposition
I got a perfect way to make a justification
I got a perfect way to make a certain a maybe
I got a perfect way to make the girls go crazy

Want to forgive you for all the things that you do
Wanna forget how to remember with you
Maybe tomorrow the next letter or when the weather gets better
I've got to wait here for your moon to turn blue

Apart from everyone away from your love
A part of me belongs apart from all the hurt above

I got a perfect way to make a new proposition
I got a perfect way to make a justification
This is a perfect way to make a certain a maybe
Is this a perfect way to make the girls go crazy

A perfect way
A perfect way
I got a perfect way

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バックシートに座って、
こっそりお金をもらって、彼女を部屋に連れ帰った
僕は君のために基本に立ち返ったほうがいいね
君は良心と思いやりがあって、君なりの言葉の使い方があって
君の心は自己満足で一杯さ

 

目的も使命もない、僕は言わば空っぽ
僕は、君がすごくなりたかった
”欠陥ガール”をゲットしたわけさ
君は演繹を歌い上げる、みんながすることをしたい
君は自分で元に戻せるようなダメージを与えたい

 

みんなから離れて、君の愛から離れて
僕の一部は、すべての傷とは別に存在しているんだ

 

完璧な方法を手に入れたのさ、新しい提案をするための
完璧な方法を手に入れたのさ 正当化するための
完璧な方法を手に入れたのさ ”確かな”を”たぶん”に変えるための
完璧な方法を手に入れたのさ 女の子を夢中にさせるためのね

 

僕は日雇い労働の改正を受け、僕は君に好意を持った
僕のルールブックから1ページ引き抜いたんだ、君のために
君は告白のメッセージを送って、僕のことも苦しめたいのさ
二人の誤りに余白を作りたいのさ

 

たぶん明日 、次の手紙が来るか、天気がよくなったら
君の月が青くなるのをここで待たなくちゃいけない
僕は申し出て、例外を作って、君を理解するようにした
君は自分の本をよく見ていたけど、僕は知っていた


優しさの時代に  はっきりと、その通り、
君のすること全部を理解できるようになるそんな時まで

 

完璧な方法を手に入れたのさ、新しい提案をするための
完璧な方法を手に入れたのさ 正当化するための
完璧な方法を手に入れたのさ ”確かな”を”たぶん”に変えるための
完璧な方法を手に入れたのさ 女の子を夢中にさせるためのね


君がやったことすべて許してあげたい
君と一緒に思い出すやり方なんて忘れてしまいたい
たぶん明日 、次の手紙が来るか、天気がよくなったら
君の月が青くなるのをここで待たなくちゃいけない

みんなから離れて、君の愛から離れて
僕の一部は、すべての傷とは別に存在しているんだ


完璧な方法を手に入れたのさ、新しい提案をするための
完璧な方法を手に入れたのさ 正当化するための
完璧な方法を手に入れたのさ ”確かな”を”たぶん”に変えるための
完璧な方法を手に入れたのさ 女の子を夢中にさせるためのね


完璧な方法
完璧な方法
僕は完璧な方法を手に入れたのさ

           (拙訳)

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 彼らはグリーン・ガートサイドーを中心とするイギリスのグループです。ちなみに、スクリッティ・ポリッティ(Scritti Poritti)とはイタリア語で政治的な文書(Political Writings)という意味の言葉Scritti poriticiを有名なロックンローラー、リトル・リチャードの代表曲「Tutti Frutti」にもじって変えた名前だそうです。

 

 さて、1980年代の音楽はシンセサイザーやドラムマシーンといった新しいテクノロジーを取り入れてゆくことが命題でした。一気にそういうサウンドに流れていきました。黎明期の宿命でしょうか、今聴くとサウンドはチープにで、それがまた当時のMTV映えを狙ったやけにキャッチーな楽曲と合体しているので、かなり気恥ずかしくなります。

 

 リアルタイムでも、これはちょっとなあ~というものもけっこうありましたよね。僕は80年代に入ったらロックじゃなくR&Bをどんどん聴くようになっていったのですが、考えてみると、シンセやドラムマシーンと相性が良かったのはロックじゃなくてR&Bのほうだったんじゃないでしょうか。自然な感じがしました。僕の音楽の嗜好が変わったのは、自然と聴いていてしっくりするサウンドに惹きつけられていっただけなんじゃないかと今にして思います。

 

 そんな中、イギリスからすごくカッコいいサウンドのグループが出てきたと評判になったのがスクリッティ・ポリッティでした。

 

 彼らは1977年結成されましたが、当時のイギリスのインディー・ロック・シーンの排他的な閉塞感にうんざりしてしまい、グリーンは音楽的に転換を図り、このブログによく登場しますがナイル・ロジャース率いるシックやジャクソンズといったR&Bを聴くようになったそうです。その後も妹の影響で、ザ・システムやZAPPなどのシンセ・ファンクにも夢中になったそうです。(実は彼らはナイル・ロジャースのプロデュースで作品を作る話もあったそうです。)

 

 

 スクリッティ・ポリッティは、まず、シンセ・サウンドと相性のいいR&Bを基盤にしたことが良かったのだと思います。そこに、R&Bのアーティストだったら決してやらないだろうと思われる緻密で繊細なサウンドデザインが加わっているわけです。

 

 アルバム『キューピッド&サイケ85』には、彼が好きな”ザ・システム”のデヴィッド・フランクが5曲で参加し、おまけに、マーカス・ミラーやウィル・リーといった一流ミュージシャン、フォンジ・ソーントンやタワサ・アギーといった”ブラコン”ファンには馴染みのあるシンガーが参加し、”生音”も充実していました。

 

 そして、楽曲は、マニアックにならずに”ポップ”で、マーケットできっちり勝負できる仕様になっています。

 結果的に、これがこの当時の究極のシンセ・サウンドのポップスだったんじゃないかと僕は思います。やっぱり打ち込みより生演奏がいい、とかそういうことではなく、その時代時代の”テクノロジー”と”人脈”の両方を駆使して、自分の理想とするサウンドを求める、ことが大事なんだろうなあ、と思います。

  

 

 さて、この曲を大変気に入った超大物がいました。”ジャズの帝王”マイルス・デイヴィスです。1986年リリースのアルバム「Tutu」でこの曲をカバーしたのです。これはアルバムのプロデューサー、トミー・リピューマがアルバムにカバー曲が必要だと思い、マイルスにたくさんポップスのアルバムを聴かせたところ、彼が選んだのがこの曲だったそうです。彼はすごく気に入ってアルバムのタイトル・ソングにしようとしたほどだったそうです。


Miles Davis - Perfect Way

 マイルスは時流の先端を見据えて、新しい才能に出会いながら常に自分を更新してきた人です。そういう意味では、この時点のポップスの世界で、最も斬新で優れていた作品がこの「Perfect Way」だったのだという見方もできるかと思います。

 

 そして、これをきっかけに彼らは交流するようになったようで、スクリッティ・ポリッティの次のアルバム「Provision」に収録された「OH Patti(Don't Feel Sorry For Loverboy)」にはマイルスがゲスト参加しています。

 


Oh Patti (Don`t Feel Sorry For Loverboy) by Scritti Politti

 

 さて、「パーフェクト・ウェイ」の翌年、どう考えてもこの曲を参考にしたとしか思えないヒット曲が生まれます。エル・デバージの「フーズ・ジョニー」です。グリーンのちょっとマイケル・ジャクソン風の中性的なボーカルの「パーフェクト・ウェイ」を聴いて、こういう感じの曲を当時の”ポスト・マイケル”エル・デバージに歌わせようというのは、いいアイディアだと思います。

 「パーフェクト・ウェイ」と比較して、大衆的なヒットにすることはこういうことなんだなあ、と納得できる反面、こっちのサウンドはやっぱり今では古臭く感じちゃうなあ、とも思ってしまいますが、、。


El DeBarge - Who's Johnny (High Quality)

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