まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。(現在は不定期で更新中)古今東西のポップ・ソングのエピソード、和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ(NIche)”なものになってしまったのかもしれませんが、みなさんの毎日の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればうれしいです。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出なども絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「燃える初恋(Our Day Will Come)」ルビー&ザ・ロマンティックス(Ruby & The Romantics)(1962)

 おはようございます。今日はルビー&ザ・ロマンティックスの「燃える初恋」です。


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Our day will come
And we'll have everything
We'll share the joy
Falling in love can bring

No one can tell me
That I'm too young to know (young to know)
I love you so (love you so)
And you love me

Our day will come
If we just wait a while
No tears for us
Think love and wear a smile

Our dreams have magic
Because we'll always stay
In love this way
Our day will come
(Our day will come; our day will come)

Our dreams have magic
Because we'll always stay
In love this way
Our day will come
Our day will come

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私たちの時は来るわ
そして、すべてを手にするの
恋することの喜びを分かちって

愛を知るには若すぎるだなんて
誰にも言わせないわ
あなたを強く愛している 
そしてあなたも愛してくれる
私たちの時は来るわ
もう少しだけ待ったら
私たちに涙はいらない
愛を胸に 笑顔を浮かべて

私たちの夢には魔法があるの
それは、ずっと二人は愛の中にいるから
こんな風に
私たちの時は来るの

私たちの夢には魔法があるの
それは、ずっと二人は愛の中にいるから
こんな風に
私たちの時は来るの      (拙訳)

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 ルビー&ザ・ロマンティックスは、紅一点のボーカル、ルビー・ナッシュと男性4人からなるグループです。

 この「燃える初恋」は彼女たちのデビュー曲にして、全米NO.1になった代表曲です。

 オーディションでニューヨークのカップ・レコードと契約し、レーベルのアーティスト兼レパートリー・チーフであったアレン・スタントンが「ルビー&ザ・ロマンティックス」と命名し、それまで全員がボーカルだったのを彼女をメイン・ボーカルに再編成します。

 そして、アレンが彼女たちに聴かせたレコーディングの候補曲の中でルビーが気に入ったのが、この「燃える初恋」でした。しかし、アレンはこの曲は売れそうだから、同じレーベルで人気の出てきたジャック・ジョーンズというシンガーに歌わせたかったのですが、ルビーが懇願したため、もし失敗したらジャック・ジョーンズが歌うということで作者を説得したそうです。

 (ちなみに、ジャック・ジョーンズは、「燃える初恋」がヒットした少し後にバカラックの「ワイヴス・アンド・ラヴァーズ」をヒットさせています)

  作詞したのがボブ・ヒリアード、作曲したのがモート・ガーソン。モート・ガーソンは最初期にムーグ・シンセサイザーを使って作品を作ったひとりで、電子音楽のパイオニアとしてマニアにはよく知られている人です。

 1950年代から60年代はジャズやポップスのアレンジャーとしてたくさんの仕事をやっていて、サンドパイパーズの「グァンタナメラ」のアレンジ、そしてグレン・キャンベル「恋はフェニックス」のあのストリングス・アレンジも彼によるものです。

 この曲のレコーディングはなかなかしっくりこなかったそうですが、休憩中にドラマーがスタン・ゲッツチャーリー・バードが演奏したボサノヴァ「ディサフィナード(Desafinado)」のビートを遊びでたたいていたところ、それがいいということになり試したところピタッとはまったという話が残っています。

 そのドラマーがゲイリー・チェスターで、リーバー&ストーラーの作品、ドリフターズ(「ラストダンスは私に」「アップ・オン・ザ・ルーフ」)、ベン.E.キング(「スタンド・バイ・ミー」「スパニッシュ・ハーレム」)などたくさんの名曲を演奏している人ですが、今回調べてみたら最近このブログで紹介した「ツイスト・アンド・シャウト」(アイズレー・ブラザーズ)、「テル・ヒム」(エキサイターズ)「リメンバー〜渚の想いで」(シャングリラス)も、彼がドラムを叩いていました。

 さて、ソフト・ロックやMOR(Middle Of the Road:中道ポップス)が好きな方なら、この曲のカバーはいやでも(?)たくさん聴いてきたと思います。

  この曲が大ヒットした1963年には13曲ものカバーが作られています。しかもボビー・ダーリン、ジュリー・ロンドン、パティ・ペイジ、ブロッサム・ディアリーなんという有名な人たちがやっています。ちなみに同年のディディー・シャープのカバーの邦題は「燃る初恋」になってます。

 僕がこの曲の良さをあらためて知らされたのは、ロジャー・ニコルス&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ(ロジャー・ニコルス・トリオ名義)のヴァージョンでした。

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 彼らと同じA&Mレコードのアーティストではハーブ・アルパート(こちらも邦題は「燃ゆる初恋」)やクリス・モンテスもやっています。

 そして、オリジナルに次ぐヒットになったのが、フランキー・ヴァリのディスコ・アレンジのカバー。1975年に全米11位。一緒に歌っているのはパティ・オースティンです。


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 また、Songfactsによるとディオンヌ・ワーウィックはこの曲に想い出があるようです。

「この曲は、バカラックとデビッドに会った頃に書かれたものなの。ボブ・ヒリアードがこの曲を書いて、彼は『いい曲があるんだ。"ルビー・アンド・ザ・ロマンティックス "という新しいグループのものなんだけど、デモ・レコードで歌ってくれない?』と言ってきたの。『もちろん、やりたい』って答えた。そしてやったの。そしてそのとき彼に『本当にきれいな曲ね』と言ったのよ」

 ディオンヌのデモを聴きながら、きっとルビーはこの歌を練習したんでしょうね。

 そして、それから約20年経ってディオンヌは1982年にこの曲をカバーしています。

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 最近のものではエイミー・ワインハウスのレゲエ・アレンジのカバーが強い印象を残しています。あるサイトによると、インストを含めてこの曲は178ものヴァージョンがあります。いろいろ聴き比べてみると楽しいですね。

 最後は作者のモート・ガーソンが電子音楽でセルフ・カバーしたものを。昨年(2020)にリリースされた彼のレア&未発表音源集「MUSIC FROM PATCH CORD PRODUCTIONS」に収録されています。

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