まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ドント・テイク・ユア・タイム(Don't Take Your Time)」ロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ(1968)

 おはようございます。

 今日はロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズの「ドント・テイク・ユア・タイム」です。


Don't Take Your Time

 

 ”やらなくっちゃいけないことはわかっている

  君が僕を好きになる方法を見つけること

  それで、何をすればいいかもわかっているよ

 

 君が自分の偽りに気づいて僕を愛してくれるなら

 そのことを絶対に知らせてほしい

 僕はここで待っているから

 

 二人の出会いがどんなに遅かったとしても

 君を思う気持ちだけに集中するって決めたんだ

 

 待ちきれないんだ だからどうか

 もう時間をかけないで

 

 さあ、愛を発見するにはぴったりな夜さ

 僕の隣にいるのは君かもしれないよ

 

 僕たちにはやることがたくさんある

 二人っきりで時を過ごそう

 やるべきことが何かを知るために

 愛を永遠に続くものにするために

 

 これはやっちゃだめとか言わないで

 これ以上待てないよ どうか もう時間をかけないで  ”(拙訳)

 

**********************

I know what I have got to do
Got to find a way to make you love me
And I know just what to do

If ever you find your fake and love me
Don't fail to let me know
I'll be waiting here

No matter how late the time when we met
You know I made up my mind to concentrate
On just feeling a lot to you

I can hardly wait so now please
Don't take your time

Now the night is right to discover love
Can it be it's you here beside me

Now we got a lot to do
Got to spend some time alone together
To learn what we ought to do
To make love a thing that lasts forever

Don't tell me what not to do
I can hardly wait so now please
Don't take your time

*************************

 

  カーペンターズの「愛のプレリュード」、「雨の日と月曜日は」、「愛は夢の中に」などを作曲したロジャー・ニコルズが売れっ子作曲家になる以前にアーティストとして組んでいたグループが、このロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズです。

  ロジャー以外のメンバーは、彼の高校時代からの友人マレイ・マクリオードと妹のメリンダで、当初は”ロジャー・ニコルズ・トリオ”と名乗っていました。

 そして、彼らはプロデューサーのトミー・リピューマと出会いA&Mからメジャーデビューを果たします。

 <*トミー・リピューマは1970年代にジョージ・ベンソン「ブリージン」、マイケル・フランクス「アントニオの歌」など、ジャズ・フュージョンとポップスをクロスオーバーさせた、都会的で洗練された作品を数多く手がけ、日本でもファンの多いプロデューサーです>

 

   1966年にロジャー・ニコルズ・トリオ名義で「Don't Go Breaking My Heart」(バカラック&デイヴィッド作)のシングルが制作されていますが、これはプロモーション・オンリーだったようで、最初の公式リリースは1977年「Love Song,Love Song」という曲だったようです。


Love Song, Love Song - Roger Nichols Trio

 

 

 グループ名をロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズに変えて制作されたアルバムは、トミーのプロデュースで、ニック・デカロやマーティ・ペイチなどがアレンジし、フィル・スペクターを支えたラリー・レヴィンがエンジニアの一人に名前を連ねているなど、メンツだけでも素晴らしいのですが、実際の出来上がりは”その想定”をはるかに超えるものになりました。

 

 しかし、セールス的には全く振るわず、彼らはこのアルバム一枚を残して解散し、ロジャーは作曲家に専念することになりました。

 日本では国内盤すら発売されなかったので、全く誰にも知られていない存在でした。

ただ、細野晴臣加藤和彦リアルタイムで輸入盤を購入していたらしく、たぶん細野が大瀧詠一に教え、大瀧が自身のラジオ番組「ゴー・ゴー・ナイアガラ」で紹介したのを小西康陽が聴き、といった風に伝わっていき、このアルバムは静かに”伝説”となっていきました。

 

 そして、日本でこのアルバムが世界で初めてCD化されたのが1987年でした。僕はたまたまCDを発売していたレコード会社に知り合いがいて、本当にすごくいいからと言われたので買って聴いてみてたところ、ほんとに良くて夢中になったことを今でも覚えています。

 ”隠れた名盤”と呼ばれるものの多くは、やはりどこかポップさや親しみやすさが欠けていて”隠れてしまった理由”(?)がなにかしら思い当たるものですが、こんなにポップでわかりやすいアルバムが長い間埋もれてしまっていたことにも驚きました。

 

 でも、いまあらためて聴くと、アメリカの市場で戦うにはもっと強い何かが必要だったのだろうなと思いもしますが、そういう洗練されて儚(はかな)げなスタイルはまさに日本人好み、

 ひょっとしたら

 「未来の日本人のために作られる運命だったアルバムなのではないか」

 なんていう、極端な思いまで僕は持ってしまっています。

 

 

 さて、この「ドント・テイク・ユア・タイム」はアルバムのオープニング、この曲に魅かれるかどうかが、このアルバムにどハマりするかどうかの試金石、そんな曲です。

 

 作曲はロジャー本人ですが、アレンジはボブ・トンプソンという人。1950年代から活動していて、彼の作品のいくつかはのちに"ラウンジ・ミュージック"として再評価されています。


Bob Thompson And His Orchestra: The song is you

 この頃にはすでに彼はベテランの域に入っていましたが、このアルバムと同じ1968年には「シークレット・ライフ・オブ・ハーパース・ビザール」やサンドパイパーズの「Softly」といったソフト・ロックの優れた作品も手がけ、充実した時期だったようです。

  サンドパイパーズ「Softly」からボブ・トンプソンのアレンジによる、ロジャー・ニコルズ&ポール・ウィリアムス作の「To Put Up With You」を

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 そして注目したいのが作詞をしたトニー・アッシャー。ビーチ・ボーイズの「神のみぞ知る」「素敵じゃないか」「キャロライン・ノー」を書いている人なんです。

 彼はもともと広告業界にいてCMやジングルなどを作っていて、作詞家ではなかったんですね。

 ビーチ・ボーイズの作品でも、ブライアンの思いに耳を傾けながら、それを歌詞にしていったようです。そんなことを考えると僕は、彼は自分の強固な世界観を持った詩人タイプではなく、音楽に寄り添いながらそこにあるべき言葉を見つけることに長けている人だったのではないか、と僕は捉えています。

  彼のその特性はこの曲でも発揮されていて、たとえば展開部の”Now the night is right to discover love”というフレーズは、メロディとアレンジと完璧にマッチした素晴らしいものと言えるのではないでしょうか。

 

 唐突ですが、ポップスというのはやっぱり”ファンタジー”なんだと僕には思えます。

 日常に縛りつけられて不自由だった心が、ひととき解放されふわっと宙に浮かんだように気持ちよくなるのが、まさにポップスならではの効能なんだと。

 そして、ロジャーのメロディ、ボブのアレンジ、トニーの歌詞、そのすべてが完璧に調和して見事に”ファンタジー”を作り出している、この曲を聴くたびに僕はそう感心してしまうのです。

   

 最後にこの素晴らしいアルバムから何曲かご紹介して終わりにしたいと思います。

 

ロジャー・ニコルズ&トニー・アッシャーによる「Love So Fine」

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バート・バカラック&ハル・デイヴィッド作の「Don't Go Breaking My Heart」

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キャロル・キング&ジェリー・ゴフィン作の「Snow Queen

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 最後はロジャー・ニコルズ&ポール・ウィリアムス作の「Let's Ride」。こちらは当初シングルのみのリリースで、アルバムには収録されていませんでしたがが、今ではCDのボーナストラックとしてして聴くことが出来ます。

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