まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「素顔のままで(Just the Way You Are)」ビリー・ジョエル(1977)

 おはようございます。

 今日はビリー・ジョエルの「素顔のままで」です。


Billy Joel - Just the Way You Are (Official Audio)

 

 ” 変わろうなんてしないで 僕を喜ばせようとして

    君にがっかりしたことなんて一度もないんだから

    想像しちゃダメだ  あまりに親しくなりすぎて

    僕がもう会わなくなるだろうなんて 

 

  困難なときも 君から離れないよ

  二人でここまでやってきたんだから

  良い時を楽しんだから、悪い時も受け入れるさ

  君は君のままでいいんだよ

 

  最新のファッションなんて試さないで

  髪の色も変えたりしないで

    言葉にしないけど情熱をいつも君に感じているんだ

  たとえそんな風に見えなくてもね

 

  気の利いた会話なんていらないよ

  無理してそんなことをするなんて絶対にゴメンだ

  僕にはただ話せる相手がいればいいんだ

  ただそのままの君が欲しいんだ

 

  これからも昔と変わらない君でいてくれるのか

  それを知りたいんだ

  僕が君を信じているのと同じように

  君に信じてもらうためには

        どうすればいいんだろう?

 

  君を愛しているって言ったよね、永遠にって

  これは心から誓うよ

  僕にはこれ以上うまく愛せないんだ

  愛しているよ ただそのままの君を  ”       (拙訳)

 

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ビリー・ジョエル「素顔のままで」ぷりんと楽譜

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Don't go changing, to try and please me
You never let me down before
Don't imagine, you're too familiar
And I don't see you anymore


I wouldn't leave you in times of trouble
We never could have come this far
I took the good times, I'll take the bad times
I'll take you just the way you are

Don't go trying some new fashion
Don't change the color of your hair
You always have my unspoken passion
Although I might not seem to care

I don't want clever conversation
I never want to work that hard
I just want someone that I can talk to
I want you just the way you are

I need to know that you will always be
The same old someone that I knew
What will it take till you believe in me
The way that I believe in you

I said I love you and that's forever
And this I promise from the heart
I could not love you any better
I love you just the way you are

 

 

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 ビリー・ジョエルを一躍”時の人”にした大ヒットバラード(全米3位)で、グラミー賞のソング・オブ・ジ・イヤー、レコード・オブ・ジ・イヤーの二冠を達成しています。

 

 「昔よく『自分で書きたかったと思う曲はありますか?』 と訊かれてね。するとぼくはビリー・ジョエルの「Don't go changing〜」と答えていた。すごくよくできていると思ったからだ」

                  (「ポール・マッカートニー 告白」)

 

 あのポール・マッカートニーに”自分で書きたかった”と思わせるほどの曲なんですね。

 

 「イノセント・マン ビリー・ジョエル100時間インタビュー」という本を読むと、この曲のエピソードが生々しく語られています。

 この時期、彼と彼の最初の奥さんでマネージャーでもあったエリザベスの関係はもつれてもはや修復できないレベルにまでいっていました。

 ただ、結婚を失敗で終わらせたくなかったという彼は「二人が抱えていたさまざまな問題を音楽にしていった」と語っています。

 そしてこの「素顔のままで」を彼女の誕生日のために作り、レストランで歌って聞かせたそうですが、彼女の反応は

「じゃ、著作権はもらえるの?」というものでした。ビリーは冗談半分だろうと解釈したそうですが、ビリーのライヴの照明デザイナーが彼女と二人きりの時に「たかが著作権くらいくれればいいのに」と彼女が言っていたと証言しています。

 

 こうやって書くと、ひどい奥さん、ってことになりそうですが、そうではないでしょう。男女の現実的な問題は現実のレベルで対応しないと、、と僕は思うのですが。

 

 そういえばブライアン・ウィルソンは奥さんのマリリンとの関係を修復する意味も込めて「オール・サマー・ロング」を書いていましたからソング・ライター、アーティストにというのは”歌”にするということにどうしてもベクトルが行ってしまうものなのかな、と少し切なくなったりもします。

 ある意味現実から逃避して、ロマンティックな妄想に入り込むことでこそ歌は作られるものなのでしょうけど。

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 だいたい、この曲の歌詞にある、僕のために変わらないで、というのはほとんどの場合男の思い込みでしかないんですよね、女性からしたら別に男のために変えてるんじゃないっていう、、。

 ただ、この歌を女性を束縛するものだという解釈もあったそうですが、それもちょっと酷な見方のような気がします。まあ、男性側はファッションや髪型にはこちらからは口出ししない、たずねられた時だけ誠意を持って対応する、というくらいなのがいいように思います。そういうことを理解するのに僕もとても長い時間がかかってしまいましたが、、(苦笑

 

 歌詞にツッコミどころはあるにせよ、「I Love You Just The Way You Are」という必殺のフレーズですべて帳消しになる、というのがこの曲の強みになっている気がします。

 

 そして、女性の真意とはところどころはずれながらも、懸命に訴えかけてくる男の現実的ではなく甘い妄想こそが、ラヴ・ソングというものをぐっと盛り上げるものなのかもしれないな、と思ったりもするわけです。

 

 ともかく、奥さんからのつれないリアクションがあり、本人もバンドメンバーもこの曲は”女々しさが強すぎる”と思いはじめ、アルバムに入れるのもやめようというところまでいったそうです。

 

 ただし、プロデューサーのフィル・ラモーンだけはこの曲を評価していて、ドラマーと話しあってボサノヴァ風のリズムにするなどしてレコーディングをします。

 

 しかし、ビリーがまだこの曲に乗り気じゃないと知ると、フィルは同じスタジオ(ニューヨークA&Rスタジオ)で、やはり彼がプロデュースしている「詞華集」というアルバムを制作中のフィービー・スノウにこの曲を聴かせたそうです。そこにはリンダ・ロンシュタットもいたそうで、彼女たち二人ともこの曲をものすごく気に入り、絶対アルバムに入れるべきだと断言し、それに押し切られるようにしてビリーもアルバムへの収録を最終的に承諾したと言われています。

 

 ビリー・ジョエルと彼のバンドは当時自分たちを”ストリート・ロックンロール・バンド”だと思っていたようで、そのレパートリーにするには「素顔のままで」はソフトすぎたと感じたのです。しかし、結局自分たちの本来のスタイルじゃないと思っていたこの曲でブレイクを果たしたわけです。

 

 これはアーティストに限ったことではないでしょうけど、自分で自分のことをあまり決めつけたり限定したりしないで、第三者の意見に耳を傾けたほうがかえってチャンスが広がることは多いのかもしれないですね。

 

 

  ちなみに、ビリーはエリザベスと別れてしまったそうですが、その後二人の女性と結婚し、その度にそれぞれに曲を書いたそうですがその二人とも別れることになり、彼にとって女性のために曲を書くことは”ある種の呪いのようなもの”だと語っているようです。

 

 

 さて、以前このブログで彼の「アップタウン・ガール」について書いた時、 曲を着想するきっかけになったフォー・シーズンズの「悲しきラグ・ドール」の歌詞に「I Love You Just The Way You Are」というくだりを見つけて、「素顔のままで」はここから来ているのかなあと推理してみたのですが、今回調べてみたらラジオ・インタビューで彼がそういう内容を答えていたそうです。

 

 「悲しきラグ・ドール」は「素顔のままで」と「アップタウン・ガール」という彼の代表曲2曲に影響を与えていたんですね。


The Four Seasons - Rag Doll (Official Audio)

 

 「素顔のままで」というのは、邦題の名作のひとつだと思いますが、最初は「そのままの君が好き」というタイトルがつけられ、収録されているアルバム「ストレンジャー」の最初の千八百枚は その表記で出荷されたそうです。

 その後に発売されたシングル盤も「素顔のままで(そのままの君が好き)」という風になっています。

 当時の日本の担当者によると、邦題を考えるために会社で二日徹夜をした朝に、会社のデスクの女性が、時間に遅れそうであわててすっぴんで出社してきたことがきっかけになったそうです。

 その後南沙織に同名の曲があったことに気づいたそうですが、こちらの方が有名になりました。

 

 それからは「そのままの君が好き」は、1992年に小田和正がそのタイトルでオリジナル曲をリリースしていますが、「素顔のままで」のことは頭の片隅にあったんじゃないかと僕は勝手に推測しています。

 

  最後に1977年のライヴ映像。確か当時日本のテレビでもこの映像は流れたと僕は記憶しています。僕は中二でしたが、すごくかっこいいなあ、と感動し、おこずかいをためてアルバムを買いました、、、。


Billy Joel - Just the Way You Are (Live 1977) [Official Video]

 

 

 

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