おはようございます。
今日はボサノヴァのインスト曲としては最大のヒットといわれるウォルター・ワンダレイの「サマー・サンバ」です。
Walter Wanderley - Summer Samba (So Nice)
オリジナルはマルコス・ヴァーリが1964年にリリースした「Samba De Verão
」。”夏のサンバ”という意味なので、「サマー・サンバ」はほぼ直訳ですね。
" 見たかい あんなにかわいい子
今まで見たことないよ
立ち止まりもせずに 通り過ぎたけど
僕の方を 絶対見てた
もし彼女がこっちに戻ってきたら
僕は駆け寄って お願いしよう 話そう
愛が芽生えたと言おう
見てごらん まるで夏みたいに 心が熱い
歩いてくる彼女を見るだけで 胸が弾む
彼女はいつも瞳に海を映してやってくる
そして、きっと 好きな人はいないはず
そう今日こそは、と自分に言うけど 待ちくたびれた
ずっと休んでいないし 眠ってもいない
君に愛を捧げることだけ考えている
願っても 君は来ない
それじゃあ、あきらめるよって、空に向かって言った
だけど、そしたら 君がきた ”
(ポルトガル言語を英訳したものをメインに訳しました)
歌詞はマルコスの3歳年上のお兄さんパウロ・セルジオ・ヴァーリが書いています。「イパネマの娘」同様、”海辺で見つけたカワイ子ちゃん”(?)の歌ですが、「イパネマの娘」はただ見つめるだけで、内省的で詩的な感じですが、こっちは若くカジュアル、主人公はアプローチしようとドギマギしています。「イパネマ」の英詞のほうに近い感じがします。
そして、この曲をインストにして、アメリカで大ヒットさせたのがウォルター・ワンダレイです。
(ブラジル国内では、この曲のインスト・ヴァージョンは彼より前に数多く制作されていました)
マイケル・フランクスの「アントニオの歌」に出てくる”Frevo(フレーヴォ)”で有名なブラジルのレシーフェ出身のオルガン奏者です。
ボサノヴァの世界的なブームを巻き起こしたアルバム「ゲッツ/ジルベルト」と同じレーベル(ヴァーヴ)、同じプロデューサー(クリード・テイラー)で制作されたアルバム「レイン・フォレスト」(1966)にこの曲は収録されています。シングルとしてもリリースされ、インストにもかかわらず全米ヒットチャートの26位まであがっています。
そして、同じタイミングで、英語詞のついたボーカル・ヴァージョンがたくさん制作され、アメリカでは「イパネマの娘」同様のボサノヴァの有名曲になりました。
英語詞を書いたのは「イパネマの娘」と同じくノーマン・ギンベル。「やさしく歌って」が大ヒットするまでは、彼は主に海外の曲やインストに英語詞をつけることをメインでやっていたんですね。
ポルトガル語の歌詞の内容が”「イパネマの娘」に似てるじゃないかっ!”て思ったせいかどうかはわかりませんが、今回は原詞とは全く違うものにしました。タイトルは「So Nice」。最初にレコーディングしたのはセルジオ・メンデス・トリオ。歌ってるのはワンダ・サーという女性シンガー。
”私を強く抱きしめてくれる誰かがいたら なんて素敵
私を真剣に愛してくれる誰かがいたら なんて素敵
私のささやかな夢を 一つ一つ理解してくれる人がいたら
私の手を取って 一緒にペアになってくれる人がいたら
なんて素敵 人生はすごく素敵になるわ
ある日 私の手を取って私と生涯サンバを踊ってくれる人を見つけられたら
、、、、 ” (拙訳)
「So Nice」のベストは、アストラッド・ジルベルトとウォルター・ワンダレイが共演したヴァージョンじゃないでしょうか。
「サマー・サンバ」「So Nice」の人気に乗っかって、マルコス・ヴァーリ本人もアメリカ進出を果たします。
1968年リリースのアルバム「サンバ'68」ではこの曲を、前半ポルトガル語、後半英語でしかも奥さん(アナマリア・ヴァーリ)と一緒に歌っていて、これは完全にジョアン・ジルベルトとアストラッド・ジルベルトの「イパネマの娘」パターンですね。
ただし、「イパネマの娘」はジョアンが原語、奥さんが英語で歌ったため、ジョアンをカットしてアストラッドだけのシングルが作られましたが、こちらは原語も英語も夫婦揃って歌っていて、曲の長さもトータル2分半ほどにおさめていますので、最初から編集されないような構成にしたのかもしれませんね。
最後に僕が一番好きなこの曲のカバー・ヴァージョンを。カエターノ・ヴェローゾ。
Samba de Verão - Caetano Veloso