まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「オン・アンド・オン(On and On)」スティーヴン・ビショップ(1977)

 おはようございます。

 今日はスティーヴン・ビショップの「オン・アンド・オン」です。


Stephen Bishop : On And On

Down in Jamaica
They got lots of pretty women
Steal your money
Then they break your heart
Lonesome Sue, she's in love with ol' Sam
Take him from the fire into the frying pan


On and on
She just keeps on trying
And she smiles when she feels like crying
On and on, On and on, On and on


Poor ol' Jimmy
Sits alone in the moonlight
Saw his woman kiss another man
So he takes a ladder
Steals the stars from the sky
Puts on Sinatra and starts to cry


On and on
He just keeps on trying
And he smiles when he feels like crying
On and on, On and on, On and on

When the first time is the last time
It can make you feel so bad
But if you know it, show it
Hold on tight
Don't let her say goodnight


Got the sun on my shoulders
And my toes in the sand
Woman's left me for some other man
Aw, but I don't care
I'll just dream and stay tan
Toss up my heart and see where it lands


On and on
I just keep on trying
And I smile when I feel like dying
On and on
On and on
On and on

*********************************************************

  ”ジャマイカには キレイな女性がたくさんいるけど

 男は金を使わされたら あっさり捨てられるのさ

   寂しかったスーは 年上のサムと恋に落ちて

 また別のトラブルに彼を巻き込んだだけさ

 

    ずっとずっと 彼女はトライし続けてる

 そして泣きたくなったら笑顔を見せるのさ

 いつだってずっと、ずっと、

 

    かわいそうなジミーは 月あかりにひとり座って

 付き合っている彼女が別の男にキスするのを見た

 だから彼は梯子を持ってきて 空から星を盗んで

 シナトラの曲をかけたら 泣き出すのさ

 

 ずっとずっと 彼女はトライし続けてる

 そして泣きたくなったら笑顔を見せるのさ

 延々と ずっと、ずっと、

 

    はじめてだったことが過去になってしまうのは 

 ひどくつらい気分になるよね

 だけどもし君がわかっているなら 見せるんだ

 しっかりつかまえて 「おやすみ」なんて言わせないように

 

 太陽を肩に浴びて つま先は砂に突っ込んだまま

 僕の彼女は別の男のところへ行ってしまった

 あぁ、だけど気にしちゃいない

 僕はただ夢見て、陽に灼けたままでいよう

 心をコインみたいに放り上げて どこに着地するか見てみるよ


 ずっとずっと 僕はトライし続ける

 そして、死にたい気分の時は微笑むのさ

 ずっと、ずっと、ずっと          ” (拙訳)

**********************************************************************

 ソフトでとても心地よい曲調ですが、歌詞のほうは女性不信、恋愛不信でずいぶんとイジケていますね。人一倍ロマンティックなくせに、ちょっとひねくれて見せる、というのが彼のスタイルでもありますが、、。

 

 彼はこう語っています。

 「僕はだいたいいつも曲はタイトルから書くんだ。当時住んでいたシルバーレイク(ロサンゼルスにある、ミュージシャンやクリエイティヴな人が多く住み、今では若者に大変人気のある街)の食料品店に向かって歩いているときに、'On and On'というアイディアを思いついたんだ。僕の住んでいる家の女主人が家のまわりにエキゾチックな花をたくさん植えていたから、どこか別の土地の曲を書きたいと思ったんだ、ジャマイカのような。

 

 ジャマイカというのはあくまでもエキゾティックという”ざっくりしたイメージ”でチョイスされただけみたいですね。

 

 それだけで、悪女呼ばわりされたジャマイカの女性はたまったもんじゃなかったわけで、のちに彼は、ボブ・マーリーの奥さんだったリタ・マーリーに「あなたはジャマイカの何を知ってるわけ?」と詰め寄られたそうです、、、。

 

 また彼は、こういう歌詞になったのは、実生活で3回連続失恋したからだ、と語っています。

 

 彼のプロフィールを少し。

    サンディエゴ出身で、エドサリヴァン・ショーに出演したビートルズに衝撃を受け、最初に組んだのはイギリスのビート・バンド風だったそうです。その頃から曲作りを始め、音楽で成功するために18歳でロサンゼルスに引っ越し、デモテープをあらゆるところに送ったそうですが、なかなかうまくいきませんでした。

 

 15歳から曲を書き始め24歳になった1975年には、その数は450曲になったそうですが、メジャー・レーベルのアーティストから採用されたことはなく、苦しい日々が続いていました。

  しかし、1975年にアート・ガーファンクルがアルバムで彼の曲を2曲取り上げたことで、俄然注目が集まります。

 

「Looking For The Right One」


Art Garfunkel - Looking For The Right One

 

 " 僕はずっとついてないんだ ゲームは得意じゃない

   彼女たちの顔は覚えているけど 名前は忘れてしまった

   僕がこの人だという人を見つけても 向こうは気づきもしなかった

      だから僕は感情を束ねて 探し始めた 本当の恋人を

    本物の恋人はきっとやってくる

      僕にぴったりな恋人を探すんだ きっとやってくる、、、”(拙訳)

 

「The Same Old Tears On A New Background」


Art Garfunkel - The Same Old Tears On A New Background

 

  ”またいつもと同じ涙で終わる

   背景が変わっただけ

   色あせた写真になった君を見ている

   笑い話にすれば 傷は深まる

   だけど、大丈夫さ そう 大丈夫さ

 

  またいつもと同じ歌 メロディを変えただけ

       でも、消え残っていた古いキャンドルの炎はほとんど消えてしまった

  また君に会うことだけが 僕の支え 

  だけど大丈夫さ そう 大丈夫さ

 

        思い出すのは 思い出すのは お馴染みの心の痛み

  僕が知っている痛み            ” (拙訳)

 

 

    やはり彼は、決して成就しないラヴ・ソングを描く才能があるようですね。

 

 この実績よって彼はアーティストとしてもデビューすることになります。この「オン・アンド・オン」は二枚目のシングルで全米11位とアーティストとしての彼の最大のヒット曲になりました。

 

 いち早く、この曲をカバーしたのがケニー・ランキン。


Kenny Rankin - On and On

 日本でも人気の高かったレゲエ・グループ”アスワド”のカバー。1989年全英25位。


Aswad - On And On

 スティーヴン→ケニー・ランキン→アスワド という風にこの曲の歌詞の悲観的なニュアンスがどんどん薄れて、心地よさのウェイトのほうが増してゆくような気がしますね。

 

 

 この3枚はどれもAORのガイド本の常連ですね

ケアレス(SHM-CD)

 

 スティーヴン・ビショップのようにソフトでちょっと頼りなげなヴォーカルが魅力的なアーティストたち

popups.hatenablog.com

popups.hatenablog.com

popups.hatenablog.com