おはようございます。今日もプリンス。「アルファベット・ストリート」です。
Prince - Alphabet Street (Official Music Video)
I'm going down
To Alphabet Street
I'm gonna crown
The first girl that I meet
I'm gonna talk so sexy
She'll want me from my head to my feet
(Yeah, yeah, yeah) Yes, she will
(Yeah, yeah, yeah) Yeah
(Yeah, yeah, yeah)
I'm gonna drive my daddy's Thunderbird
A white rad ride, '66
So glam, it's absurd
I'm gonna put her in the back seat
And drive her to Tennessee
(Yeah, yeah, yeah) Mmm-mmm
(Yeah, yeah, yeah) Tennessee
(Yeah, yeah, yeah) Drive her
Excuse me, baby
I don't mean to be rude
But I guess tonight, I'm just not
I'm just not in the mood
So if you don't mind
I would like to watch
(Yeah, yeah, yeah) Ow!
Gimme, gimme, gimme, gimme, gimme
We're going down, down, down
If that's the only way
To make this cruel, cruel world
Hear what we've got to say
Put the right letters together
And make a better day
(Yeah, yeah, yeah) Better days
(Yeah, yeah, yeah)
(Yeah, yeah, yeah)
Baby, it's the only way
Yeah, yeah, yeah, yeah
********************************************
アルファベットストリートを行こう
最初に会った娘に戴冠してあげよう
すごくセクシーに話したら
彼女は僕のこと全部欲しくなるはずさ
パパのサンダーバードに乗っていこう
白くて最高の乗り心地の67年型
すごく魅力的だけど馬鹿げた車さ
彼女を後部座席に乗せて
テネシーまでドライヴさ
ごめんよ、ベイビー、
無礼をするつもりはないけど
今夜は ただその、そんな気分じゃないんだ
だからもし良かったら 見させてほしい
僕らはこの通りを下って、下ってゆく
それが、この酷い酷い世界に
僕らが言うべきことを聞かせるための
ただ一つの方法なら
正しい文字を組み合わせて
より良い日にするのさ (拙訳)
***********************************************
「アルファベット・ストリート」は1988年のアルバム「Lovesexy」からのシングルでしたが、このミュージック・ビデオはシングル・ヴァージョン。あっけないほど短いですねw。アルバム・ヴァージョンやその後のベスト盤に収録されていた音源は、尺が倍以上あって、この後RAPパートもあって楽しく盛り上がっていきます(2016年にリリースされた彼のベスト「4Ever」に入っていたのはこの短いヴァージョンでした)。
さて、プリンスのレパートリーの中では、この「アルファベット・ストリート」はファンや評論家から取り上げられることがあまりないような気がしますけど、僕は昔からすごく好きなんです。肩に力が入ってなくて、楽しいグルーヴが伝わってきて、聴いていてただただ楽しいからです。
こういう曲ってめずらしいと思います。僕はこういう、ポップでリラックスして、ただただウキウキするような曲っていうのは、作るのが実は一番難しいんじゃないかと考えています。
それは、音楽的に難しいということじゃなくて、作り手が平常時にはなかなか作れない、精神的に一定のあるモードに入った時だけ、何かの”はずみ”で作れる、そういうものじゃないかと思うのです。才能や気質に限らず、精神的なコンディションやタイミングに大きく影響されるようなものじゃないでしょうか。
さて、このころのプリンスは創作的に凄まじい時代で、前年1987年に多くの評論家から最高傑作と呼ばれている2枚組の大作「サイン・オブ・ザ・タイムス」をリリースし、その年末に「ブラック・アルバム」を作り上げますが、発売の一週間前に本人の希望で発売を取りやめます。
彼ほどの天才の内面は知る由もないのですが、「サイン・オブ・ザ・タイム」のアーティスティックでヘヴィーな側面をより先鋭化していったのが「ブラック・アルバム」であったような気がします。
この当時の彼の気分自体もダークで怒ってばかりいて、それが「ブラック・アルバム」に反映されていたと彼自身考えていたようです。
そして、「ブラックアルバム」が発売中止にしたことについては
「その理由について、プリンスは『ローリング・ストーン』誌に対し、「僕たちはいつ死んでもおかしくない」ことに気づいたと語り、「アーティストは最後の作品で判断されるだろう。もしものことがあって、あれが最後の作品になるのは・・・(中略)・・・嫌だったんだ」と言い添えている」 (「プリンス録音術」)
そして、「ブラック・アルバム」の発売中止の埋め合わせとして、そのわずか5か月後に発売されたのがこの「アルファベット・ストリート」を含むアルバム「Lovesexy」でした。異常な創作ペースです。アルバム全部の曲作りとレコーディングを7週間で終えたそうです。
彼についての本や記事をチェックしていく中で、関係者が共通して言っているのは、彼はツアーやプロモーションがないときは、ほとんど寝ないで制作をし続けている、ということです。あるエンジニアは24時間ぶっ続けでレコーディングし、4時間だけ休んで、また24時間作業する、というペースがずっと続いたと言っています。
あらゆるアーティストの、生きた時間の中でレコーディングに費やした時間の割合を統計したら(そんなことは不可能ですけど)、プリンスはダントツ1位なのかもしれませんね。
さて、話を「アルファベット・ストリート」に戻します。
前年の「サイン・オブ・ザ・タイムス」は彼のクリエイティヴィティを最大限に注ぎ込んだもので、「ブラック・アルバム」はよりハードコアなものになり、そこで彼は自身のダークな状態に気づいたわけです。そして、その反動というのは当然、作品に反映されるわけです。しかもなるべく早く仕上げる必要があるという状況も加わります。
一気に現れた「ブラック・アルバム」の反動。
それが、「アルファベット・ストリート」に代表される肩の力の抜けたポップなもの、だったんじゃないでしょうか?
彼にはファンク/R&Bとロック、そしてポップが、独特に混在したクリエイティヴィティがあって、本人の意図というよりもその時の本能的な創作欲によってロック寄り、ファンク寄り、みたいにバランスを変えながら作品を作り出してきたように思えます。
そして、一つの作品の中でそれが最もバランスが取れていたのが「パープル・レイン」だったのかもしれません。
「サイン・オブ・ザ・タイムス」〜「ブラック・アルバム」であまり発揮できなかった彼のポップなクリエイティヴィティが反動で”ひょっこり”現れたもの、が「アルファベット・ストリート」なのだと僕は解釈しています。
軽快な何でもないようなポップスの中にこそ”天才性”を感じとる、というのが僕の音楽を聴く時の楽しみ方で、ポール・マッカートニーなどはその最たる人だと思いますが、僕は「アルファベット・ストリート」や「Lovesexy」の前半部のポップさにプリンスの天才性を感じてしまいます。
この曲のレコーディングでも、プリンスは全盛期の彼のサウンドを象徴するドラムマシーン、リン・ドラムを使ったそうで、そのほかの楽器については
”まるで楽しみながら即興でつくっている感じだった”
と共同エンジニアのジョー・ブレイニーは語っています。
楽しみながら作った感じは聴き手にもよく伝わってきます。「Kiss」同様シンプルな曲ですが、カッティングしているギターの独特な音色だけで、惹きつけられてしまうから不思議です。
最後に「Lovesexy」からもう1曲。プリンスらしいミニマムなアレンジながら、彼のメロウネスがくっきり現れた「When 2 R in Love」を