まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「I LOVE YOU SO」山本達彦(1982)

 おはようございます。

 今日は山本達彦の「I LOVE YOU SO」です。


I Love You So

 

 80年代初め、シティポップは”シティポップス”と呼ばれ、単なる音楽のジャンルに止まらず、都会的でおしゃれな生活を夢想させるものとして、そのイメージとリンクして広まっていきました。

 

 そんな中で、東京出身、成蹊大卒のお金持ちのお坊っちゃま然とした佇まいで現れた彼などは、まさにその申し子だったのかもしれません(ちなみにウィキペディアを見ると安倍晋三首相と大学の同窓であると記述があります)。

 

 デビュー・アルバム「突風〜Sudden Wind」(1978)はピアノを弾き語る上品な貴公子というイメージながら、全曲作詞を担当した伊集院静(筆名:伊達歩)の甘みを程よく抑えた文学的な仕事ぶりもあって、今聴いても上質な仕上がりの作品になっています。

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 セカンド・アルバム「メモリアル・レイン」で彼はメロディーメイカーとして進化を見せ、サード・アルバム「ポーカーフェイス」では80年代という時代の空気もあってか、優男路線から少し脱皮し、少し攻めたアッパーな曲もやるようになりました。

 

 そして、彼はレコード会社を移籍して心機一転、勝負をかけたアルバムのオープニング・ナンバーでタイトル曲がこの「I LOVE YOU SO」でした。

 

 以前、八神純子の記事で、彼女は文化系お嬢様的な雰囲気から80年代に入って、アグレッシヴな雰囲気に変わったと書きましたが、

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 彼もまた、ナイーヴなお坊っちゃま風な感じから、80年代になって”攻め”を感じる外交的な雰囲気に変えたことが成功に結びついたように思います。

 

 アルバムからのシングル「Man + Woman = 100%」をラジオでよく耳にしましたが、作曲したのは本人ではなく、中崎英也でした(のちに「あなたのキスを数えましょう」 (小柳ゆき)など数々の大ヒットを生んだ彼ですが、当時は山本と同じレコード会社に所属するバンドのヴォーカリストでした。彼の最初期の提供楽曲だと思われます)。

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 それから、このアルバムの半数以上のアレンジを相沢 行夫(あいざわ ゆきお)と木原 敏雄(きはら としお)からなる”NOBODY(ノーバディ)”が手掛けています。

 彼らは、矢沢永吉のバックメンバーをやっていましたが、矢沢のアメリカ進出に伴い仕事がなくなりユニットを結成、ハウンドドッグの「浮気なパレットキャット」を提供したのをきっかけに注目を集め、この時期自分たちのアルバムをリリースしたばかりでした。

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 NOBODYの作品で有名なのは吉川晃司の「モニカ」(1984)ですが、ポップでありながらもロック・バンドのスタイルをベースに持つ彼らにアレンジを依頼した、というのは、かなり”攻めの姿勢”だったと思います。

 逆にNOBODYの方も、山本の持ち味をよく理解したアーバンな洗練されたアレンジに仕上げていて、両者のコラボレーションは成功だったと思います。

 

 そしてその八ヶ月後には、NOBODY、井上鑑という同じアレンジャー陣で制作された「LE PLEIN SOLEIL/太陽がいっぱい」をリリースし、こちらはオリコン5位と好調なセールスを上げました。

 

 彼のピークはその次のアルバム「MARTINI HOUR」(1983年オリコン3位)だったかもしれません。

 全編井上鑑によるアレンジで、スティーリー・ダンを意識したような曲もあり、セールスだけではなく、サウンド的な完成度も彼のキャリアでも最高レベルだったように思います。

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 最後に「I LOVE YOU SO」から僕が彼の曲で一番好きなものをご紹介します。

 ”シティポップ”と”シティポップス”の違いの一つに、”シティポップス”にはAOR感がすごくあって”シティポップ”にはあまりない、というのが僕の解釈としてありるんですよね。

 ということで”ジャパニーズAOR”の最高峰バラード(と僕が思っている)「摩天楼ブルース」を。

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