まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「ロック・ウィズ・ユー(Rock With You)」マイケル・ジャクソン(1979)

 おはようございます。

   今日も マイケル・ジャクソン。「ロック・ウィズ・ユー」を。 


Michael Jackson - Rock With You (Official Video)

 

 ” ガール。目を閉じて リズムを体に溶け込ませるんだ

   抗おうなんてしないで  君にできることはもうないんだから

   気持ちをリラックスさせて 

      力を抜いて 僕と一緒にグルーヴを感じよう

   熱を感じなきゃ そうすればブギーにのれるよ

   愛のビートを分かち合って

 

  君と熱く盛り上がりたいんだ(一晩中)

  朝まで君を踊らせるよ(太陽の光がさすまで)

  君と熱く盛り上がりたいんだ(一晩中)

  踊り明かしたいんだ

 

  フロアには僕たち二人だけ

  ガール、君が踊ると 魔法が生まれる それは愛に違いないのさ

   ただ、ゆっくりやろう 夜はまだこれから

   熱を感じなきゃ そうすればブギーにのれるよ

    愛のビートを分かち合って

 

   君と熱く盛り上がりたいんだ(一晩中)

   朝まで君を踊らせるよ(太陽の光がさすまで)

   君と熱く盛り上がりたいんだ(一晩中)

   踊り明かしたいんだ

 

  グルーヴが止んで消えてしまっても

  愛は生き残るよね だから僕らは永遠に盛り上がれるんだ

 

  君と熱く踊りたいんだ

  君とグルーヴを重ねたいんだ

 

  君と熱く踊りたいんだ(一晩中)

  朝まで君を揺らしたいんさ(太陽の光がさすまで)

  君と熱く盛り上がりたいんだ(一晩中)

  踊り明かしたいんだ

 

  この熱を感じて 朝まで熱く踊りたいんだ

  激しく踊り明かしたいんだ ”  (拙訳)

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Girl, close your eyes
Let that rhythm get into you
Don't try to fight it
There ain't nothing that you can do
Relax your mind
Lay back and groove with mine
You gotta feel that heat
And we can ride the boogie
Share that beat of love

I want to rock with you (all night)
Dance you into day (sunlight)
I want to rock with you (all night)
Rock the night away

Out on the floor
There ain't nobody there but us
Girl when you dance
There's a magic that must be love
Just take it slow
'Cause we got so far to go
You gotta feel that heat
And we can ride the boogie
Share that beat of love

I want to rock with you (all night)
Dance you into day (sunlight)
I want to rock with you (all night)
Rock the night away

And when the groove is dead and gone (yeah)
You know that love survives
So we can rock forever, on

I want to rock with you
I want to groove with you

I want to rock (all night) with you girl (sunlight)
Rock with you, rock with you girl (yeah) (all night)
Dance the night away

I want to rock with you (yeah) (all night)
Rock you into day (sunlight)
I want to rock with you (all night)
Rock the night away

Feel the heat feel the heat
Rock you into day (sunlight)
I want to rock-rock the night away 

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   さて、突然ですが、彼がなぜ"King Of Pop"なのでしょう?

   ポップ・ミュージック史上一番売れた人だから。もちろん、そうなんでしょうけど、”ポップであること”と音楽史上誰よりも向き合って一生涯格闘してきた人だから、だとも僕は思うんです。

 

 彼がまだ11歳でデビューしたときのレーベル、モータウンは”白人にも売れる黒人の音楽”を作ることを命題にしていて、自分たちの音楽を売り込むときに「ソウル」という言葉を絶対に使わなかったという逸話があります。あくまでも「ポップ」を目指していたからです。

  そして、1970年代にはジャクソンズとして、フィラデルフィア・インターナショナルのギャンブル&ハフのプロデュースを受けます。サウンドやポリシーは違いこそすれ、モータウン同様、黒人マーケットを超えたポップ・ヒットを目指したところです。

 そして、ソロになって今度はクインシー・ジョーンズに出会います。クインシーはもちろん原点はジャズですが、マイケルやプレスリー以前に”最もポップな存在”であったフランク・シナトラを手がけ、キャリアの初期にはレスリー・ゴアの「涙のバースデー・パーティ」という典型的なアメリカン・ポップスをプロデュースするなど、黒人音楽の枠を超えて”ヒット”をしっかり意識しながら作品を作ってきた人です。

 そういったマイケルの巡り合わせを考えてみると、

 黒人でいながら「ポップ」であることを、自分で選んだわけではなく、宿命づけられのがマイケル・ジャクソンなのだと思います。

 

 ジャクソン5で鮮烈にデビューしましたが、70年代中頃は声変わりなどもあり、新たな自分のスタイルを模索する期間が続いていました。そんな彼を一気にスターにしたのがアルバム「オフ・ザ・ウォール」です。確かに当時のディスコ・ブームの強い追い風に乗りはしましたが、ディスコ・ミュージックと簡単にカテゴライズできない、多彩さと音楽的な豊かさに満ちたアルバムです。

 また「オフ・ザ・ウォール」まではR&Bで、「スリラー」からポップになったみたいな評価もありますが「オフ・ザ・ウォール」にはすでに、素晴らしい”ポップ”の萌芽があると僕は思っています。

 

 アルバムに、ポール・マッカートニーデヴィッド・フォスター、トム・バーラー(ラヴ・ジェネレーションというソフト・ロック・グループをやっていた名セッション・シンガー)といった人たちの書いたポップスやバラードが入っているということも大きいでしょう。

 でも、僕が何よりも注目している楽曲が「ロック・ウィズ・ユー」です。

 この曲のポップとダンス・ミュージックの絶妙な融合加減、これぞマイケルにしか成し遂げられなかった達成だと思います。単にポップなダンス・ミュージックではない、音楽的に相当高度な、誰も真似できないものじゃないでしょうか。

 これは昨日の「オフ・ザ・ウォール」の記事で紹介した、ロッド・テンパートンが提供した3曲のうちのひとつで、もともとカーペンターズのカレン・カーペンターのソロ・アルバム(「遠い初恋」)のために書かれて採用されなかったものだという説もあります。

 この時期、ロッド・テンパートンは自分のバンド”ヒートウェイヴ”のアルバムの制作をやっていて、そのプロデュースを手掛けたのがフィル・ラモーンです。彼はビリー・ジョエルの「ストレンジャー」、「ニューヨーク52番街ポール・サイモンの「時の流れに」などを手がけた名プロデューサー。ヒートウェイヴがただのディスコ/ファンク・バンドではないことはそれだけでわかります。何よりフィルはロッドの才能を高く評価していたのでしょう、彼がその時に準備に入っていたカレンのソロ・アルバムのために曲を書くように彼に依頼したのです。

 「ロック・ウィズ・ユー」の原曲は却下され(てしまったと仮定して)、代わりに採用されたロッドの曲はこんな感じでした。「Love Lines」。

 


Karen Carpenter - Love Lines - written by Rod Temperton

 彼特有のグルーヴ感は抑えられ、かなりカレン寄りになっています。

 ちなみにこのアルバムは1980年には録り終えていましたがレーベルからリリースを見送られ、リリースされたのが1996年でした(彼女は1983年に亡くなっています)

 

 「ロック・ウィズ・ユー」の原曲が元々カレンのために書かれていたという説に僕は納得できるところがあります。

 マイケルが採用した「オフ・ザ・ウォール」と「Burn This Disco Out」の2曲と「ロック・ウィズ・ユー」のテイストは若干違っています。

 ヒートウェイヴとマイケルは、音楽的にけっこう近い。でも、カレンはかなり遠いポジションにいます。端的に言うと、曲の”グルーヴ”の違いです。

 ヒートウェイヴの制作に没頭していたロッドは、そのままのテンションで「オフ・ザ・ウォール」や「Burn This Disco Out」を書くことは難しくなかったのではないかと想像できます。そして、引き続きそのテンションのまま、カレン用にポップスを書いたつもりの「ロック・ウィズ・ユー」は、結果的に彼女にはちょっとR&Bっぽすぎたのじゃないでしょうか。

 そして、ヒートウェイヴの制作も落ち着いてきて、あらためて書いた「Loveline」はカレンにぐっと寄せることができた。もちろん、これは全て僕の想像です。

 

 そして、ロッドはカレン用の「ロック・ウィズ・ユー」の符割りを、マイケル向きに少し手直ししたのではないでしょうか。そして、ポップスとR&Bが絶妙なバランスで調和した希代の名曲が生まれることになりました。

  その絶妙なバランスは、カレン・カーペンターに書かれたものをマイケルが自分流に歌うという、ポップの女神とキング・オブ・ポップの”配合”によって生み出されたのだと僕は妄想を膨らませてしまいます。

 もちろん、あの印象的なドラムのイントロから始まる、”奇跡のアレンジ”がもたらしたサウンドがなければ”神曲”の領域までいかなかったのは間違いないでしょう。

 まあ、ここまで書いたのはすべて僕の妄想が導く推測で、まったく的外れなのかもしれません。

  ともかく、僕はカレン・カーペンターは大好きなのですが、この曲に限ってはカレンが歌わなくてよかったんだろうなあ、と思います。

 

 

 

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