おはようございます。
今日はプリンスのカバーの中でも屈指の傑作、チャカ・カーンの「フィール・フォー・ユー」です。
Baby, baby, when I look at you
I get a warm feeling inside
There's something about the things you do
That keeps me satisfied
I wouldn't lie to you, baby
It's mainly a physical thing
This feeling that i got for you, baby
Makes me wanna sing
I feel for you
I think I love you
I feel for you
I think I love you
Baby, baby, when I lay with you
There's no place I'd rather be
I can't believe, can't believe it's true
The things that you do to me
I wouldn't lie to you, baby
I'm physically attracted to you
This feeling that I got for you, baby
There's nothing that I wouldn't do
I feel for you
I think I love you
I feel for you
I think I love you
Yes sir, one more time
Say yeah
I feel for you (I think I love you)
I feel for you
I think I love you、、、
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Baby, baby, あなたを見つめると
体の中があたたかくなる
あなたがしてくれることは特別
私をずっと満たしてくれる
嘘はつけないわ ベイビー
とてもフィジカルなことだから
あなたへのこの気持ちが、ベイビー
歌いたい気持ちにさせるの
あなたを感じてる
あなたを愛しているんだわ
あなたを感じる
あなたを愛しているんだわ
Baby, baby, 一緒に横たわれば
わたしのいるべき場所は他にはないわ
信じられない、信じられない本当だなんて
あなたが私にしてくれることが
あなたに嘘はつけない
あなたに自然に魅かれたの
あなたへのこの気持ち、ベイビー
なんでもしてあげるわ
あなたを感じてる
あなたを愛しているんだわ
あなたを感じる
あなたを愛しているんだわ、、、
(拙訳)
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有名な冒頭のラップはプロデューサーの手が滑ったことで生まれたアクシデント
この曲は以前このブログで取り上げた「ウォナ・ビー・ユア・ラヴァー」も入っている彼のセカンドアルバム「愛のペガサス(Prince)」(1979)に収録されていました。
そして、なんと今月(2019年10月)「愛のペガサス」発売40周年を記念して、彼のアコースティック・デモ・ヴァージョンがオフィシャルにリリースされています。
Prince - I Feel For You [Acoustic Demo] (Official Audio)
彼が天才的な”ポップス”のソングライターであったことを、あらためて思い知らされるデモです。ギター一本でもなんとも気持ちが良くなってくるような、こんな曲は彼以外には書けませんよね。
実はこの曲はチャカ・カーンより早く、ポインター・シスターズが1982年にカバーしています。大ヒットしたアルバム『ソー・エキサイテッド』に収録。ニルソン、カーリー・サイモン、リンゴ・スターなどとの仕事で売れっ子になったリチャード・ペリーがプロデュースし、彼のレーベル”プラネット”からリリースされています。プリンスの原曲に近いアレンジでした。
The Pointer Sisters - I Feel For You
マイケル、ジャネットのお姉さん、リビー・ジャクソンも1984年にカバーしていて、こちらも原曲のアレンジをベースにしていました。
それに比べて、チャカ・カーンは思い切ったアレンジをしていますよね。そのアレンジに大きく貢献したのが、かつてベイビーフェイスと”マンチャイルド””レッドホット”というファンク・バンドで一緒だったレジー・グリフィンと、昨日このブログに登場した”ザ・システム”のデヴィッド・フランク。
メインのアレンジはグリフィンが行い、フランクが全体のベース・ラインとラップパートのアレンジを担当したようです。
そこに、角松敏生や伊東たけしなどをプロデュースしたり、T-SQUAREなどフュージョン系のアーティストの作品にも参加しているフランスのキーボードプレイヤー、フィリップ・セスも参加しています。
また、スティーヴィー・ワンダーの「フィンガーティップス」がサンプリングされ(”Yes sir, one more time Say yeah~”ということころ)、彼がハーモニカも吹いているという本当に盛りだくさんな内容ですが、それぞれが実に効果的に配置されています。
1984年といえば、プリンスのアルバム「パープル・レイン」がぶっちぎりで売れていた頃。そこで、あえてプリンスっぽいアレンジにせず、洗練された都会的なファンク・サウンドを組み立てた彼らの手腕は、賞賛していいと思います。
さて、歌っているチャカ・カーンはシカゴ出身。1973年にルーファスというファンク・バンドのボーカルとしてデビューし、1974年にはスティーヴィー・ワンダーが書いた「Tell Me Somthing Good」が全米3位の大ヒットになっています。
1978年にソロデビューし、ホイットニー・ヒューストンのカバーでも有名な「アイム・エヴリ・ウーマン」が大ヒットし、上々のスタートを切ったのですが、その後のチャート・アクションは徐々にスローダウンしていったため、このアルバム制作時にはレーベルからヒットさせるようにという”厳命”があったようです。
さて、チャカのヴァージョンでは冒頭の、”チャカ、チャカ、チャカ、チャカ・カ〜ン”というラップの”つかみ”が抜群で、当時はみんな真似したものですが、ラップしているのはヒップホップ最初期のグループ”グランドマスター・フラッシュ・アンド・ザ・フューリアス・ファイヴ”のメリー・メルでした。
実は、この部分、狙ってやったものではなかったのだそうです。
この曲のプロデューサーのアリフ・マーディンはこう語っています。
「録音したものをメインマスターにマウントしているときに、リピート・マシーンで僕の手が滑ってしまったんだ。それで、たまたま「チャカチャカチャカチャカチャカチャカカーン」となったので、僕らは「これはとっておこう」となったのさ。とても面白いことだった。それはアクシデントだったんだ」
(NPR December 19, 2005)
そして、そのラップがチャカ本人をうんざりさせてしまうことにもなったみようです。
「みんな私に会うとそれをやろうとするの、私にとっては一種の”呪い”ね 。あの曲にはすごく飽きてるわ。残りの人生もずっと歌っていくと思うけど。だけど、私はもう十分」
(THE GUARDIAN Wed 25 Mar 2015 )
”呪い”とまで言うんですから、彼女は相当うんざりしているんですね、、。
さて、この曲の入ったアルバム『フィール・フォー・ユー』は、他の収録曲もバカラックの「愛は果てしなく(Stronger Than Before)」のカバーなど聴きどころは多くて個人的に大好きなアルバムですが、何と言ってもハイライトはデヴィッド・フォスター、トム・キーン作曲、シンシア・ワイル作詞によるこの名バラードでしょう。
その「Through The Fire」を、最後にどうぞ。