おはようございます。
今日はビリー・ジョエルの「マター・オブ・トラスト」です。
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ただ気持ちを偽っている愛もある
情熱的な始まった愛も冷たさだけが残っている
終わらせたくないけれど、そうなるだろう
それがいつになるのかというだけ
学ぶには十分なほど僕は生きてきた
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「信用」こそが現代の貨幣だ、といった発言を、特に事業を成功させている人の見解としてこの何年かでよく目にするようになりました。それだけ、今の世の中ではなかなか得難い貴重なものなのでしょう。
その「信用」を正面切ってタイトルにしたポップ・ソングは多くはないですが、この「マター・オブ・トラスト」はそのひとつです。
この間の大統領選や今回のコロナの問題に際してアメリカのCNNが昨年、信頼の重要性をアピールする"It's A Matter Of Trust"というCMを放送して、そのCMのBGMにこの曲のインスト・ヴァージョンが使用されていました。
日本だけでなく、世界中でいろんな意味での「信用」が失われ、それを回復させることが望まれているんですね。
ただし、この曲は本来は恋愛についての歌です
最初は激しくエモーショナルだった関係も時間とともに冷めてゆくのは避け難いこと、そこで大事になってくるのは、お互いをどれだけ信頼しているか、ということだという。
核心をついています。さすが、ビリー・ジョエル。
この頃の彼はモデルのクリスティ・ブリンクリーと結婚し一年しかたっていなかったようで(このMVにも彼女と生まれたばかりの娘が出てきます)、もうちょっと浮かれていても良さそうなのですが。でも、この人、テンションが上がったのは「イノセント・マン」の時期だけだったみたいですし、前妻との苦い経験が糧になったのかもしれません、この曲には自分に言い聞かせるような冷静な姿勢が感じられます。
彼の自伝を読むと、娘が生まれたことは人生最高の喜びだったと彼は語っていて、大きく価値観も変わったようです。
「子供を持つようになって変わったことといえば、自分の行動が改まりましたね。人間、成長しなきゃいけないと思ったら、成長するんです。でもロックンロールって”大人”になりすぎちゃいけないんですよね」
(「イノセント・マン ビリー・ジョエル 100時間インタヴューズ」)
その結果、創作になかなか意識が集中できず、彼はレコード会社にアルバム発売の延期するよう掛け合いましたが却下されたそうです。
プライヴェートな幸せが、創作のインスピレーションに直結しない、のが音楽の仕事の難しいところです。
同時にバンド・メンバーやプロデューサーとビリーの関係もあまり良くありませんでした。
「それまでのアルバム制作の現場に流れていた和気あいあいとした楽しげな雰囲気は消え、まるで単純作業のような空気に満ちていた」
(「イノセント・マン ビリー・ジョエル 100時間インタヴューズ」)
テンション低めのビリーに対して、レイ・チャールズやスティーヴ・ウィンウッドをゲスト出演させることでテンションをあげさせてなんとか作ったのが、この「マター・オブ・トラスト」が収録された「ブリッジ」というアルバムの真相のようです。
アルバムの内容自体は全然悪くないと僕は思うのですが、初めて聴いた時から何か説明のつかない重苦しいものがあるようには感じました。
でも、そのクリエイターの最高潮のときの作品だけを聴けばいい、っていうものでもないかなと思います。そうじゃない時期のものでも、何か妙に惹きつけられるものがあります。僕にとってはこの曲もそのひとつです。
あと、このMVですが、ニューヨークのイーストビレッジにあるセント・マークス・プレイスのビルの地下で演奏している様子が撮影されています。ビートルズの有名な屋上ライヴへのオマージュなんですね。その証拠に、ビデオの途中にポール・マッカートニーとリンゴ・スターが出てきます。
ネットをチェックしていたら、ある方のブログに、当初ビリーはブルース・スプリングスティーンが使っているような古いフェンダー・テレキャスターを弾いていて、撮影隊のひとりがビリーにスプリングスティーンのオマージュで素敵でしたと言ったら、キレてギターをレスポールに変えて最初から撮り直したなんてエピソードが書かれていました。
僕は中学生のころから彼の大ファンだったので、1990年代の中頃に、ニューヨークのマディソンスクエア・ガーデンでの彼のライヴを見たあと楽屋で握手をしたというのが、自慢の思い出の一つなんですが、実はその時彼は風邪をひいていて機嫌がものすごく悪くて、握手の瞬間なんだかものすごい目で睨まれたのをよくおぼえています。結構目がぎょろっとして目力強いんですよね。
憧れのヒーローにようやく会えて握手できた瞬間にマジで睨まれるという、その時僕も大人で仕事でしたから気持ちの整理もできましたが、僕が中学生のときだったらトラウマになったかもしれないです(笑。なので、ギターのエピソードも十分にありうるよな、なんて思ってしまいました。
最後に1987年のロシアでのライヴ。彼はフェンダー・テレキャスターを弾いてます。やっぱり、そっちを弾きたかったんですね、、
クリスティとの恋でテンションが上がっていた、彼にはかなり”レア”な時代を象徴する曲、「アップタウン・ガール」
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