まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「ハーヴェスト・フォー・ザ・ワールド(Harvest For The World)」アイズレー・ブラザーズ(1976)

 おはようございます。

 きょうはアイズレー・ブラザーズの「ハーヴェスト・フォー・ザ・ワールド」です。


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All babies together, everyone a seed
Half of us are satisfied, half of us in need
Love's bountiful in us, tarnished by our greed
When will there be a harvest for the world

A nation planted, so concerned with gain
As the seasons come and go, greater grows the pain
And far too many feelin' the strain
When will there be a harvest for the world

Gather everyman, gather everywoman
Celebrate your lives, give thanks for your children
Gather everyone, gather all together
Overlooking none, hopin' life gets better for the world

Dress me up for battle, when all I want is peace
Those of us who pay the price, come home with the least
Nation after nation, turning into beast
When will there be a harvest for the world

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赤ん坊はみんな一緒さ 誰もが一つの種なんだ

半分の人間が満たされ 半分は飢えている

愛は僕たちの中にたっぷりあるのに

強欲さに汚されている

いつになったら世界に収穫の時が来るのだろう

 

国家が植え育てるのは 利得につながるものばかり

季節が巡るとともに 痛みは大きくなってゆく

緊張することがあまりに多すぎる

いつになったら世界に収穫の時が来るのだろう

集まれ男たちよ 集まれ女たちよ
自らの命を祝い 子供たちに感謝を

集まれみんな あつまれみんな揃って

誰のことも見下ろさず 

この世界のために生活がより良くなるよう願うんだ


僕は武装させられるんだ ほしいのは平和だけなのに

代償を払うものは 全て失ったまま家に帰る

国民は次から次へと 野獣に変わる

いつになったら世界に収穫の時が来るのだろう       (拙訳)

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  アイズレー・ブラザーズはオケリー、ルドルフ、ロナルド・アイズレーの3兄弟のボーカル・グループとしてキャリアをスタートさせましたが、1970年代に入ると、弟二人、マーヴィン、アニー・アイズレーと従兄弟のクリス・ジャスパーがバッキングに加わり、そのままメンバーとなり6人組になります。

 

 この若者3人衆が大変な音楽的才能を持った面々で、そのおかげもあってアイズレー・ブラザーズは1970年代に全盛期、文字通り”収穫期”を迎えることになります。

 曲からアレンジまで3人でほぼ作りあげたあと、大きいお兄ちゃんたち3人を呼んで歌ってもらうという、ざっくりいうとそういうシステムで作っていたわけで、この「ハーヴェスト・フォー・ザ・ワールド」も例外ではないようです。

 

 ギターのアーニー・アイズレーはこう回想しています。

「12弦ギターが欲しかったので、マンハッタンの楽器店でギルドの12弦を買ったんだけど、これは今でも持っているよ。家に持ち帰って地下室で弾いてみたら、たまたま "All babies together Everyone a seed Half of us are satisfied Half of us in need... "というフレーズを思いついたんだ」

 アーニーが歌詞を含め曲の大部分を書き、そこにマーヴィンとクリス・ジャスパーが加わって曲とトラックを完成させます。

 歌詞についてクリスとアーニーはこう語っています。

「当時はベトナム戦争が終わったばかりで、まだ多くの人が行方不明になっていたし、経済もそんなに良くはなかった。今と同じように「持てる者」と「持たざる者」の間に大きな格差があったんだ。この曲はそういうことを歌っていて、「世界にはいつ収穫があるのか?いつになったら人々は今起こっているものを公平に分かち合える時が来るのか、いつになったら自分たちの人生に公平性を手にすることができるのか」という修辞的な質問をしているのです。基本的に私たちは、キリストの再来がその時であることを知っています。キリストは平等の神だから、最終的にはその時になるんだ。でも、この曲はその質問をしているだけなんだ」(クリス・ジャスパー)

 

新約聖書に『収穫は多いが、働き手が少ない』という記述があるけど、神の収穫のために働き手が出て集まってくることを祈っているんだ」 (アーニー・アイズレー)

 また、アーニーは「ハーヴェスト・フォー・ザ・ワールド」は

「すべての人間が招待され、誰もが参加することを妨げられない平和な集まりを意味している」とも語っています。

 

 1970年代、マーヴィン・ゲイの「ホワッツ・ゴーイン・オン」を大きな契機にして、黒人のアーティストが社会的な問題を投げかける曲を作るようになりましたが、この「ハーヴェスト・フォー・ザ・ワールド」もその流れにある曲と言えると思います。

 

 実際この曲が発売されると、多くの高校から年鑑用に歌詞の転載する許可を求められたそうです。

  また、今の時代は世界中がまさに”困難な時期の終焉”と”あらたな収穫の時”を待ち続けているようで、この曲が新しい意味を持って聴こえてくるような気がします。

 

 アイズレー・ブラザーズには他にヒット曲や人気曲がたくさんありますから、日本ではそれほど知名度があるとはいえませんが、海外では大変評価の高い曲のようです。

 特に彼らの本国アメリカ(全米チャート63位)よりもヒットしたイギリス(全英10位)では多くのアーティストがカバーしています。

 

 

  1985年に大ヒットしたパワー・ステーションの同名アルバムに収録されていたカバー。


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 ポール・ウェラー率いるスタイル・カウンシルもこの曲をやっていたんですね。


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 1988年に全英8位になったクリスチャンズ。


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 *メンバーの発言は「UNCUT」(31st March 2017)から転用し、和訳しました

 

 

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