まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「浅い夢」来生たかお(1976)

 おはようございます。

 今日は来生たかおのデビュー曲「浅い夢」を。


夏の歌① 浅い夢/ 来生たかお

 椎名林檎(兄の椎名純平にこの曲を薦めてカバーさせた)、小林武史(この曲の入ったアルバム「浅い夢」を自身の選ぶ名盤の一つにリストアップしている)など、アーティストからも高い評価を得ている”隠れた名曲中の名曲”です。

 

 日本のポップスで歌われる”夏の海”のほとんどが「湘南」を連想させるような気が僕にはします。例外があるとしたら、海外のリゾート地のビーチだったり。

 しかし、この「浅い夢」で歌われている”夏の海”は湘南でもいいですが、もう少しマイナーな、日本のどこの海水浴場でも合うような雰囲気を感じます。

 都会的な洗練を持ちながらも日本のローカル(地方)にも自然に溶けこめる彼独自のスタイルは最初から確立されていたんだなあ、と僕は思います。

 

 

 来生たかおは、1980年代の日本のヒット曲に馴染んだ者なら知らない人はいない大作曲家ですが、作曲を始めたのは高校三年のときで、最初はギターを弾いていて、ピアノを習ったのは20歳のとき(「レット・イット・ビー」を弾き語るポール・マッカートニーに憧れて)だったそうです。

 

 また彼は、ベンチャーズビートルズビーチ・ボーイズ、二ルソン、ギルバート・オサリバンなどに影響されたと語っています。

 ギルバート・オサリバンはのちに共演も果たしていて、彼への影響の大きさは作風からもはっきり感じられますが、二ルソンというのも、特に初期の彼のアルバムには、近いトーンがあるような感じがします。

 ちなみに「浅い夢」のシングル・ジャケットは、二ルソンの「ハリーの真相」のジャケットを参考にしたようです。

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 彼は20歳のころにバンドも始めて、渋谷の「青い森」というフォーク喫茶に出演しているときに井上陽水と知り合い、彼のバックでピアノを弾くようになり、陽水のプロデューサーにせっせとデモ・テープを渡し続けることで、デビューのチャンスを掴みました。

   ちなみに、陽水の「少年時代」のピアノを来生が弾いていて、その理由が、上手すぎず少年のような感じがよかったから、といったことをどこかで聞いたことがあるのですが、キャリアの初期に来生は陽水のバックをやっていたんですね。

 

 当初「浅い夢」はシングルのB面で「待ち人来らず」という曲がA面の予定だったそうです。

 しかし「パーマネント・ブルー 真夏の恋」という映画の主題歌の候補になったため急遽入れ替えたそうですが、結局主題歌は岸田智史が歌うことになって、もう元に戻せないのでそのまま「浅い夢」がA面になりました。

 

   アルバム「浅い夢」は関係者の評判も高く、井上陽水小椋佳に次ぐ大型新人としてプロモーションされたそうですが、残念ながらヒットしませんでしたが、作曲家としては翌年に「マイ・ラグジュアリー・ナイト」(しばたはつみ)がヒットを記録しました(オリコン17位)。


しばた はつみ ・・マイ・ラグジュアリー・ナイト

 翌1978年には三浦友和に書いた「ほほえみの扉」(三浦の出演するTVドラマの主題歌。アレンジは松任谷正隆)がオリコン11位のヒットになります。


三浦友和 ほほえみの扉

 シンガーソングライターとしては1981年にテレビドラマの主題歌だった「Goodby Day」が有線やラジオでじわじわ人気となります。ちなみに、僕が最初に彼の歌を聞いたのがこれでした。


来生たかお Goodbye day Live(1990, Nagano)

 そして同年11月、薬師丸ひろ子セーラー服と機関銃」と歌詞違いの自身の「夢の途中」に加え、大橋純子の「シルエット・ロマンス」もリリースされ、大ブレイクに至りるわけです。

 

 その後は80年代の女性アイドルの多くが彼に曲を依頼し、作家としても大人気で、それと並行してシンガー・ソングライターとしても良質な作品を作り続けています。当時は過労で不整脈になったほどだったそうです。

 

 彼の提供楽曲の中から最後に一つ。

 これも、「浅い夢」同様に”湘南”じゃないローカルの海岸でもフィットしつつ、しかもダサくならない夏の名曲だと思います。


中森明菜 - スローモーション

 

 

 

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来生たかお プレミアム・コレクション BHST-203

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