まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます

「ゴーストバスターズ(Ghostbusters)」レイ・パーカーJr(1984)

 おはようございます。

 今日もレイ・パーカーJr。そしてご存知「ゴーストバスターズ」です。


Ray Parker Jr. - Ghostbusters

 ” If there's something starange  In your neighbourhood

   Who you gonna call    Ghostbusters!

(あなたのご近所で もし何か奇妙なことが起こったら

 どちらに電話しますか?  ゴーストバスターズ!)

 

  「発売されて30年以上になるのに、今も新曲みたいな額の印税が入るんだよ」と本人もご満悦のこの曲ができるまでのレイ・パーカーJrの歩みを少し追ってみたいと思います。

 

 彼のはもともとスタジオ・ミュージシャン、凄腕セッション・ギタリストとして名を挙げた人だということを忘れてはいけないでしょう。

 彼は6歳からクラリネットサクソフォンを始めたそうですが、吹く楽器がいやになったので11歳ごろになるとお兄さんの持っていたアコギを弾き始めます。ちょうどそのとき自転車で足を骨折したこともあって、ひたすら家にこもって練習を始め、それから1年半の間、毎日、一日中練習したそうです。そして13歳の時にはかなりの腕前になったらしく、家のポーチでギターを弾いていたところを声かけられ初めてギャラをもらう仕事をすると、そのすぐ後にはなんとスピナーズのライヴのメンバーになったそうです。

 そういうわけで、彼にはモータウンのあるデトロイトに生まれ育ったという地の利がありました。その後、モータウンの様々なミュージシャンと共演し、わずか16歳でマーヴィン・ゲイスモーキー・ロビンソンのレコーディングに参加したそうです。

 そしてモータウンのメイン・ソングライター・チーム”ホランド-ドジャー-ホランド”がモータウンをやめたあと、それまで使っていたモータウンのお抱えミュージシャン軍団”ファンク・ブラザース”が使えなくなったので、その代わりの一人として彼を抜擢します。

 その後、スティーヴィー・ワンダーから声がかかりツアーのメンバーになります。レコーディングにも参加し、名盤「トーキング・ブック」に収録されている「Maybe Your Baby」では彼のギタープレイを聴くことができます。


Stevie Wonder - Maybe Your Baby

 ギタリストだけじゃなくソングライターとしても活動したくなった彼はスティーヴィーのバンドを辞めLAに拠点を移します。それまでにスティーヴィーから曲作りの秘訣を教わったそうです。しかし、当然すぐにソングライターとして活動できるわけではなく、彼はギタリストとして仕事を続けます。そして、名アレンジャー、ジーン・ペイジを介してバリー・ホワイトの仕事をやるようになります。

    彼はバリーに必死に自分の曲を売り込んだようですが、基本バリーはほとんど自分で作詞作曲するので採用されませんでした。しかし、バリーに採用されなかった曲が他に回って大ヒットします。

 曲を採用したのがルーファス。チャカ・カーンがボーカルをつとめるグループです。曲は「You Got The Love」(作詞はチャカ・カーン)。1974年に全米11位、R&Bチャートでは1位に輝きます。


You Got The Love

 そして、ついにバリー・ホワイトにも彼の曲が採用されます。1976年の「You See The Trouble With Me」(作詞はバリー)。アメリカではソウルチャートのみ(14位)でしたがイギリスでは2位になるなど、ヨーロッパ、カナダではヒットしました。

バリー・ホワイトっぽさとレイ・パーカーJrっぽさの両方が感じられるなかなかいい曲だと思います。


Barry White - You See The Trouble With Me

 

 そして昨日のブログでふれた「ジャック&ジル」のデモを聴いたアリスタ・レコードのクライヴ・デイヴィス(このブログのエア・サプライの記事にも登場しました)が気に入り、念願のデビューを果たすことになります。 

popups.hatenablog.com

  そして彼は代表曲「ウーマン・ニーズ・ラヴ」に似たグルーヴの曲をジュニア・タッカーという十代のシンガーに提供しますが、それを気に入ってライヴで取り上げたのがボビー・ブラウンが在籍していたニュー・エディションでした。彼らの担当者はこの曲をレコーディングしたいとレイに申し出ます。

popups.hatenablog.com

 曲は「ミスター・テレフォン・マン」。


New Edition - Mr. Telephone Man

 この時期の彼は親の病気のため地元のデトロイトにいることが長かったようですが、

ちょうどニュー・エディションの作業でLAにいるときに知り合いの映画会社の副社長から連絡があって「ゴーストバスターズ」の図書館のシーンのために曲を作って欲しいという依頼があったそうです。

 締め切りは2日後、曲は20秒程度でいいので、曲の中に「ゴーストバスターズ」という言葉を入れるというのが条件でした。

 彼は曲とアレンジは短時間で作ることができたのですが、「ゴーストバスターズ」という言葉がどうしてもうまく入れられなかったそうです。そして、夜中にふとTVを見ると排水設備会社(クラシアン、みたいなものだと思います)のCMで、

  “When you’re having trouble, who do you call?”(お困りの時、どちらに電話しますか)と言っていて、彼はこれだ、と思ったのだそうです。

 そして”ゴーストバスターズ”という言葉をメロディに入れるのじゃなくて、CM風の掛け声にすることにします、翌朝早くに知り合いの高校生に友達を集めさせて登校前に”ゴーストバスターズ”の掛け声をやらせて、デモを完成させる映画会社に送ると、監督がいたく気に入って、もっと長くして曲にしてほしいということになったそうです。

 もともと主題歌を依頼されたわけではなかったんですね。

 

 またこの曲はヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの「アイ・ウォント・ア・ニュー・ドラッグ」の盗作だという訴訟を起こされたことも有名です。


Huey Lewis And The News - I Want A New Drug (Official Music Video)

  最終的にはレイがお金を払って和解しました(ネットで裁判で負けたと書いている人もいますが”示談”です)が、そのことをヒューイが自身のドキュメンタリー番組でバラしたので、レイが逆にヒューイ側を提訴するなんてことにもなったようです(今度はレイがヒューイ側からお金を受け取りました)。当初「ゴーストバスターズ」の主題歌をヒューイに依頼したが断られた経緯があった、それは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」とバッティングしたから、といったような言説がネットでは見つかりましたが正確なところは分かりません。

 確かなことは映画会社からレイに依頼したときに映像はほぼ完成していて、レイが曲を考えたそのシーンには「アイ・ウォント・ア・ニュー・ドラッグ」が仮にハメられていたということです。監督がヒューイ・ルイスの大ファンだったようです。映画の編集段階で音楽が間に合わない時にとりあえず既存の曲を当てておくというのは通常行われることです。

 (映画「明日の向って撃て」の有名な「雨にぬれても」のシーンには、編集段階では仮に「59番街橋の歌(フィーリン・グルーヴィー)」が当てられていたといたそうです)

 レイは当然そのシーンを見ながら曲を作ったので寄ってしまったのは仕方ないと思いますし、言い出したらきりがないことではあります。

 この場合は本家よりもはるかに大ヒットしてしまったことがよくなかったのでしょうね。レイのほうも、もともと映画会社の要望に最大限答えようとしたあくまでも職人的なアプローチをしただけで、パクリ云々という意識はなかったと僕は思います。

 

 彼のミュージシャンとしての本格的なキャリアに比べたら、ずいぶん意外な曲が

”自分の代名詞”となったことになります。

 ただ「ゴーストバスターズ」はハロウィンの大定番曲としてマイケルの「スリラー」と双璧の存在になっていて、おかげで自分の子供からも尊敬されていると彼は語っているので、彼にとってよかったことだったのでしょう。

 

 全然話は変わりますが、先日テレビで嵐の大野智さんが、自宅待機の状況の中で

家で何をているかという質問に、キョンシーの映画(「霊幻道士」)を見て面白かった、と言っていたのが印象的でした。こういう時期だと、接する音楽や映画のセレクトがついつい真面目な方向に行ってしまいますけど。

 もちろん、その人の置かれた環境や嗜好性にもよるでしょうか、意味もなくただただ馬鹿げていて楽しいもの、というのも場合によっては、精神衛生上何かいい働きかけがあるんじゃないかなあ、と僕には思えたんです。

 そんな思いが今日の選曲に影響したかなあ、と今になって気づきました。

 

 

 

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