まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「君に想いを(It Might Be You)」スティーヴン・ビショップ(1982)

 おはようございます。

 今日はスティーヴン・ビショップの「君に想いを」。

 ダスティン・ホフマンの女装が当時大変話題になった映画「トッツィー」の主題歌です。


Stephen Bishop - It Might Be You (Tootsie) (1982)

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Time...
I've been passing time watching trains go by
All of my life
Lying on the sand watching sea birds fly
Wishing there would be
Someone waiting home for me
Something's telling me it might be you
It's telling me it might be you
All of my life

 

Looking back as lovers go walking past
All of my life
Wondering how they met and what makes it last
If I found the place
Would I recognize the face
Something's telling me it might be you
Yeah, it's telling me it might be you

 

So many quiet walks to take
So many dreams to make
And with so much love to make
I think we're gonna meet some time
Maybe all we need is time...
And it's telling me it might be you
All of my life

 

I've been saving love songs and lullabies
And there's so much more
No one's ever heard before
Something's telling me it might be you
Yeah, it's telling me it must be you
And I'm feeling it'll just be you all of my life

 

It's you, It's you
I've been waiting for all of my life
Maybe it's you (It's you), maybe it's you (It's you)
I've been waiting for you all of my life
Maybe it's you, maybe it's you
I've been waiting for all of my life

 

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     時よ 

        僕は電車が走りすぎるのをただ見送って

  時をやり過ごしてきたんだ 僕の人生ずっと

  砂浜に寝そべって 海鳥が飛ぶのを見ている

  僕のことを誰かが家で待っていてくれることを願いながら

  それは君かもしれないって気がする それは君かもしれない

  僕の人生でずっとそう思っていた

  

  すれ違う恋人たちを振り返ってばかりいたんだ

  僕の人生ずっと

  どうやって出会って どうやって関係を続けるんだろうなんて思いながら

  僕にその立場になったら  相手の顔がわかるかな

  何かが、それは君かもしれないって言っている 君かもしれないって 

  僕の人生でずっと

 

  ひっそりと長く歩き続けて たくさんの夢を見て 

  そしてたくさんの愛を抱えて

  僕らはいつか会えるんだ たぶん必要なのは時間だけ

       それは君かもしれないって言っている  僕の人生でずっと

  

  ラブソングや子守唄を書きためてきた もっとたくさんある

  誰にも聴かせたことがない歌さ

  何かが、それは君かもしれないって言っている 

  君に違いないって言っている 

  それはまさに君なんだって感じてる 

  僕の人生でずっと

 

  君だ、君なんだ

  僕の人生でずっと待っていたんだ

  たぶん君なんだ(君さ)、たぶん君なんだ(君さ)

  僕の人生でずっと君を待っていたんだ 

  たぶん君さ、たぶん君さ

  僕の人生でずっと待っていたんだ

                        (拙訳)

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「君に想いを」の楽譜はこちら

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 この曲を作曲したのは、ジャズ/フュージョンのアーティストでもあるデイヴ・グルーシン。1970年代に彼が共同で設立した「GRPレコード」はスムース・ジャズやフュージョン・ファンから大変に人気のあるレーベルでした。

 彼はまた「コンドル」、「グッバイガール」、「チャンプ」、「黄昏」、「恋におちて」など本当にたくさんの映画の音楽を手がけている”巨匠”のひとりでもあります。

 

 「トッツィー」に主演しているダスティン・ホフマン出世作「卒業」の音楽も彼が手がけていて、大ヒットしたサウンドトラックはサイモン&ガーファンクルとグルーシンの作品が半々くらいの構成になっていました。

 

 作詞は昨日登場した「風のささやき」そして、バーブラ・ストライザンドの「追憶」を書いた、アラン&マリリン・バーグマン。

 

 「トッツィー」の監督のシドニー・ポラックは「追憶」ですでにアランとマリリンと仕事をしていて、その才能を信頼していたようです。そして、彼らには映画の中でもエンディングでも効果的に使える曲を求めていたといいます。

 

「君の想いを」が”might"や”If"といった曖昧な言葉が多用されたことについて、マリリンはこう語っています。

 

シドニー(ポラック)が言っていたけど、『トッツィー』は、より良い男になるために女にならざるを得なかった男の話なの。この曲は、"might "や "if "などを使って全部曖昧なので、この男が相手に関わってゆく準備をしているということがわかるのよ」

(Performing Songwriter  September 30, 2010)

 

 女装することでブレイクしてしまった主役の俳優が、自分のことを女だと信じて友達になった女性を愛してしまう、自分が男だということを打ち明けようか葛藤するという歯がゆさ、ためらいのようなものも、この"might"で表現されていたのでしょう。

 

  歌っているのはスティーヴン・ビショップ。ナイーヴでメロウな曲を得意とするシンガー・ソングライターです。彼自身優れたソングライターなのですが、彼の中性的なボーカルが、女装する男性の話である「トッツィー」に合うということで抜擢されたといいます。

 

 歌う前に彼は映画会社から、まだ編集前で4時間以上も尺のある映画を見るように言われたそうですが、その映像には主にケニー・ロギンスの曲が仮で当てられていたそうです。

   彼のベスト盤にもこの曲を入っていますが、彼のオリジナル曲と全く違和感なく溶け込んでいます。彼以上にこの曲に合いそうな人は思い浮かばない、そんな”はまり役”だったと僕は思います。

 

 彼がこの曲を日本で歌っているライヴ映像がアップされていました。 


It Might Be You - Stephen Bishop (Live)

 

 最後は作曲したデイヴ・グルーシンのソロ・ピアノのヴァージョンを。

www.youtube.com

  

 アラン&マリリン・バーグマン作詞、ミシェル・ルグラン作曲による名曲

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 こちらもアラン&マリリン・バーグマン作詞のスタンダード

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 スティーヴン・ビショップの代表曲

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