まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ブラインディング・ライツ(Blinding Lights)」ザ・ウィークエンド(2019)

おはようございます。

今日はザ・ウィークエンドの「ブラインディング・ライツ」です。


The Weeknd - Blinding Lights (Official Video)

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I been tryna call
I been on my own for long enough
Maybe you can show me how to love, maybe
I'm going through withdrawals
You don't even have to do too much
You can turn me on with just a touch, baby

I look around and Sin City's cold and empty (oh)
No one's around to judge me (oh)
I can't see clearly when you're gone

I said, ooh, I'm blinded by the lights
No, I can't sleep until I feel your touch
I said, ooh, I'm drowning in the night
Oh, when I'm like this, you're the one I trust
Hey, hey, hey

I'm running out of time
'Cause I can see the sun light up the sky
So I hit the road in overdrive, baby

Oh, the city's cold and empty (oh)
No one's around to judge me (oh)
I can't see clearly when you're gone

I said, ooh, I'm blinded by the lights
No, I can't sleep until I feel your touch
I said, ooh, I'm drowning in the night
Oh, when I'm like this, you're the one I trust

I'm just walking by to let you know (by to let you know)
I can never say it on the phone (say it on the phone)
Will never let you go this time (ooh)

I said, ooh, I'm blinded by the lights
No, I can't sleep until I feel your touch
Hey, hey, hey
Hey, hey, hey

I said, ooh, I'm blinded by the lights
No, I can't sleep until I feel your touch

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ずっと電話しようとしていた

うんざりするほど一人ぼっちだった

たぶん、君なら愛し方教えてくれる、たぶんね

離脱症状を克服しようとしているんだ

そんなにたくさんする必要はないよ

ちょっと触れるだけで、君は僕を元気にできるんだ

見渡すと、シン・シティは寒くて空虚だ

僕を裁くヤツはまわりにはいない

君がいなければ、何もはっきり見えなくなるんだ

 

光で目がくらみ

君とふれあうまで眠れない

夜に溺れて

僕がこんなときは 君だけが頼りさ

 

時間はもうない

太陽が空を照らしている

だから、エンジン全開で走り出すよ

 

街は寒く空虚だ

僕を裁くやつなどいない

君がいなければ、何もはっきり見えなくなるんだ

 

光で目がくらみ

君とふれあうまで眠れない

夜に溺れて

僕がこんなときは 君だけが頼りさ

 

 

君に知らせたくて 通りかかっただけだよ

電話じゃとても言えないから

今度こそ君を離したくない

 

光で目がくらみ

君とふれあうまで眠れない,、、(拙訳)

 

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 メルセデスベンツが初の電気自動車を発売し、そのCMに起用されたのがこの曲です。

 

 ザ・ウィークエンドの英語表記はThe Weekndとeが抜けるんですね。同名のバンドがすでにいたためそう言う表記にしたそうで、高校時代に週末に家出をしたことが芸名の由来になっているそうです。両親がエイチオピア移民のカナダ出身のR&Bシンガーで、本名は”エイベル・マッコネン・テスファイ”といいます

 

 彼はデモ音源をYoutubeにアップすることからキャリアをスタートさせます。そして、無料販売したミックス・テープが評判になり、メジャーデビューに至ったようです。

 

 当初から暗くアンビエントな世界観が彼の特徴で、売れていくにつれてダークさは維持しつつ、巧みに”ポップさ”を混えるようになっていきます。その加減が絶妙に思えます。

 日本で大きく注目されたのは「Can't Feel My Face」という曲で、”次のマイケル・ジャクソン”というキャッチフレーズを多く見かけましたが、彼自身、大変なマイケルのファンなのだそうです。


The Weeknd - Can't Feel My Face

 この曲でコラボしたのが、世界一のヒット・プロデューサーにして、アーティストがここでヒット曲が欲しいという時に駆け込む”音楽業界の駆け込み寺”(僕が勝手に名づけました、、)、マックス・マーティンでした。

 ウィークエンドはアリアナ・グランデの「Love Me Harder」(2014)という曲で共演した時にははじめてマックスの作品に参加しました。


Ariana Grande, The Weeknd - Love Me Harder

 そして、彼は自分がもっとビッグになるためにはこういう曲がレパートリーに必要だと感じて、マックスと一緒にやることに決めます。

 ただ、彼は基本ダークでアンビエント、マックスはポップでメロディアス、と真逆です。当初、マックスのチームが彼に送ってきたデモを彼はすべて却下したそうです。

 どんなアーティストでも対応できるのがマックス・マーティンですから、ウィークエンドがこだわる部分も理解していきます。

 そして最初に出来上がったのが「Can't Feel My Face」の次のシングルになった「In The Night」でした。


The Weeknd - In The Night

  この曲はティアーズ・フォー・フィアーズの「ルール・ザ・ワールド」を思い出させる、なんていう意見もあったようです。

popups.hatenablog.com

 そう考えると、この「Blinding Lights」はダークな「テイク・オン・ミー」(a-ha)だと言えなくもないと僕は思うのですが、、。

 

popups.hatenablog.com

 

 この曲もマックス・マーティンが参加していますから、確信犯的にわざと80’sのシンセ・ポップを取り入れているのは間違いないでしょう。このシンセ音とドラムはオールドファンには懐かしいですが、若い人たちには面白く感じるのかもしれないですね。

 ちなみにこの曲は彼とマックス以外にもう三人共作者がいます。

 最近の洋楽が好きな方は当然ご存知だと思いますが、チーム制で曲を作るのが今や普通なんですね。

 2018年のヒット曲の上位100曲で平均をとったら、1曲あたり5,34人で書いていることになったそうです。

  この状況をオアシスのノエル・ギャラガーは芸術の死、だと語ったそうですが、マックス・マーティンは”芸術は芸術だと思う。エルヴィスもモータウンもホィットニーもチームで書いていたじゃないか”と反論しています。

 

 どうあれ、時代はどんどん動いていきます。みんながディスクトップで音楽を作るようになると、他と差別化してくれるアイディアが大変に重要になっていきます。

 たとえばこの”Blinding Lights"を聴く限り、歌詞やメロディーを書いた人より、シンセの音色とフレーズを決めた人の方が、ヒットへの貢献、ということだけでいえば大きいんじゃないかという気もしてしまいます。

 得意分野の違うエキスパートたちを集めて、様々なアイディアを結集しないとヒットは作りづらくなってきている、というのは間違いないのでしょう。

 

 もうすぐ49歳になるマックス・マーティンはかつてこう言っています。

「僕は自分に好奇心を持たせてくれる人の近くにいるのが好きなんだ。

経験なんてパズルの1ピースに過ぎない。ビートを作りトレンドを作るのは若い人たちのゲームだ。そのゲームにいたかったら、新しいポップ・トレンドにオープンでい続けなければならない」

 

 それから、興味深かったのは、80’sシンセポップ的なこの曲はアメリカでは最高11位と、いまいち振るわなかったのですが、イギリスでは彼の初めてのNo.1ヒットになっていることです。何十年たっても、やっぱりイギリス国民はシンセ・ポップが好きなんですかね。

 

 

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