まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「うれしいあの娘(You Didn't Have to Be So Nice)」ラヴィン・スプーンフル(1965)

 おはようございます。

 今日もラヴィン・スプーンフルで。「うれしいあの娘」です。


The Lovin' Spoonful - You Didn't Have to Be so Nice (Audio)

 

 ” 君はそんなに素敵じゃなくても良かったのに

   どっちみち君を好きになっていたんだから

      一度か二度見つめてくれればいい

      あとは君らしくおとなしいままで


   今日から君についていくって僕は言った

   一日か二日あれば、君を見つけられるってわかってたんだ

   そして、実際そうだった

 

      君が現れたのは静かな日だった

   そしてただ、僕の心に君の場所ができた

   そんな感じだったんだと思う

    僕が君の顔を見た瞬間は

 

  もう何日かあれば  僕は言うことができただろうか

  君はそんなに素敵じゃなくても良かったんだって

     どっちみち君を好きになっていたんだからって

 

        今日から君についていくって僕は言った

     一日か二日あれば、君を見つけられるってわかってたんだ

     そして、実際そうだった

 

        君はそんなに素敵じゃなくても良かったんだよ

     どっちみち君を好きになっていたんだから

        もし、一度か二度見つめてくれて

        あとは君らしくおだやかでいてくれれば   ” (拙訳)

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You didn't have to be so nice
I would have liked you anyway
If you had just looked once or twice
And gone upon your quiet way

Today I said the time was right for me to follow you
I knew I'd find you in a day or two
And it's true

You came upon a quiet day (ooh)
You simply seemed to take your place (ooh)
I knew that it would be that way (ooh)
The minute that I saw your face (ooh)

And when we've had a few more days (when we've had a few more days)
I wonder if I'll get to say (wonder if I'll get to say)
You didn't have to be so nice (be so nice)
I would have liked you anyway (would have liked)

Today I said the time was right for me to follow you
I knew I'd find you in a day or two
And it's true

You didn't have to be so nice (didn't have to be so nice)
I would have liked you anyway (would have liked you anyway)
If you had just looked once or twice (once or twice)
And gone upon your quiet way (quiet way)

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  ”You didn't have to be so nice I would have liked you anyway”

 (そんなにやさしくなくてもよかったんだよ。どっちみち君を好きになっていたんだから)

 自然体でやさしい、フレーズだと思いますが、これはバンドのメイン・ソングライターであるジョン・セバスチャンではなく、ベーシストのスティーヴ・ブーンが考えたものなんだそうです。

 

 バンドを組んだばかりの頃、メンバーのザル・ヤノフスキーから彼の故郷トロントからきた女友達であるニューリットを紹介され、スティーヴは恋に落ちたそうです。

 そして、ある日、ドラムスのジョー・バトラーの彼女の家に遊びに行った時、そこにあったピアノで、彼の頭の中にあったリフを弾き始めたそうです。

 

「このメロディーを弾き始めると、突然言葉が浮かんだんだ。“You didn’t have to be so nice, I would have liked you anyway,’’これはニューリットのことなんだ。

 彼女は素敵すぎる人だったからね。次の日の朝リハーサルの時に、ジョンにこの曲のアイディアについて話したんだ。彼はやってみようよ、と言ってくれた。そして僕たちはアイディアについて話し合った。メロディ、タイトル、1番のAメロ、最初に僕の考えたまま。だけど、曲として完成させる必要があった。ジョンには二行連句をくっつける才能があるからね。“Do you believe in magic in a young girl’s heart.”(魔法を信じるかい?)みたいに。彼が得意とする魔法のような発想法だよ」

                        (Goldmine Dec 11, 2019)

 

 ”君はそんなに素敵じゃなくてもよかったのに”は恋の始まりの頃の”のぼせ上がった”気持ちから生まれたフレーズだったんですね。

 実際の歌の中では、彼女に言うことのできなかった言葉として使われていて、少し切ない感じになっています。

 

 さて、彼らの「デイドリーム」はビートルズの「グッデイ・サンシャイン」の、「サマー・イン・ザ・シティ」はクリームの「英雄ユリシーズ」のインスピレーションの元になったとこのブログで書きましたが、この「うれしいあの娘」はビーチ・ボーイズの「神のみぞ知る」のヴォーカルの重ね方のヒントになったとか、ラヴィン・スプーンフルの何かの曲がメロディのヒントになった、といった記述が見つかりました。

しかし、こちらは、しっかり裏をとることはできませんでしたので正誤は不明です。

 ただ、ラヴィン・スプーンフルはデビュー後、ビーチ・ボーイズと一緒にツアーを回っています。ちょうど、ブライアン・ウィルソンがライヴを辞める時期だったので、ブライアンと共演したのは一度きりで、その後は代役のグレン・キャンベルやブルース・ジョンストンが加わったバンドと回ったようです。

 そしてスティーヴンはある時デニス・ウィルソンに誘われて「グッド・ヴァイブレーション」のオーヴァー・ダビングをしているスタジオを見学したことがあったと語っています。

    この二つのグループ、けっこう交流があったんですね。

「うれしいあの娘」と「神のみぞ知る」のヴォーカルの重ね方に、共通する特異なところはわかりませんが、、、(かえって「素敵じゃないか」のインスピレーションの元だというほうが、うなずける気がしますが、、)。

 

 彼らは、単に1960年代に大ヒットをいくつか出したバンドではなく、ポップ・ミュージックの偉大な巨人たちをインスパイアするような存在だった、ということを強調して、日本でもあらためて再評価してほしいなあと個人的に願っています。

 

 

 さて、最後にカバー・ヴァージョンを。

 アストラッド・ジルベルトもカバー、息子のマルセロとデュエットしています。

シングルにもなっていて、邦題はなんと「ママと歌おう」、、。


ママと歌おう*You didn't have to be so nice /アストラッドジルベルト

 

 テキサス州出身の幻のソフト・ロック・グループ”トリステ・ジャネロ”のヴァージョン。


You Didn't Have to Be So Nice  

 

 

 

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