まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「テイク・オン・ミー(Take On Me)」a-ha(1985)

 おはようございます。

 今日はa-haの「テイク・オン・ミー」です。


a-ha - Take On Me (Official 4K Music Video)

********************************************************************************

We're talking away
I don't know whatI'm to say

I'll say it anyway
Today's another day to find you
Shying away
I'll be coming for your love, okay?

Take on me (take on me)
Take me on (take on me)
I'll be gone
In a day or two

So needless to say
I'm odds and ends
But I'll be stumbling away
Slowly learning that life is okay
Say after me
It's no better to be safe than sorry

Take on me (take on me)
Take me on (take on me)
I'll be gone
In a day or two

Oh, things that you say
Is it a life or just to play my worries away
You're all the things I've got to remember
You're shying away
I'll be coming for you anyway

Take on me (take on me)
Take me on (take on me)
I'll be gone
In a day (take on me)

(Take on me)
(Take me on, take on me)
I'll be gone (take on me)
In a day (take me on, take on me)
(Take on me, take on me)
(Take me on, take on me)

********************************************************************************

僕らはしゃべり続けているけど

何を言っていいかわからないんだ

とにかく言ってみるよ

今日もまたあらためて君のことを見つけるんだ

もじもじしながら 君の愛のもとにむかうよ いいよね?

 

僕を引き受けて 僕を受けいれて

僕は行ってしまうんだ 1日か2日後には

言うまでもなく 僕はハンパなヤツさ
だけど  つまずきながら行くよ

人生は悪くないって、少しずつ学びながら
僕の後に言ってほしい

安全第一なんかじゃないって

僕を引き受けて 僕をいれて

僕は行ってしまうんだ 1日か2日後には


ああ、君の言っていること
それは本当なの?

それとも僕の不安をなくそうとしているだけ?
僕がおぼえていなくちゃいけないのは

君のことだけなんだ

君は萎縮しているけど

どっちにしたって、僕は君のもとにゆくよ

僕を引き受けて 僕をいれて

僕は行ってしまうんだ 1日か2日後には   (拙訳)

********************************************************************************

 

 80年代ポップスを最も象徴する曲をひとつ選べと言われたら、僕はこの曲をあげるかもしれません。

 それは、80年代ポップスの特徴である(1)ポップでキャッチー(2)シンセ主体のサウンド(3)PVがMTVでブレイク という要素をすべてハイレベルにクリアしていると思うからです。

 彼らはノルウェイ出身。ポップ・ミュージックが盛んじゃない国のしかも無名のバンドがデビューでいきなり世界的なヒットを飛ばすというのは異例中の異例。それは、いろんな要素が重なった結果だったようです。

 まず彼らは、バックの二人、ギターのポールとキーボードのマグネが一緒にバンドを始めます。ドアーズやジミ・ヘンに影響を受けていてダークでヘヴィなロックが好きだったようです。

 そして、この頃に「Take On Me」の原曲、マグネが作ったあの有名なリフもできていたそうです。ただ、当時はかなりパンクっぽいアレンジだったそうです。

 そして、そこにボーカルのモートンが加わり、そのリフを聴いて”これは世界的なヒットになる”と思ったそうです。

 3人は曲を完成しようとしましたが、納得できる形が見つからず何度も挫折して放り出す、その繰り返しでした。曲名はポールとマグネがやっていた時は「Miss Eerie(不気味、という意)」その後「Lesson One」になっていたそうです。

 ノルウェイの音楽市場は小さかったため、成功を夢見たポールとマグネは、学生だったモートンを置いて、二人でロンドンに行ったそうですが、全くうまくいかずノルウェイに戻ってきます。しかし、しばらくしてまたモートンを加えて3人でロンドンに行き、今度はマネージャーを見つけレコード会社に売り込むことに成功しました。

 レコード会社の担当者は、モートンが映画スターのようなルックスでロイ・オービソンのような声をしている、というところにまず魅かれたようです。

 そして、3曲あった彼らのデモの中に「Take on Me」があって、スタッフも気に入ってシングルにしようということになります。

 

 プロデューサーとして選ばれたのはトニー・マンスフィールド。”テクノ・ポップ”のパイオニアの一人で、高橋幸宏のアルバムにも参加するなどYMOのファンからもかなり認知されていた人です。

   ↓彼がやっていたバンドがNEW MUSIKです。


New Musik - Straight Lines

 トニーは1982年に購入したフェアライトCMI(サンプラーシーケンサー、シンセが一体化した、80年代を象徴する画期的な機材のひとつ)を使って「Take on Me」を仕上げました。それがこのヴァージョンです。


A-HA Take On Me 1984 Version

 しかし、地元ノルウェイ以外では全く売れませんでした。しかし、メンバーはこの曲は売れる可能性があると思ったようで、自分たちだけでもう一度トライしますがうまくいかず、そこで呼ばれたのがクリフ・リチャードとレオ・セイヤーを売った、アラン・ターニーでした。

 

 メンバーが作ったデモの評価が、本人たちからもスタッフからも高かったので、

アランはもとのデモのアレンジに近づけながら、よりブラッシュアップする方針をとります。

 そして、あのリフのフレーズは、いろいろ試した結果アランが持っていたローランドのJuno60というアナログシンセが一番しっくりしたそうです。

 

 曲はぐっと良く仕上がりました。しかしそれだけではまだ売れなかったそうです。そこで、相談を受けたレコード会社のエグゼクティヴの発案で実写をトレースしてイラスト化する”ロトスコープ”という手法を使ったPVを作ることになります。

 監督はマイケル・ジャクソン「ビリー・ジーン」やダイア・ストイレイツ「マネー・フォー・ナッシング」を手掛けたスティーヴ・バロン

 完成に3か月を要したそうですが、その甲斐あってPVがMTVでオンエアされ始めると一気にブレイクしたのです。

 

 メンバーのマグネがあの”イントロ”を思いついてから、大ヒットするに至るまで、実はかなりの年月と数えきれない試行錯誤と膨大な労力を要していたんですね。

 そして、それだからこそ、80年代のポップヒットの中で、今なお人気の高いスタンダードの一つになることができたのだと思います。

 

 そして、a-haはなぜ「テイク・オン・ミー」みたいなポップな曲を他に作らなかったのだろうと、僕はずっと不思議だったのですが、本来彼らはダークな音楽が好きな人たちで、「テイク・オン・ミー」だけは”イントロ”ができちゃったがために苦労して作った彼らにとっては異色な曲だったというわけなんですね。

 

 最後に、数あるこの曲のカバーの中から、一番オリジナルに忠実な感じのするウィーザーのヴァージョンを。


Weezer - Take On Me (Official Video)

 

アラン・ターニーの作品

popups.hatenablog.com

popups.hatenablog.com

f:id:KatsumiHori:20210330101207j:plain