まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ウォーク・アウト・トゥ・ウィンター(Walk Out To Winter)」アズテック・カメラ(1983)

 おはようございます。

 今日はアズテック・カメラの「ウォーク・アウト・トゥ・ウィンター」です。

www.youtube.com

 

Walk out to winter
Swear I'll be there
Chill will wake you
High and dry, you'll wonder why


We met in the summer and walked 'til fall
And breathless we talked, it was tongues
Despite what they'll say
It wasn't youth, we'd hit the truth
Faces of Strummer that fell from your wall
And nothing was left where they hung
So sweet and bitter
They're what we found so drink them down and


Walk out to winter
Swear I'll be there
Chill will wake you
High and dry, you'll wonder why
Walk out to winter
Swear I'll be there
Chance is buried
Just below the blinding snow


You burn in the breadline
And ribbons and all
So walk to winter
You won't be late, you'll always wait
This generation
The walk to the wall
But I'm not angry
Get your gear, get out of here and

Walk out to winter
Swear I'll be there
Chill will wake you
High and dry, you'll wonder why
Walk out to winter
Swear I'll be there
Chance is buried
Just below the blinding snow


Walk out to winter
Swear I'll be there
Chill will wake you
High and dry, you'll wonder why


Walk out to winter
Swear I'll be there
You'll find snowblind
This is life, this is life

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冬に向かって歩き出そう
誓って僕はそこにいくよ
寒さが君の目を覚ます
見捨てられて 君はどうしてって思うだろう


僕らは夏に出会い、秋まで歩いた
息することも忘れてしゃべった、それは異言*だった
ヤツらが何て言おうと
それは青春じゃなかった、僕らは真実を突き止めたんだ
君の部屋の壁から剥がれ落ちたストラマーの顔
それがあった場所にはもう何もない
すごく甘くて苦い
僕らが見つけたものだからそれを飲み干し、そして


冬に向かって歩き出そう
誓って僕はそこにいる
寒さで君は目を覚ます
取り残されて、君は不思議に思うだろう

冬に向かって歩き出そう
誓って僕はそこにいる
チャンスは埋もれている
まばゆい雪のその下に


君は食糧配給の列で燃やすんだ
リボンや全部を
だから冬へと歩こう
君は遅れやない、君はいつも待っている
この世代は
壁に向かって歩いてるようなもの
だけど僕は怒りはしない
準備を整え、ここから出る、そして

 

冬に向かって歩き出そう
誓って僕はそこにいくよ
寒さで君は目を覚ます
取り残されて、君は不思議に思うだろう

冬に向かって歩き出そう
誓って僕はそこにいるさ
チャンスは埋もれている
まばゆい雪のその下に


冬に向かって歩き出そう
誓って僕はそこにいるさ
寒さで君は目を覚ます
取り残されて、君は不思議に思うだろう

冬に向かって歩き出そう
誓って僕はそこにいるさ

君は雪鳥を見つけるだろう
これが人生、これが人生               (拙訳)

 

    *異言(tongues)・・・キリスト教で、聖霊を受けて宗教的恍惚 (こうこつ) 境におちいった人が語る、一般の人には理解しがたい言葉。

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    アズテック・カメラは1980年代に流行した、”ネオ・アコ”を代表するバンドです。ネオ・アコはネオ・アコースティックの略でイギリスで生まれたロックですが、和製英語、日本独自の呼び名です。

 

 当時、彼らは日本でも結構話題になりましたし、「思い出のサニービート(Oblivious)」もよくラジオで耳にしましたが、イギリスでは当時最高16位でしたからそこまでの大ヒットではなかったようです。


Aztec Camera - Oblivious (Official Video) (REMASTERED)

 日本での人気の要因は、バンドの中心人物ロディ・フレイムが美少年だったことも大きいでしょうし、アコースティックでセンスがあって爽快感もある、というのも日本人の大好きな感じだったのでしょう。

  しかし、彼(ら)は、おしゃれなお坊ちゃん、というわけではなく、スコットランド出身のパンク・ロックに深くシンパシーを感じていた貧しい若者でした。

 ネオ・アコ以前のイギリスのロックといえば”パンク”です。しかし1980年に入るとそのブームは終息します。電子楽器が導入され、MTVが始まったことでビジュアルを重視したわかりやすい楽曲を作るアーティストが現れました。ワムやカルチャー・クラブ、デュラン・ディランなどですね。

 その中で、パンク・バンドの精神性は継承しながらも、自分たちらしいロックを模索していたのが、当時のイギリスのインディーズシーンの若いバンドたちでした。

 

 

 この「ウォーク・アウト・トゥ・ウィンター」の歌詞はカジュアルな語り口調でありながら詩的でもあって、本当に素晴らしいものだと思いますが、その中でもファンには有名な一節があります。

 ”壁から剥がれ落ちたストラマーのポスター それが貼ってあった場所には何もない”

 (ジョー)ストラマーはパンク・シーンを代表するバンド”ザ・クラッシュ”のリーダー。クラッシュ以降、代わりになるようなバンドがいない、今の時代はパンクに代わるロックがない、ということを表しているわけです。

 また一つの時代の終わり、青春期の終わり、ということもそこに重ねてあるのです。

 

 僕はロディ・フレイムと同い年なんですが、当時の日本とイギリスは世の中の状況は大きく違っていました。日本は80年代というと明るい、能天気な時代というイメージがありますが、イギリスはサッチャー首相の時代で若者の就職率がどんどん下がっていった大不況期だったのです。

 

 当時は、同じ世代だから音楽性がナイーヴだよなあ、などと僕は彼に勝手なシンパシーを感じていたわけですが、今思えば世の中を見る目のシリアスさが全然違っていました。

 ウォーク・アウト・トゥ・ウィンター、冬の中に歩き出そう、という歌詞は、厳しい世の中へ踏み出そう、という意味が込められています。

  自分たちの世代は、 壁に向かって歩くようだ、という歌詞もあります。

 そんな時代でも、冬のなかを歩き出せば、太陽を受けて光っている雪の真下に、チャンスが埋められているかもしれない、と希望を語るのです。

 

 ぱっと聴きはソフトな感じがしますが、その中には、反骨心や気概がこめられている、極端な言い方をすればパンク・スピリットを持つソフト・ロックであるところが、

アズテック・カメラなどのネオ・アコのバンドが人気があった要因だったのかなと思います。そして、それが日本のアーティストたちに影響を与えていくわけです。

 

 

 

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