まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「海が欲しいのに」畠山美由紀(2003)

 おはようございます。

 今日は畠山美由紀

 1990年代に”Port of Notes"というユニットのヴォーカルとしてデビュー。”カフェ・ミュージック・ブーム”の中心的存在になりました。

 「海が欲しいのに」は彼女がソロになってからのシングル。彼女のレパートリーの中では異色とも言えるポップな楽曲です。

 共作曲、編曲、プロデュースは冨田ラボ冨田恵一)。キリンジのアレンジャーとして評判をあげ、一般的に一番有名なのはMISIAの「Everything」のアレンジでしょう。一聴して彼のアレンジだとわかるサウンドを持っている数少ないクリエイターです。非常に緻密で高度なことをやっているのに、洗練されかつ聴きやすいサウンドに落とし込んでゆく技はいつも見事で、日本で数少ない”ポップスの匠”の一人だと思います。

 

 彼はこんなことを言っています。

「もちろんポップスにおいて楽曲の質は重要だが、アーティストの認知度を考えた場合、一聴して聴き分けられる声質を持つか否かがより重要になってくる。」(「ナイトフライ 録音芸術の作法と鑑賞法」)

 

 仕事ぶりからは究極のサウンド重視の人のように見えますが、ポップスの本質は”声”、しかも上手い下手じゃなく強い個性、だと看破しているのはさすがです。

 畠山美由紀は、決して変わった声というわけではありませんが、ふわっとして柔らかい声の人が多かったカフェ・ミュージック・ブームのボーカリストの中で、しっかりと芯があって、声に独特の存在感がありました。のちに美空ひばり八代亜紀のカバーまでするようになったのも頷けます。

 

 彼女のような存在感の強いシンガーが明るくポップな歌を歌う場合、下手をすると歌と曲調とのギャップができてしまいますが、「海が欲しいのに」は、心地よいのにサウンドの密度もしっかりあって、彼女の歌とのバランスが見事です。

 声の個性もしっかりあって技量も高い彼女は、冨田としてもとてもやりがいのあるシンガーだったのではないかと思います。ちなみに、彼女の新作アルバム「Wayfarer」は久しぶりの両者の組み合わせで、その相性の良さをあらためて見せてくれています。

  


Umi ga hoshiinoni Miyuki Hatakeyama

 

海が欲しいのに

海が欲しいのに