おはようございます。今日はブルース・スプリングスティーンの「明日なき暴走(Born To Run)」です
In the day, we sweat it out on the streets
Of a runaway American dream
At night, we ride through mansions of glory
In suicide machines
Sprung from cages out on Highway 9
Chrome wheeled, fuel injected and steppin' out over the line
Oh, baby this town rips the bones from your back
It's a death trap, it's a suicide rap
We gotta get out while we're young
'Cause tramps like us, baby we were born to run
Yes, girl, we were
Wendy let me in, I wanna be your friend
I want to guard your dreams and visions
Just wrap your legs 'round these velvet rims
And strap your hands across my engines
Together we could break this trap
We'll run 'til we drop, baby we'll never go back
Oh, will you walk with me out on the wire?
'Cause baby I'm just a scared and lonely rider
But I gotta know how it feels
I want to know if love is wild, babe
I want to know if love is real
Oh, can you show me?
Beyond the palace, hemi-powered drones
Scream down the boulevard
The girls comb their hair in rearview mirrors
And the boys try to look so hard
The amusement park rises bold and stark
Kids are huddled on the beach in a mist
I wanna die with you, Wendy, on the streets tonight
In an everlasting kiss
The highways jammed with broken heroes
On a last chance power drive
Everybody's out on the run tonight
But there's no place left to hide
Together, Wendy, we can live with the sadness
I'll love you with all the madness in my soul
Oh, someday girl, I don't know when
We're gonna get to that place
Where we really want to go, and we'll walk in the sun
But 'til then, tramps like us
Baby, we were born to run
Oh honey, tramps like us
Baby, we were born to run
Come on Wendy, tramps like us
Baby, we were born to run
Woah-oh-woah,,,
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昼間、俺たちは汗まみれになって働いている
アメリカン・ドリームも逃げていった通りで
夜になれば、大金持ちたちの館を
自殺マシンで駆け抜けてゆく
檻からハイウェイ9に飛び出して、
クロームのホイール、エンジンに燃料噴射 境界線を越えてゆく
おお この街は お前の背中から背骨を剥ぎ取っちまう
それは死の罠、それは自殺の容疑
抜け出さなきゃ まだ若いうちに
だって、俺たちみたいな流れ者は、走るために生まれたんだ
そうさ、俺たちは
ウェンディ、中に入れてくれ 友達になりたいんだ
君の夢と幻想を守りたい
このベルベットみたいな車輪を跨いで
両手を俺のエンジンにまわしてくれ
一緒なら、この罠を突破できる
倒れるまで走り続け もう後戻りはしない
おお、俺と綱の上を歩いてくれるかい?
俺はただ怖がりで孤独なライダーだから
だけど、それがどんな感じか知りたい
知りたいんだ、愛がワイルドなのかどうか
愛がリアルなのかどうか
教えてくれないか?
宮殿の向こうでは、ヘミエンジンの轟音が
大通りを叫ぶように走り抜けてゆく
女たちはバックミラーを見ながら髪をとかし
男たちはタフに見せようとしている
アミューズメントパークは剥き出しでそびえ立ち
若者たちは霧の中、ビーチに集まっている
君と死にたいんだ、ウェンディ、今夜、この街で
永遠のキスを交わしながら
ハイウェイはぶっ壊れたヒーローたちで混み合ってる
最後のチャンスに賭けるために
今夜は誰もが逃げようとしている
でも、隠れる場所なんてどこにもない
一緒なら、ウェンディ、悲しいときも生きていける
俺の魂の狂おしさ全部で君を愛すよ
おお、いつか君と、いつになるかはわからないけれど
その場所にたどり着く
本当に行きたい場所へ、そして太陽の下を歩くんだ
だけど、それまでは、俺たちみたいな流れ者は
走るだけしかできないんだ
ああ そうさ、俺たちみたいな流れ者は
走るために生まれてきたんだ
さぁウェンディ、俺たちみたいな流れ者は
走るために生まれてきたんだ
ウォーオーウォー (拙訳)
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スプリングスティーンは『エスクワイヤ』誌のインタビュー(Nov 27, 2018)でこう語っていました。
「『Born to Run』それが僕の墓碑銘だ。もし僕の墓碑銘が知りたいのなら、それがそうだ、 ずっと、たぶん』
彼自身もこの「明日なき暴走(BORN TO RUN)」こそが墓碑銘にするほどの自分の代名詞的存在であると認めているわけです。
事実、この曲によって彼の人生は大きく変わりました。彼にとって初めてのシングル・ヒット(全米23位)となり、音楽ライターのジョン・ランダウ(のちに彼のマネージャー/共同プロデューサー)の記事の言葉
”僕はロックンロールの未来を見た。その名はブルース・スプリングスティーンという”
をキャッチコピーとしてレコード会社も大々的にキャンペーンをはり、「タイム」「ニューズウィーク」の表紙を同時に飾るという、ロック・アーティストとしては前例のない扱いを受け、一躍、時の人、新時代のヒーローの座に躍り出たわけです。
1. ”労働者階級のヒーロー”誕生
「明日なき暴走」という歌は、労働者階級の若者が人生の本当の意味を探してもがきながら、”ここ”ではない場所へ逃げ出そうとしている内容で、まさに新たな”労働者階級のヒーロー”にふさわしいテーマでした。それまでは、エンタメで描かれたのは貧しい生まれのアーティストが”スター”になることで”上流階級”に加わるという世界がほとんどだったのですが、スプリングスティーンは労働者階級のままでヒーローになれる、という新たなイメージをこの「明日なき暴走」で打ち出したのです。
ただ、彼が歌っていたのは「明日なき暴走」の歌詞にもあるように、希望もないリアルな労働者階級の現実を描きながら、そこに刹那の、一夜限りのドラマを組み込んでいたわけですが。
先ごろ日本で発売された「明日なき暴走(50周年ジャパン・エディション)」のライナーノーツでジョージ・カックル氏は1960年代から70年代にかけてアメリカで教育を受けた人間はみんな一度は労働者階級に憧れたはずだ、と語っています。学校で読まされるのはウディ・ガスリー、ヘミングウェイ、スタインベックなどの労働者階級の世界を描いた本ばかり、耳にするロックも労働者階級の歌ばかりで、スプリングスティーンのようなヒーローが生まれる下地はすでにあって、そういうヒーローは労働者階級じゃない層の若者にもアピールした、ということです。
1980年代に彼の入手困難なライヴ・チケットがウォール街のエリートたちの取引の道具になった、という話を聞いたことがありましたが、単にそれはプレミア商品だったからじゃなく、中流層、富裕層も彼に興味を持っていた、ということもあったのかもしれません。。
2. 音楽的にはスプリングスティーンが10代の頃に大好きだった音楽の集大成
また、「明日なき暴走」の音楽的なモチーフとしては彼はこういう風に語っています。
「俺は『明日なき暴走』で、ボブ・ディランのような詩を書き、フィル・スペクターのようなサウンドを作り、デュアン・エディのようなギターを弾き、そして何よりもロイ・オービソンのように歌おうと努力したんだ」
また彼の自伝によると、アルバムの作曲用にコテージを借りると、彼はベッドサイドの小さなテーブルにレコードプレイヤーを置き、
「ロイ・オービソンやフィル・スペクター、デュアン・エディの曲を子守唄に眠りについた。」
自分が好きだった1950年代〜1960代のロックンロールを、自分の”潜在意識”にぶちこんでいったんですね。もちろん、ミュージシャンですから音楽的な分析も相当したでしょう。
でも、僕が思うに、意識的に参考音源を聴きながら分析しながら作るものでは、しょせんオリジナルには勝てませんし、下手すればパクリになってしまいます。
創作というものは潜在意識の中に一度もぐってから思いがけない形で出てきたものだけが”オリジナル”になる、のだと僕は思います。
ただ、歌詞、曲、ギター、歌はスプリングスティーン本人の独力でなんとかなるものですが、サウンドに関しては、他の人たちとの共同作業ですから、ここに一番苦労したようです。ディオンをプロデュースしていたフィル・スペクターのレコーディングを見学に行ったそうですし、エンジニアのジミー・アイオヴィンはフィルと仕事をしたことがありました。しかし、何ヶ月かけても彼の望むようにはサウンドにはならなかったようです。あまりに悩みすぎて、一度完成したマスターテープをプールに投げ捨てようとしたなんて逸話もあります。
結果的にこの曲の、スッキリしていない、混沌としたサウンドが、同時代の他の音楽との大きな差別化につながったのではないでしょうか。
こうして、彼は自分の大好きな音楽を潜在意識の中でごった煮にした後、意識的にアウトプットし、細部にまでこだわってしぶとく制作にしたことで、オリジナルなスタイルのものにを作り出すことに成功したように僕には思えます。
3. 鬱の気質から生まれた(?)創作、ライブ・パフォーマンス
ちなみに、世の中の全ての曲の中で、僕の脳内のアドレナリンが最も放出される曲が「明日なき暴走」なんですね。もちろん放出量を測ったことなんてないですけどw。とにかく、このライヴ映像を見れば、それがよくわかると思います。
こんなハイテンションな演奏がほとんど4時間近く続くショーを彼は長年やり続けていたわけです。1985年の彼の初来日公演を僕は見に行きましたが、約3時間半ずっと激しく動き回り、熱唱しシャウトし、全エネルギーを全て使い果たすような彼の姿を見て驚いたことを覚えています。そして彼のショーは常にクライマックスの「明日なき暴走」に向かってよりテンションを上げていきます。その無尽蔵なエネルギー僕は圧倒されました。
しかし、2016年、まさに「BORN TO RUN」というタイトルがつけられた自伝で彼は長年重度の鬱に悩まされていたことを告白し、今年公開された映画「スプリングスティーン 孤独なハイウェイ」では双極性障害だった父親が彼の心に深い影響を与え、彼自身も鬱症状に苦しむ姿を描いていました。
あの無尽蔵に思えるようなエネルギーに満ちたパフォーマンスと鬱病というのは、一見真逆のもののように思えますが、僕にはそれがコインの裏表のようなものに思えるんです。乱暴で無神経な推論だと思われるのを覚悟で言えば、彼が鬱の気質を持っていたからこそ、「明日なき暴走」は生まれ、常人とは思えないライヴパフォーマンスをやっていたんじゃないか、と。心の闇が深いからこそ、その反動のエネルギーは強くなり、「明日なき暴走」をクライマックスにする激しいパフォーマンスする代償として、また揺り戻してくる”鬱”がよりキツくなっていく。そんな両極端に揺れる振り子のようなアーティスト人生を彼は歩んできたのではないかと思えるんです。もちろん、これは僕の勝手な想像ですが。
しかし、彼の作品群の多くには、彼の心の深い闇から抜け出すためのエネルギーが込められている気がします。そして、彼のライヴからはそういうエネルギーが間違いなく感じられます。
僕自身は鬱病ではありませんが、抑うつというか、それに近い症状になってしまったことは何度かあります。そんな時に、彼のライヴ映像を見て、わけもわからず号泣してしまい、その後いつの間にか少し気持ちが持ち直したという経験があるんですね。それはただ単に大好きなアーティストだからだと思っていました。でも、他にも大好きなアーティストはいますが、そういう感覚になるのは彼だけだったんですよね。そんなことをあらためて考えると、心の闇から必死に抜け出そうとするエネルギーを僕は感じとったんじゃないかと思っています。
そういうところがブルース・スプリングスティーンというアーティストの特異なところじゃないでしょうか。
「明日なき暴走」の公式ライブ映像は複数あって、時代の変化を追っていくのも興味深いのですが、今回は最も古い1975年のロンドンでの演奏を。クラッシュのジョー・ストラマーもこのライブを見てすごく影響を受けたと語っています。



