まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲を選曲しました(苦笑)。古今東西のポップ・ソングをエピソード、歌詞の和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。みなさんの音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればうれしいです。みなさんからの情報や思い出話などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「朝日のない街(We Gotta Get out of This Place)」アニマルズ(1965)

 おはようございます。

 今日はアニマルズの「朝日のない街」です。

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In this dirty old part of the city
Where the sun refused to shine
People tell me there ain't no use in tryin'
Now my girl, you're so young and pretty
And one thing I know is true
You'll be dead before your time is due, I know
Watch my daddy in bed a-dyin'
Watched his hair been turnin' grey
He's been workin' and slavin' his life away
Oh, yes I know it

 

(Yeah) And I've been workin' too, baby
(Yeah) Every night and day
(Yeah)
Yeah, yeah, yeah, yeah

 

We gotta get outta this place
If it's the last thing we ever do
We gotta get outta this place
'Cause girl, there's a better life for me and you

 

Now my girl, you're so young and pretty
And one thing I know is true
You'll be dead before your time is due, I know
Watch my daddy in bed a-dyin'
Watched his hair been turnin' grey
He's been workin' and slavin' his life away
I know he's been workin' so hard


(Yeah) Every day, baby
(Yeah) Whoa, ohhh...
(Yeah)
Yeah, yeah, yeah, yeah

 

We gotta get outta this place
If it's the last thing we ever do
We gotta get outta this place
Girl, there's a better life for me and you
Somewhere, baby
Somehow I know it, baby

 

We gotta get outta this place
If it's the last thing we ever do
We gotta get outta this place
Girl, there's a better life for me and you
Believe me, baby
I know it, baby
You know it too

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街の、この汚れて古びた一帯は
太陽も輝くことを拒んでいる場所さ
みんなオレに言う  何やっても無駄だって
ねえマイ・ガール, オマエは若くてかわいい
ひとつだけオレが知ってる真実がある
オマエは寿命が来る前に死んでしまうのさ、そうなんだ
髪が白くなるのをじっと見ながら
ベッドで死にかけているオレの父さんを見てみろよ
奴隷のように働いて人生をすり減らしてるのさ
ああ、そうさ、オレはわかってるんだ

 

(Yeah) オレも働きづめさ、ベイビー
(Yeah) 毎日毎晩
Yeah, yeah, yeah, yeah

 

この場所から出て行かなくちゃな
もし、それがオレたちが最もやれそうにないことなら
ここから出て行かなくちゃいけない
だって、オレやとオマエにはもっとマシな生活があるからさ

ねえマイ・ガール, オマエは若くてかわいいよ
1つだけ僕は真実を知ってるんだ
オマエは寿命が来る前に死んでしまうのさ、そうなんだ

髪が白くなるのをじっと見ながら
父さんがベッドで死にかけているのを見ている
奴隷のように働いて人生をすり減らしてるのさ
一生懸命働いているのはわかっているよ


(Yeah) 毎日、ベイビー
Yeah, yeah, yeah, yeah, yeah


この場所から出て行かなくちゃな
もし、それがオレたちが最もやれそうにないことなら
ここから出て行かなくちゃいけない
だって、オレやとオマエにはもっとマシな生活があるからさ
どこかに、どこかにあるんだよ、ベイビー

 

この場所から出て行かなくちゃな
もし、それがオレたちが最もやれそうにないことなら
ここから出て行かなくちゃいけない
だって、オレやとオマエにはもっとマシな生活があるからさ
信じておくれ、ベイビー
オレにはわかるんだ、ベイビー
オマエもわかるだろ

          (拙訳)

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 アニマルズは1963年、イングランド北東部のニューカッスル・アポン・タインで結成されました。ベースになっているのは”アラン・プライス・リズム&ブルース・コンボ”というグループで、アラン・プライス(キーボードとボーカル)、ヒルトン・バレンタイン(ギター)、ブライアン・チャスチャンドラー(ベース)、ジョン・スティール(ドラム)というメンバー。

 そこに、かつてアラン・プライスと一緒にバンドをやっていたヴォーカリスト、エリック・バードンが加わり、バンド名をアニマルズとしました。

 

 アニマルズというバンド名の由来には諸説あるようですが、2021年のドラマーのジョン・スティールのインタビューによると、グラハム・ボンド(vo、sax、og)がジンジャー・ベイカージャック・ブルースと組んでいた”グラハム・ボンド・オーガニゼーション”の前座を彼らがやったときに、彼らのマネージャーから、ビートルズが盛り上がっているから早くロンドンに行け、と声をかけられ、”アラン・プライス・リズム&ブルース・コンボ”というバンド名はよくないから、グラハム・ボンドが”アニマルズ”とつけてくれた、ということでした。

 エリック・バードンは"Animal" Hoggという自分の友達に捧げたものだと語っているようですが。

 

 ニューカッスルで演奏する彼らに目をつけたのが、ミッキー・モスト。彼らにプロデュースしたいとオファーすると、セカンドシングルが特大のヒットになりました。

 それが彼らの代名詞的楽曲で、1964年に全米、全英の両方で1位になった「朝日のあたる家(The House of the Rising Sun)」です。

 

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 それに次ぐ彼らの代表曲はこれでしょうか。1965年全英3位、全米15位、「悲しき願い(Don't Let Me Be Misunderstood)」。

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 こちらはオリジナルはニーナ・シモン。彼女の歌っているものは、これほど切実な歌唱は滅多に聴けないと思うほどすごいものですが、アニマルズのカバーはあの必殺のイントロのリフを考えた人がMVPでしょう(このリフはニーナ・シモンのヴァージョンのリフをベースにしたものではありますが)。

 僕がこの曲を初めて聴いたのが、サンタ・エスメラルダか尾藤イサオだったと思いますが、どちらもアニマルズのカバーをベースにしていました。

 

 そして「悲しき願い」の次の次のシングルが、この「朝日のない街」です。こちらも全英2位、全米13位と、「悲しき願い」よりも良い成績をあげた、彼らの代表作の一つです。

 

 

  2012年に行われたサウス・バイ・サウスウエスト(米テキサス州オースティンで、毎年3月に開催される世界最大級の複合カンファレンス & フェスティバル)の基調講演でブルース・スプリングスティーンは、この「朝日のない街」は、「天啓であり、階級意識が完全に現れた最初のレコード」であり、働く下層階級の男がより良い生活を求める、というこの曲の歌詞は、スプリングスティーンのすべての曲で聴けるものだと語っています。

 「俺が書いたどの曲もだ。全部がだ。冗談を言っているんじゃない。「明日なき暴走」も「ボーン・イン・ザ・U.S.A」もそうだ」

 

 アメリカの労働階級の若者の英雄であるスプリングスティーンの全楽曲のエッセンスはこの「朝日のない街」に集約されると言い切っているわけですから、ものすごいことです。

 

 しかし、この曲を書いたのは労働階級の若者ではなく、バリバリの職業作家で、アメリカのポップス史上屈指の名ソングライター・チームであり、おしどり夫婦としても知られるバリー・マン&シンシア・ワイルなんです。

 しかも、歌詞については奥さんのシンシア・ワイルが書いているんですね。

 

 「BARRY MANN&CYNTHIA WEIL Original Demos,Private Recordings and Rarities」のライナーノーツのインタビューで彼らはこのように語っています。

 

シンシア:「この曲はもともとライチャス・ブラザーズのために、よりそういう方向性で書いたものなの。それで、私たちは、のちにビートルズストーンズのマネージャーになるアラン・クレインと少し仕事をしていたんだけど、彼のデスクにデモを置いておたの、、」

バリー:「彼に聴かせたんだよ」

シンシア:「それで、私たちはそのことを忘れていて、バリーは自分のデモをレッド・バード・レコーズからリリースしようとしていて、そのとき私たちの音楽出版社のドン・カーシュナーが電話してきてこう言ったの”いいニュースと悪いニュースがある。いいニュースは、イギリスで君たちの曲が2位なった。悪いニュースは、バリー、君のレコードは多分リリースできない”って。アニマルズがレコーディングしたものがチャートを駆け上がったのよ」

 

 アラン・クレインはこの当時、アニマルズのプロデューサーであるミッキー・モストのアメリカのマネージャーをやっていたのです。

 

 

  バリーとシンシアはアニマルズのヒットに正直失望したようです。バリーはこう語っています。

「僕は傷ついたよ、僕のデモは本当にヒットすると思っていたから。ヒットして当然だと感じていたから」

 デモと言っても、「ふられた気持ち」で大ヒットを飛ばしていたライチャス・ブラザーズに聴かせるために、かなりクオリティの高いものを作っていたんですね。

 

 一方、シンシアのほうはアニマルズのヴァージョンはオリジナルのデモの歌詞をかなり変更したり、カットされていたことに大きなショックを受けたとのちに語っています。

 それでは、バリー・マンのオリジナル・デモを聴いてみましょう。

 

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歌詞の最も大きい違いは、老いた父親が出てくる場面ですが、アニマルズはこう歌っています。

 

Watch my daddy in bed a-dyin'
Watched his hair been turnin' grey
He's been workin' and slavin' his life away
Oh, yes I know it

 

”髪が白くなるのをじっと見ながら
父さんがベッドで死にかけているのを見ている
奴隷のように働いて人生をすり減らしてるのさ
一生懸命働いているのはわかっているよ”

 

 オリジナルはこうなんですね。

Wtached my daddy live and die here
Just a broken beaten man
He said "Son just get out if you can
Don't end up like your old man

 

”オレの父さんがここで生きて死ぬのを見た
心破れ、打ちのめされた、ただの男
彼は言ってた”息子よ、できることなら、ここを出てゆけ
おまえの父さんみたいになっちゃダメだ”

 

 オリジナルは作家的な目線で歌に物語が組み込まれていたんですね。それをアニマルズは、主人公の目線にフォーカスした、よりストレートなものに変えたんですね。

 シンシアにしてみれば、自分の意図を台無しにされたと感じてもおかしくはありません。

 ただし、作詞の技巧的にはオリジナルのほうが優れていたようにも思いますが、聴き手に直接訴えかける力は、アニマルズの方があったのかもしれません。特に、エリック・バードンのようなシンガーの場合、ストーリーを語るより、心の叫びをダイレクトに歌った方がより映えるように思えます。

 

 それにしても、僕が思うにバリー・マン&シンシア・ワイルの素晴らしさは、バリー・マンという人の作風は、同時代の職業作家たち(バカラックニール・セダカなど)と比べて、かなり”男らしい”と思うのですが、その作風をより際立たせるような歌詞を女性である、奥さんのシンシアが見事に書いていた、ということですね。

 厳密にいうと、男らしさを際立たせながらも、女性ならではの感性で全体を柔らかくコーティングしているような感じがします。そのあたりのバランスの絶妙さが、彼らが数々の名曲を生み出した秘訣のようにも思うのですが。

 

 バリー・マンは後年、この曲を再びレコーディングしていますのでそちらもご紹介します。

 1999年のアルバム「ソウル&インスピレーション」から。ブライアン・アダムスとデュエットしています。

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