まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました(苦笑)。古今東西のポップ・ソングをエピソード、歌詞の和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。みなさんの音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればうれしいです。みなさんからの情報や思い出話などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「フィールズ・オブ・ゴールド(Fields of Gold)」スティング(1993)

 おはようございます。

 今日はスティングの「フィールズ・オブ・ゴールド」を。

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You'll remember me when the west wind moves
Upon the fields of barley
You'll forget the sun in his jealous sky
As we walk in fields of gold


So she took her love for to gaze awhile
Upon the fields of barley
In his arms she fell as her hair came down
Among the fields of gold


Will you stay with me? Will you be my love?
Among the fields of barley
We'll forget the sun in his jealous sky
As we lie in fields of gold


See the west wind move like a lover so
Upon the fields of barley
Feel her body rise when you kiss her mouth
Among the fields of gold


I never made promises lightly
And there have been some that I've broken
But I swear in the days still left
We'll walk in fields of gold
We'll walk in fields of gold

 

Many years have passed since those summer days
Among the fields of barley
See the children run as the sun goes down
Among the fields of gold


You'll remember me when the west wind moves
Upon the fields of barley
You can tell the sun in his jealous sky
When we walked in fields of gold
When we walked in fields of gold
When we walked in fields of gold

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君は僕を思い出すだろう
あの大麦畑の上を西風が渡る時
君は忘れるだろう 
嫉妬に染まる空に浮かぶ太陽のことも
黄金の草原を歩きながら


あの大麦畑をしばらく眺めたくて

彼女は恋人を連れ出した
髪を下ろしながら 彼の腕の中に身を委ねた
あの金色に輝く草原の中で


一緒にいてくれるかい?
僕の恋人になってくれるかい?
あの大麦畑に囲まれて
二人は嫉妬に染まる空に浮かぶ太陽を忘れるだろう
黄金の草原に横たわりながら


あの大麦畑の上を
西風が恋人がそうするように動くのを見て
君が口づけすると
彼女の体が浮き上がるのを感じる
あの金色に輝くの草原の中で


けっして軽い気持ちで約束してはいない
破ってしまったものもあるけれど
だけど、僕はまだ残された日々に賭けて誓うよ
黄金の草原を歩こう
黄金の草原を歩こう


大麦畑の中で過ごした
あの夏の日々から長い年月が過ぎた
日が暮れていく中を子供たちが走るのを見る
あの金色に輝く草原の中を


君は僕を思い出すだろう
あの大麦畑の上を西風が渡る時
君は話すがいい
嫉妬に染まる空に浮かぶ太陽に向かって
黄金の草原を二人歩いたときのことを
黄金の草原を二人歩いたときのことを

       (拙訳)

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イングランドでは、私たちの家は大麦畑に囲まれていて、夏になると、風が金色の海の波のように、きらめく表面を移動してゆくのを見るのは魅力的なんだ。まるで風が大麦畑と愛し合っているような、なにか本質的にセクシーで原始的な光景だ。恋人たちはここで約束を交わし、その絆は心地よい季節のサイクルによって強められたに違いないと僕は思うんだ」

               (「Lyrics by Sting」)

 

 スティングはイングランド南西部のウィルトシャーにある16世紀に建てられたマナー・ハウス(荘園領主が建設した邸宅)を購入し、そこからの眺めにインスパイアされてこの「フィールズ・オブ・ゴールド」を書いたと言われています。

 

 この歌詞には、古典的な”詩”のような品格があるように僕は感じたのですが、古き良きイングランドを象徴するような大麦畑の景色だけじゃなく、それを眺めている彼がいる家もまた古き良きイングランドのものであり、そういうシチュエーションの中で、彼は16世紀頃の詩人になったかのような思いで、この曲を書いたのかもしれませんね。

 

 時間を超え、一個人の心の”狭い枠”も超えてゆくような、大きな視点を感じるところがこの曲の魅力だと思います。

 (最近は個人の内面を隅々まで突き詰めたような歌詞の曲が多すぎる気がして、久しぶりにこの曲を聴いてみたら、少し救われる気持ちになりました)

 

 あのポール・マッカートニーをして”自分が書いていたらよかったと思った”といわしめた曲(それ以前にポールにそう思わせた曲は、ビリー・ジョエルの「素顔のままで」だそうです)で、今ではスティングの代表曲のひとつですが、発売当初は全英16位、全米23位という、”まあまあの”ヒットでした。

 

 この曲が”クラシック”となるのに大きく貢献したカバーがあります。

 アメリカ、ワシントン出身のシンガー、ギタリストのエヴァ・キャシディが歌ったものです。 

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 彼女はワシントン・エリアでのみ知名度のあるアーティストでしたが、1996年に皮膚ガンのためにまだ33歳の若さで亡くなっています。

 彼女の死後、急速に再評価の動きが進み、1998年にBBCラジオ2で「フィールズ・オブ・ゴールド」と「虹の彼方に」が紹介され話題になり、ビデオで撮った「虹の彼方に」の映像が「トップ・オブ・ザ・ポップス2」で放映されると、彼女の人気は一気に上がり、コンピレーション・アルバム「ソングバード」は全英1位までのぼりつめます。彼女が亡くなってから3年後のことでした。

 その「ソングバード」の1曲めに入っていたのがこの「フィールズ・オブ・ゴールド」でした。

 その後、彼女のヴァージョンは、スティングのオリジナルと並ぶ、この曲の”原型”になったようで、マイケル・ボルトンが彼女の歌に合わせて擬似デュエット版を作ったり、2017年に全英29位になったケイティ・メルアのカバーは、完全にエヴァ・キャシディのヴァージョンを基にしたものでした。

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 スティング本人もエヴァ・キャシディについて「これほど純粋な声はほとんど聴いたことがない」と言っていたようです。またある海外の方のブログでは(出典が明らかではないので真偽はわかりませんが)、スティングがデヴィッド・フォスターに彼女の「ソングバード」のCDを手渡して「もし君が僕の曲の最高のバージョンを聴きたければ、この女の子の「フィールズ・オブ・ゴールド」を聴くといい、君の人生が変わるよ」と言った、とも書かれています。

 

 最後はそのエヴァ・キャシディのライヴ・ヴァージョンを。彼女が亡くなった1996年に行われたライヴを収めた「Live at Blues Alley」。新たにリマスターされた25周年版が昨年リリースされましたが、そこに収録されているものです。声がこれほど純粋だと、心のこんな深いところまですうっと染み込んでゆくのか、、と思ってしまいます。

 

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