まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「New World Coming」キャス・エリオット(ママ・キャス)(1970)

 おはようございます。

 今日はママス&パパスの”ママ・キャス”ことキャス・エリオットの「New World Coming」。バリー・マンとシンシア・ワイルの作品です。


New World Coming

  

  "新しい世界が来るわ    もうすぐそこまで 

 新しい世界が来るわ 今の世界は終わるの 

 新しい声が呼んでいる 耳をすませば聞こえるわ

 それは日増しに 強くなっている

 

 真っ新な朝が来たわ 澄んでいてやさしくて自由な

 新しい夜明けなの あなたにも私にとっても

 そう、新しい世界が来るの  私たちが胸に描いたような

 平和とともに 喜びとともに 愛とともに ”   (拙訳)

 

 

 昨日このブログでピックアップしたママス&パパスは男女2人ずつのグループでしたが、メンバー間の恋愛関係のもつれがきっかけになって崩壊してしまいます。

 そして、メンバーの中でぽちゃりした容姿とキャラで人気のあったキャス・エリオットがソロ・デビューすることになります。ママス&パパスは当初男性メンバーはパパ〜(例えばジョン・フィリップスはパパ・ジョン)、女性メンバーはママ〜と愛称をつけていましたが定着したのはキャスだけで、彼女はママ・キャスと呼ばれていたので、ソロ・デビューした時もそうクレジットされました。

 

 そして、彼女はバリー・マン&シンシア・ワイル作の”ポジティヴ三部作”とも呼ぶべき(僕しか言っていませんが、)シングルを発表します。その三作目がこの「New World Coming」です。

 

   一昨日紹介した「Just A Little Lovin'」はバリー・マンバカラックの影響で書いたものですが、「New World Coming」には少しキャロル・キングっぽさを僕は感じます。

 せかっくなのでポジティヴ3部作、他の2曲も紹介しましょう。

 一作目は「It's Getting Better」という曲です。(全米最高35位)


Cass Elliot - It's Getting Better (HQ)

  ”かつて私は愛は 

   ロケット(みたいな勢いで)、 鐘(が鳴るようにはっきりと)

   詩のように(ロマンティックに)訪れると思っていたけど

   私とあなたの場合は 静かにゆっくりと始まったわね

   これは別に信じなくてもいいけど

   私たちが得たものは 何かすごく素敵でいいものなの

     そして、どんどん良くなってゆく 強くなってゆく

   あたたかく愉快なものになってゆく

      毎日良くなってゆく 日毎良くなってゆく”       (拙訳)

    

 

    そして二作目は「Make Your Own Kind Of Music」(全米36位)


Make Your Own Kind Of Music

    "誰も教えてはくれない

  あなたが歌うべき歌はたったひとつだと

     あの人たちはあなたに歌を売りつけようとするかもね

     あなたのような人は彼らには面倒だから

 

 でも、あなたは自分だけの音楽を作って

 あなただけの特別な歌を歌って

 あなただけの音楽を作って

 たとえ、他の誰も一緒に歌ってくれなくても

 

 どこにもたどりつけないかもしれない

    これ以上ないくらい孤独で

 道は険しいかもしれない

 自分のやるべきことをやることは一番大変なの

 

    でも、あなたは自分だけの音楽を作って

 あなただけの特別な歌を歌って

 あなただけの音楽を作って

 たとえ、他の誰も一緒に歌ってくれなくても

  

    だからもしあなたが私の手を取ることができず

 行ってしまわなければいけなくても 私は理解するわ” (拙訳)

 

 バリー・マンとシンシア・ワイルのアンソロジーCDのライナーで、”この3曲ほど元気になれる楽観的な曲はなかなか思いつかない”と書かれているほどの”特殊なレパートリー”を立て続けにシングル・リリースしていたことは、ちょっと不思議に思えます。

 

 ぽっちゃりした外見と親しみやすいキャラクターが、ポジティヴな曲と良く似合っていたことは確かだと思います。

 しかし、明るくポジティヴな歌を歌う人に限って本人はハッピーではない、ということの方が多いのが音楽の世界ですが、彼女も例外ではなかったようです。

 ネットで彼女のプロフィールを調べると、昔から自分の外見に強いコンプレックスを持っていたとか、デニー・ドハーティが好きで彼を追いかけてママス&パパスに加わったがデニーはミッシェル・フィリップスと不倫関係になって失恋に終わってしまったとか、ドラッグにはまっていたとか、、そんな記述が見つかります。

 

 ただ、当然のことですが、歌と歌っている人の私生活は全く別のものです。

 

 「It's Getting Better」物事は少しずつ良くなっているから

 「Make Your Own Kind Of Music」周りにまどわされずに自分のやるべきことをやれば

 「New World Coming」 きっと新しい世界が来る

 

 少しこじつけっぽいかもしれませんが、そんな風に僕には聴こえてきました。

 確かにあまりに楽観的な曲かもしれません。しかし、これは僕の持論なのですが、人は自発的に悲観的にはいくらでもなれますが、楽観的にはなかなかなれないものです。

何か誘引してくれるものが必要で、それは特に音楽が有効です。楽観的であっても、希望の歌はいつも流れていてほしいと思います。

 

 

 キャス・エリオットは1974年にロンドンのホテルで心臓発作で亡くなります。まだ32歳だったそうです。ロンドンでコンサートが大盛況で本人も喜んでいた矢先のことでした。

 彼女の最後の作品になったアルバムのタイトルは「Don't Call Me Mama Anymore」、

”もうママって呼ばないで”というものでした。

 そのアルバムの中には「I'm Coming to the Best Part of My Life」”私の人生の最高の時がやってきている”という曲が入っています。

    "歌を歌いたい  コントロールを外して自分の魂の中にある音楽に向かいたい

 悲しい歌じゃなく 新しい歌を”

 そんな内容です。歌詞を書いたのがカーペンターズの「イエスタデイ・ワンス・モア」のジョン・ベティス。作曲は「愛のプレリュード(We've Only Just Begun)」のロジャー・ニコルスです。

 


Mama Cass Elliot - I'm Coming To The Best Part of my life

 

Mama's Big Ones-Best of

Mama's Big Ones-Best of

  • アーティスト:Mama Cass
  • 発売日: 1990/10/25
  • メディア: CD
 

  

Don't Call Me Mama Anymore

Don't Call Me Mama Anymore

  • 発売日: 2000/11/14
  • メディア: CD