まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。(現在は不定期で更新中)古今東西のポップ・ソングを、エピソード、和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などを交えて紹介しています。親しみやすいポップスは今の時代では”ニッチ(NIche)”な存在になってしまったのかもしれませんが、このブログがみなさんの音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればうれしいです。追加情報や曲にまつわる思い出などありましたらどんどんコメントしてください!text by 堀克巳(VOZ Record

「コール・ミー・アル (You Can Call Me Al)」ポール・サイモン(Paul Simon)(1986)

 おはようございます。今日はポール・サイモンの「コール・ミー・アル (You Can Call Me Al)」です。

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A man walks down the street, he says, 
"Why am I soft in the middle now?
Why am I soft in the middle? 
The rest of my life is so hard
I need a photo-opportunity,
 I want a shot at redemption
Don't wanna end up a cartoon in a cartoon graveyard"

Bone digger, bone digger
Dogs in the moonlight
Far away in my well-lit door
Mr. Beer Belly, Beer Belly
Get these mutts away from me, you know
I don't find this stuff amusing anymore

Uh, if you would be my bodyguard, 
I can be your long-lost pal
I can call you Betty
And Betty, when you call me, 
you can call me Al

A man walks down the street, 
he says, "Why am I short of attention?
Got a short little span of attention and, 
woah, my nights are so long
Where's my wife and family? What if I die here?
Who'll be my role model 
now that my role model is gone, gone?"

He ducked back down the alley with some, uh
Roly-poly little bat-faced girl
All along, along, t
here were incidents and accidents
There were hints and allegations

Uh, if you would be my bodyguard, 
I can be your long-lost pal
I can call you Betty
And Betty, when you call me, you can call me Al
You can call me Al

A man walks down the street
It's a street in a strange world
Maybe it's the third world
Maybe it's his first time around
Doesn't speak the language
He holds no currency
He is a foreign man
He is surrounded by the sound, the sound 

Of cattle in the marketplace
Scatterlings and orphanages
He looks around, around
He sees angels in the architecture
Spinning in infinity,

he says, "Amen," and, "Hallelujah"

If you'd be my bodyguard, I can be your long-lost pal
I can call you Betty
And Betty, when you call me, you can call me Al
You can call me

Na, na, na-na, na, na, na-na

If you'll be my bodyguard (Ooh)
I can call you Betty (Ooh)
If you'll be my bodyguard
I can call you Betty
If you'll be my bodyguard

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ひとりの男が通りを歩いている。彼は言う
「なんで俺はヤワな中年になったんだ?
なんでお腹がブヨブヨになってるんだ
残りの人生は超ハードだっていうのに
注目されるチャンスが必要さ
名誉挽回のチャンスが欲しい
アニメの墓場に出てくるような
キャラで終わりたくなんかないんだ

骨を掘る、骨を掘る
月明かりの下で吠える犬たち
明るく照らされた俺の家から離れた場所で
ミスター・ビール腹、ビール腹
この野良犬を追払ってくれよ
こんな状況もはや笑えないんだ

もし君が俺のボディガードになってくれるなら
俺は君の長いこと会ってなかった友だちになれる
俺は君を“ベティ”って呼ぶよ,それでベティ、
君が俺を呼ぶときは“アル”って呼んでくれていいんだ

ひとりの男が通りを歩いてる。彼は言う
「なんで俺は注意力が続かないんだ?
ちょっとしか集中できないし
うわぁ、夜がやけに長い
妻と子どもはどこにいる?ここで死んだらどうなる?
誰が俺の手本になる?
だって俺の手本だった人はもういないんだから、ね?」

彼は裏路地に引っ込んだ、まあその、
まるまる太ったコウモリみたいな顔の女の子と
ずっと、ずっと
事件や事故があった
手掛かりや申し立てがあった

もし君が俺のボディガードになってくれるなら
俺は君の長いこと会ってなかった友だちになれる
俺は君を“ベティ”って呼ぶよ,それでベティ、
君が俺を呼ぶときは“アル”って呼んでくれていいんだ

ひとりの男が通りを歩いている
ここは見知らぬ世界の通り
もしかして第三世界
もしかして彼には今回が初めて
言葉も話せず
お金も持っていない
彼は外国人
響き渡る音、音に取り囲まれている

市場の牛たちの中で、
あちこちに散らばる人々と孤児たち
彼が見回すと
建物の中に天使が見える
永遠に回り続けて

彼は言う「アーメン」そして「ハレルヤ」

もし君が俺のボディガードになってくれるなら
俺は君の長いこと会ってなかった友だちになれる
俺は君を“ベティ”って呼ぶよ,それでベティ、
君が俺を呼ぶときは“アル”って呼んでくれていいんだ

ナ、ナ、ナーナ、ナ、ナ、ナーナ…

もし君が俺のボディガードなってくれたら
俺は君をベティって呼ぶ
君が俺のボディガードなら
俺は君をベティって呼ぶ
君が俺のボディガードなら   (拙訳)

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ポール・サイモンの「コール・ミー・アル (You Can Call Me Al)」ヤマハぷりんと楽譜はこちら

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 このMVに出てくる、小柄なポール・サイモンと対照的な大男はチェビー・チェイスという1970年代半ばにアメリカのTVショー「サタデー・ナイト・ライヴ」の初代メンバーとして大ブレイクしたコメディアンです。二人は「サタデー・ナイト・ライヴ」がきっかけで親友になったようです。

 さて、この頃のポール・サイモンはと言いますと、前回このブログで取り上げた「追憶の夜」が使われた映画「ワン・トリック・ポニー」で脚本、主演を務めだのですが、映画もサントラも商業的に失敗で終わってしまうんですね。

 しかし、サイモン&ガーファンクルのリユニオン・コンサートをセントラル・パークで行うと、なんと53万人ものお客さんが集ったそうです。それで、なるほど、世間が求めているのはこれか!と彼は思ったのか、この後サイモン&ガーファンクルのニューアルバム制作に入るんです。しかし、案の定(?)二人は途中で仲違いしてしまい、ポール・サイモンは作りかけていたアルバムを自分のソロ作品に変えて、「ハーツ・アンド・ボーンズ」というアルバムにして1983年にリリースします。しかし、これが「ワン・トリック・ポニー」以上にセールス的に失敗してしまいました。

 プライベートでは長年交際していた、「スター・ウォーズ」のレイア姫で知られる女優のキャリー・フィッシャーと1983年に結婚し、翌1984年に離婚しているんですね。公私共に絶不調だったわけですね、この頃の彼は。キャリーは感情のアップダウンが非常に激しい人だったらしく、のちにサイモンは結婚生活に「疲弊していた」と語っています。そんな中で彼はとうとううつ状態になってしまったようです。しかし、そんな彼を救ったのが音楽でした。しかも、それまで馴染みのなかった国の音楽でした。

 「1984年の夏、友人が南アフリカのソウェトのストリートミュージック『タウンシップ・ジャイブ』のテープをくれたんだ。それは、僕がずっと愛してきた1950年代のリズム・アンド・ブルースを思い出させるような、楽しいインストゥルメンタル音楽だった。夏の終わりには、その曲に合わせてメロディーをスキャットで歌っていた。そのグループが誰であれ、一緒にレコーディングしたら面白そうだと思ったんだ。それで、彼らがどんな人で、どこから来たのかを探し始めたんだ。」 The New York Times 

「タウンシップ・ジャイブ」というのはこんな感じの音楽です。

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 疲れ切って落ち込んでいたポール・サイモンには、この軽快で陽気な音楽が「救い」になったんでしょうね。

 そして重要なのが”僕がずっと愛してきた1950年代のリズム・アンド・ブルースを思い出させるような”というところ

 未知の新しい音楽への好奇心が生まれたのと同時に自分の音楽の原点の再確認という意識も生まれたわけです。この2つのベクトルが一つになったことが、次作「グレイスランド」というアルバムの出発点になっているのだと僕はにらんでいます。

 ちょっと話がポール・サイモンから外れてしまいますが、この話は絶不調、スランプから抜け出すためにすごく参考になるように僕は思います。

 よく、メンタルがスランプの時には新しい興味、好奇心を持つといいとよく言いますが、なかなか難しいものですよね。そこで、自分が子供の頃に夢中になった<原点>を思い出して、その時の気持ちとリンクしそうなものを今の世の中であらためて探してみるといいのかもしれません。

 さて、話を戻しますが、彼はエンジニアを伴ってヨハネスブルグで2週間を過ごし、南アフリカのミュージシャンたちとレコーディングを行います。そして、アメリカではリンダ・ロンシュタットエヴァリー・ブラザーズ、ロッキン・ドプシー&ザ・ツイスターズ、ロス・ロボスといったアメリカのミュージシャンたちとのレコーディングが行い、1986年にアルバム「グレイスランド」が完成しました。

「グレイスランド」はエルヴィス・プレスリーの邸宅だった建物を含む敷地のことです。

 前回のブログで書きましたが、ポール・サイモンエルヴィス・プレスリーに強く憧れながら、自分にはプレスリーのようになれない、という現実を出発点に音楽を始めた人です。プレスリーは原点なんですね。

 南アフリカの音楽に大きくインスパイアされたアルバムなのに、プレスリーを連想させるタイトルをつけていることは一見不思議ですが、南アフリカの音楽が自分のルーツであるアメリカのR&Bを思い出させたという、彼の発言を思い出せば深く納得できると思います。

 また、この頃は南アフリカ人種隔離政策(アパルトヘイトに反対したアーティストたち(ボブ・ディランスプリングスティーン、ボノなど)が抗議運動を起こし、「サン・シティ」という曲をリリースし注目されていたタイミングでした。南アフリカを文化的にもボイコットしようという動きが盛んだったので、ポール・サイモンのスタンスは強く非難されたこともあったようです。

 しかし、彼のスタンスは純粋に音楽的なモチベーションから生まれたもの、しかもミュージシャン生命に関わるような不調期から脱するために必要なものだったんですね。

 

 さて、その「グレイスランド」からのシングルになったがこの「コール・ミー・アル」です。ポールが自分のことは「アル」と呼んでいいよ、と歌うのは奇妙に思えますが、これには訳があります。

 彼が昔、キャリー・フィッシャーの前の奥さんであるペギー・ハーパーと主催したパーティーに来ていたフランスの作曲家兼指揮者のピエール・ブーレーズが、帰り際にポールに向かって「帰らなくてはいけなくて残念だよ、アル。ベティによろしく。」と言ったそうなんです。ポールだけじゃなく、奥さんの名前までセットで間違えたんですね。以来、ポールとペギーはお互いを冗談でアルとベティと呼び合ったのだそうです。

 それにしても、前の前の奥さんとの思い出を歌のきっかけにする、というのはなかなかその心情を察するのは難しい感じがしますよね。。

  歌詞は”中年の危機”がテーマですね。”soft in the middle”というフレーズは、中年期でソフト(軟弱)、というニュアンスと、お腹の真ん中がソフト(ダブダブ)という二つの解釈ができるそうでう。

 とにかく、ポール・サイモン本人のシリアスな”中年の危機”をこうやって軽快に歌にできたということですから、よかったですね。

 レコーディングはニューヨークで行われましたが、南アフリカからギターのレイ・フィリなど何人かのミュージシャンを招聘しています。結果、南アフリカの音楽のテイストがアメリカ産のポップスにうまく溶け込んだ仕上がりになっているように思います。

 「グレイスランド」は大ヒットし、グラミー賞も獲得して、今では彼の最高傑作と評価されるに至っています。音楽の世界でも、かなり厳しい逆境の後に大成功するというパターンは本当に多いですね。

 

 最後にもう1曲。この曲のイントロを聴くとほとんどの日本人はこっちの曲を思い出すでしょうね。ちなみに、間奏では「追憶の夜」のリフも入っていて、さながらポール・サイモン・トリビュートのようなアレンジ。そして、歌詞が素晴らしい。

 小沢健二の「ぼくらが旅に出る理由」です。

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LIFE - 小沢健二

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