まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「バッド・デイ〜ついてない日の応援歌(Bad Day)」ダニエル・パウター(2005)

 おはようございます。

 今日はダニエル・パウターの「バッド・デイ」です。

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Where is the moment we needed the most?
You kick up the leaves and the magic is lost
They tell me your blue skies fade to gray
They tell me your passion's gone away
And I don't need no carryin' on


You stand in the line just to hit a new low
You're faking a smile with the coffee to go
You tell me your life's been way off line
You're falling to pieces every time
And I don't need no carryin' on


Because you had a bad day
You're taking one down
You sing a sad song just to turn it around
You say you don't know
You tell me, don't lie
You work at a smile and you go for a ride
You had a bad day
The camera don't lie
You're coming back down and you really don't mind
You had a bad day
You had a bad day


Will you need a blue sky holiday?
The point is they laugh at what you say
And I don't need no carryin' on


You had a bad day
You're taking one down
You sing a sad song just to turn it around
You say you don't know
You tell me, don't lie
You work at a smile and you go for a ride
You had a bad day
The camera don't lie
You're coming back down and you really don't mind
You had a bad day
(Ooh, a holiday)


Sometimes the system goes on the blink
And the whole thing turns out wrong
You might not make it back and you know
That you could be well, oh, that strong
And I'm not wrong
(Yeah, yeah, yeah)


So where is the passion when you need it the most?
Oh, you and I
You kick up the leaves and the magic is lost


'Cause you had a bad day
You're taking one down
You sing a sad song just to turn it around
You say you don't know
You tell me don't lie
You work at a smile and you go for a ride
You had a bad day
You've seen what you're like
And how does it feel?
One more time
You had a bad day
You had a bad day


Ah, yeah, yeah, yeah
Had a bad day (Ah)
Had a bad day (ah, yeah, yeah, yeah)
Had a bad day (Ah)

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一番必要だった瞬間はどこ?
君が葉っぱを蹴り上げると、魔法は消えるんだ
君の青空は灰色に曇ったと人は言う
君の情熱は消えたとみんな言う
そして、もう頑張る必要はないのさ


君はただもっと状況を悪くするために列に並んでる
テイクアウトのコーヒーを手に笑顔を装う
君は人生がうまくいってないと僕に言う
君はいつもうちのめされてばかり
そして、僕はもう頑張る必要はないのさ


だって、今日はついてなかったのさ
君は落ち込んでいるね
それを変えようとして 君は悲しい歌を歌う
君はわからないって言う
嘘をつかないでと僕に言う
笑顔で仕事をして、ドライブに出かける
ついてない日だったんだ
カメラは嘘をつかない
戻って来れば  気にもしないさ
ついてない日だったのさ
ついてない日だったのさ


青空の休日が必要かい?
要は、君の言うことをみんなが笑うってこと
もう頑張る必要はないのさ

今日はついてなかったのさ
君は落ち込んでいるね
それを変えようとして 君は悲しい歌を歌う
君はわからないって言う
嘘をつかないでと僕に言う
笑顔で仕事をして、ドライブに出かける
ついてない日だったんだ
カメラは嘘をつかない
戻って来れば  気にもしないさ
ついてない日だったのさ
ついてない日だったのさ

 

時にはシステムが故障して
全てが悪い方に転がることがある
元に戻せないかもしれないけど
うまく行くこともあるさ、強くなれるさ
僕は間違っちゃいない


一番必要な時にその情熱はどこにあるの?
君も僕も
君は葉を蹴り上げると、魔法は消えるんだ


だって、今日はついてなかったのさ
君は落ち込んでいるね
それを変えようとして 君は悲しい歌を歌う
君はわからないって言う
嘘をつかないでと僕に言う
笑顔で仕事をして、ドライブに出かける
ついてない日だったんだ
カメラは嘘をつかない
戻って来れば  気にもしないさ
ついてない日だったのさ
ついてない日だったのさ

            (拙訳)

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   俗に言う”一発屋”には「恋のマカレナ」や「スキャットマン」のような意表を突いたインパクトの大きいものもあれば、この曲のように、実にオーソドックスなものもありますよね。

 

 ダニエル・パウターのキャリアをあらためて調べてみてまず驚くのは、デビュー曲でもあるこの「バッド・デイ」をリリースした時に彼はすでに34歳だったということです。そして、初めて曲を書いたのが27歳の時だという話もあって、たとえ一発屋(ワン・ヒット・ワンダー)と呼ばれても、これだけ遅咲きで世界的な成功を得ることができるということを証明していますね(スキャットマン ・ジョンは50歳過ぎ、「マカレナ」のロス・デル・リオの二人は40歳半ばでの大ブレイクでした)。

 

 彼はカナダのブリティッシュ・コロンビア州のオカナガン・バレーで生まれ育ち、4歳からバイオリンを習い、10代の頃にはピアノに転向し、高校では演奏活動を始めていました。大学で音楽を専攻したそうですが、失読症のため楽譜も読めず、それが原因となり中退したそうです。

  その後、彼はバンドのキーボーディストとして活動を続けますが、転機は1997年にジェフ・ドーソンというプロデューサーとの出会ったことでした。ジェフのアパートに作られた小さなスタジオで、彼はジェフからアイディアをもらいながら曲作りに没頭し始めたのです。

 

 2000年に「I'm Your Betty」というアルバムをインディーズからリリースしています。

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 このアルバムを聴いて驚くのは、アレンジのピアノの比重がすごく低いんですね。シンガーソングライターらしい作品ですが、”ピアノマン”ではなかったんですね。男性のピアノの弾き語りスタイルは売るのが難しいと思ったのかもしれません。

 

 この「バッド・デイ」は、彼の頭の中で2週間もの間鳴り続けたメロディーから生まれたと彼は語っています。そのメロディを口笛で吹きながら家に帰り、ピアノに向かうとコード進行が決まり1時間ほどで出来上がったそうです。

 そして、歌詞はビクトリアからバンクーバーに戻るフェリーの中で書いたと彼は語っています。

「歌詞を探していた。もしアップテンポでポップな感じにしていたら、史上最もつまらない曲になったかもしれない。だから僕は、ネガティヴなものを含んだ曲にしようと決めたんだ。ある種の対立があるような。メロディはまっすぐですごくアップな感じで、歌詞はちょっとからかうようなものにしようと。レコード全体がそんな感じなんだ。より暗い要素とメロディーのコンビネーションなんだ」

 (MTV NEWS 04/19/2006

「僕は自分が真っ先にやってしまうありふれたこと、他の人たちはもっとひどい目に遭っているのに、自分たちには乗り越えられないように思える日々の煩わしさを嘆くことについて歌いたかったんだ」

Le Parisien February 10, 2015

  誰もが共感できる”愚痴”をポップなメロディとうまく共生させることができたことが成功の要因だったのかもしれません。

 ちなみにこの曲を作ったのは、アルバムの制作の終わりかけたころで、最初彼はこの曲をアルバムに入れるべきかどうかよく判断できなかったようです。

 

 この曲は2004年のクリスマスにフランスのコカコーラのCMに使われ、2005年に入りシングルがリリースされるとフランスのラジオでこの曲を聴かない日がないと言われるほどオンエアされ大ヒットしたそうです。そして、CMはヨーロッパの他の国でも流れたこともあって、イギリスで2位になった他、各国でチャートの上位に入りました。

 アメリカで火がついたのは2006年、人気オーディション番組「アメリカン・アイドル」の第5シーズンで、オーディションの敗退者が決まったときにこの曲が使われたことがきっかけだったようです。見事全米1位になっています。

 

 彼のように下積みの長い人は、突然の大成功にも浮ついたりしないようで、最初のプロモーション・ツアーの際も、必ず訪れた土地で小さな会場でいいからライヴをやって直接お客さんと交流させてほしいという条件を出したそうです。

「バッド・デイ」の第ブレイクから16年、彼は50歳になったそうですが、コンスタントに活動を続けています。最新作は今年2月にリリースされた「Save Your Life」。なんと、平原綾香とのデュエットです。

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