まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ユア・ビューティフル(You're Beautiful)」ジェームス・ブラント(2005)

 おはようございます。

 今日はジェームス・ブラントの「ユア・ビューティフル」です。

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My life is brilliant


My life is brilliant, my love is pure
I saw an angel, of that I'm sure
She smiled at me on the subway
She was with another man
But I won't lose no sleep on that
'Cause I've got a plan


You're beautiful, you're beautiful
You're beautiful, it's true
I saw your face, in a crowded place
And I don't know what to do
'Cause I'll never be with you


Yeah, she caught my eye, as I walked on by
She could see from my face that I was, fucking high
And I don't think that I'll see her again
But we shared a moment that will last 'til the end


You're beautiful, you're beautiful
You're beautiful, it's true
I saw your face, in a crowded place
And I don't know what to do
'Cause I'll never be with you

 

You're beautiful, you're beautiful
You're beautiful, it's true
There must be an angel, with a smile on her face
When she thought up that I should be with you
But it's time to face the truth
I will never be with you

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僕の人生は輝いている


僕の人生は素晴らしい、僕の愛はピュアだ
天使を見たんだ 間違いなく
彼女は地下鉄で僕に微笑みかけた
彼女は他の男と一緒だった
だけどそんなことは気にしないよ
だって僕には考えがあるから


君は美しい、君は美しい
君は美しい 本当さ 
人混みの中で君の顔を見た
どうしたらいいかわからないんだ
だって君とは決して一緒になれないのだから


そう、彼女は僕の視線をとらえたのさ、
歩き過ぎようとした時に
彼女は僕の表情から 
僕がバカみたいにハイになっていることがわかっただろう
もう二度と彼女に会うことはないだろう
だけど、僕たちは最後まで残る瞬間を分かち合った


君は美しい、君は美しい
君は美しい 本当さ 
人混みの中で君の顔を見た
どうしたらいいかわからないんだ
だって君とは決して一緒になれないのだから

 

君は美しい、君は美しい
君は美しい 本当さ 
天使がいるに違いない、笑顔を浮かべて
彼女は僕が君と一緒になるべきだと思ったなら、、
しかし、真実をちゃんと見なければ
僕が君と一緒になることはないんだ

                                                                                  (拙訳)

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「ある日、ロンドンの地下鉄に乗っていたら、元カノが新しいボーイフレンドと一緒にいるのを見かけたんだ。僕たちは目が合ったんだけど、お互い通り過ぎてしまった。僕は家に帰ると「ユア・ビューティフル」の歌詞を2分で書き上げた。その後、ロサンゼルスのソングライター仲間であるサシャ・スカーベックに会いに行き、共同作曲者としてアマンダ・ゴーストを加えて、曲を完成させたんだ。この曲はいつもロマンチックだと表現されているけど、実はちょっと不気味なんだ。ハイになった男(僕)が、地下鉄で他人のガールフレンドをストーキングするという内容だから。だけど、"もし自分が何か言っていたら "と思ってしまう瞬間は誰にでもあることなんだ」

            (The Gurdian  14 January 2020)

 

 確かにストーカーっぽい内容ですよね。でも、相思相愛のパートナーやただの片思いの相手に”君は美しい”というより、こういうストーカーっぽい状況の方が、今の時代では説得力があって切実なように思えてしまいます。

 

 男性シンガーソングライターのニューカマーとしてヒットの時期が重なったため、「バッドデイ」のダニエル・パウターと混同されることが少なくなかったジェームス・ブラントも、大ヒットした時にはすでに31歳で、ダニエル同様遅咲きでした。

 

 ただ、彼の場合は音楽シーンで下積みをしていたわけじゃなく、兵役についていたのだそうです。

 イギリスのウィルトシャー州で、代々軍人を輩出している家庭に生まれた彼は、少年時代にピアノ、バイオリン、ギターを習い、14歳の時にはポップ・シンガーになると公言していましたが、陸軍の奨学金を得て大学に入ったため、卒業後は兵役に就いていたそうです。最終的に大尉まで昇進したブラントは、NATOの平和維持軍としてコソボに派遣されたこともあったそうです。しかし、休暇中には作曲し、コソボに行った時はギターを持っていき、他の兵士や地元の人たちの前で歌ったりしたそうです。

 

  2002年に退役した彼は、すぐさま音楽活動を開始し、ステージ・ネームとして名字をBlountから同じ読みの”Blunt(鈍い、無愛想な)”に変更します。

 そして、エルトン・ジョンのマネージャーだったトッド・インターランドに認められマネージメント契約をします。トッドが気に入ったのはこの曲のデモだったそうです。

 

Goodbye My Lover  (全英9位)

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 そして、彼は毎年テキサスで行われている音楽フェス「サウス・バイ・サウスウエスト」でこの曲を演奏したところ、それを見ていたソングライターのリンダ・ペリーからレコード契約のオファーを受けました。

 彼女はクリスティーナ・アギレラP!nkに曲を書いていて、カスタード(Custard)という自分のレーベルを持っていました。

 リンダがアメリカの音楽プロデューサー、トム・ロスロックにプロデュースを依頼し、この「ユア・ビューティフル」が収録されたアルバム『バック・トゥ・ベッドラム』が制作されました。リンダもトムもLAを拠点にしていたため、LAのスタジオをメインに作られているんですね。

 ちなみに、レコーディングの時に彼は元カノの家族を通じて知り合った、「スターウォーズ」のレイア姫で有名なキャリー・フィッシャーの家に滞在していたそうです。

 

 さて、この「ユア・ビューティフル」はイギリス、アメリカだけじゃなく、カナダ、スウェーデンノルウェー、ベルギーなどでも1位になる大ヒットになります。

 その後もイギリスではトップ10ヒットを3曲出していますし、アルバムを出せば今もチャートの上位に入りますので”一発屋”にはあてはまらないのですが、この曲の印象がやはりものすごく強かったようで、その後の彼の活動に良くも悪くも大きく影響しているそうです。

 実はストーカーっぽい歌詞なのに、ロマンチックな歌として結婚式でもよく歌われていたそうで、英語圏の人たちもそんなにちゃんと歌詞はチェックしないんでしょうかね。

 彼の近年のMVでも「ユア・ビューティフル」の冬の海に飛び込むシーンをモチーフにしたものがあって、彼につきまとうこの曲のイメージがいかに大きいかが伺い知れます。

 

 冬の海から陸に上がるという設定の「Cold」(2019)

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 海に飛び込むシーンの逆回しから始まる「Should I Give All Up」(2020)

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 この曲は日本では10年くらい前に化粧品のCMに使われていましが、リミックス・ヴァージョンだったんですね。 日本のQ;indivi+ (キュー・インディヴィ・プラス) がリミックスし、16歳のシンガー、ケリー・プレイサー がコーラスをしています。最後はそのヴァージョンを。

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