まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「Giving Up 」ホイットニー(2019)

 おはようございます。

 今日はホイットニー(Whitney)の「Giving Up」を。


www.youtube.com

********************************************************************************

Waiting for the morning sun
Are you coming home, my love?
Tears are falling one by one
I can feel you giving up

Giving up Giving up
Up

Though we started losing touch
I've been hangin' on because
You're the only one I love
Even when you're giving up

Giving up Giving up Giving up
Up

 

Giving up Giving up Giving up Giving up
Up

 

********************************************************************************

朝日を待っている

君は帰ってくるの、マイ・ラヴ

涙がひとしずくひとしずく落ちてくる

君は僕らのことをあきらめてしまったと感じる

 

あきらめてしまった、あきらめてしまった

僕らが疎遠になりはじめたとしても

僕はあきらめていない だって

君は僕の愛するただ一人の人

たとえ、君が投げ出したとしても

 

投げ出しても 投げ出しても 投げ出しても

 

                      (拙訳) 

********************************************************************************

  アメリカに”昔のキリンジ”みたいなグループがいる、と知人から教えてもらったのが

このホイットニーでした。

 ホイットニーは、2015年に結成されたシカゴ出身のアメリカのバンドで、メンバーは

マックス・カケイセック(Gt)とジュリアン・アーリック(Vo/Dr)の二人。

 

 彼らはともに”スミス・ウエスタンズ”というバンドに参加したことで知り合い、バン

ドが活動停止したのちに、二人で音楽活動をスタートさせました。(ジュリアンはその 

とき、”スミス・ウエスタン”ではなく、”アンノウン・モータル・オーケストラ

(Unknown Mortal Orchestra)”というグループのメンバーでした)

 

 

 彼らがユニークなのは”ホイットニー”はバンド名ではなく、二人が創造した”架空の

ングライター”の名前だということです。

 ある晩、携帯電話をチェックして、非凡で性別を問わない名前を探して見つけだした

のが”ホイットニー”でした。(また、これは偶然だったそうですが、ジュリアンのファ

ースト・キッスの相手と同じ名前でした)。

 そして、架空の作家”ホイットニー”が残した”古典作品”のイメージで曲を書きは

じめたといいます。

 そして1年以上の期間を、曲作りと古くからの知り合いのミュージシャンたちを集めた

デモ作りに費やしたあと、ファースト・アルバム『Light Upon the Lake』を制作し、

2016年にリリースします。

 

  アルバムからのシングル「NO WOMAN」。当初は2人組じゃなく、サポートメンバー含めての7人組のバンドという形態だったようです。

www.youtube.com

 フォーク、カントリーのスタイルでありながら、そこにグルーヴィーな高揚感が加わ

っているのが彼らの特徴です。やはり、カーティス・メイフィールドなどのシカゴ・ソ

ウルを生んだ土地だからでしょうか。

 彼らのレトロでありながら新鮮で高揚感のあるフォーク・ロック・サウンドは世界中

から注目を集め、各地をツアーで回る日々を彼らは過ごします。

 そして、次のアルバムを作るにあたって、大きな選択肢があったそうです。

国の政治的な分断の中で、それを正面から取り上げるか、それとも温かいニュアンスの

ある音楽を提供するか。

 

 "これは意図的なものなんだ。僕たちは、われを忘れるようなものを作りたかった。

世界は完全に混乱しているように見えたし、僕たちは表立ってそれについて書くことも

できるし......あるいは、それから逃れて、いま起こっているひどいことをすべて忘れる

ような、ある種の慰めとなるようなものを作ることもできたんだ」

(THE PRESS DEMOCRAT October 16, 2019)

 

 しかし、サウンドはファーストのような楽観的で高揚感のあるものでありながら、歌

詞の世界はより内面的に、悲しみや恐怖といったものにアプローチしています。

そうして出来上がったセカンド・アルバム『Forever Turned Around』の1曲めでシング

ルにもなっていたのがこの「Giving Up」です。

 

 この「まいにちポップス」でとりあげている楽曲も、訳してみるとけっこう”悲し

い”歌詞だったという例は少なくありません。

 また、悲しい歌詞と高揚感のあるメロディやサウンドと不思議な調和がとれたときに

だけ現れるような、特別な味わいがあるのもまた確かです。

 

 また、彼らはカバーもやっていて、尊敬するアラン・トゥーサンの「サザン・ナイ

ト」もとりあげて、昨年2020年にリリースされたアルバム「Candid」はカバー・アルバ

ムでした。

 最後はそのアルバムから、みなさんよくご存知の「カントリー・ロード(Take Me

Home, Country Roads)」を。  シンガー・ソングライター、ケイティ・クラッチフィー

ルドのプロジェクト”Waxahatchee(ワクサハッチー)”をフィーチャーしています。

 

www.youtube.com

 

 

 

f:id:KatsumiHori:20210419150827j:plain