まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「Any Old Time Will Do」ロイ・ウッド(1975)

 おはようございます。

 永遠のスタンダードと呼ばれる曲は、やはりそれ相応の素晴らしさがありますが、知名度は低くてヒット曲でもないけど、たまにどうしても聴きたくなる曲があって、そういうのは音楽ファンの密かな喜びでもありますよね。

 というわけで、今日は僕が偏愛(?)している曲のひとつ、ロイ・ウッドの「Any Old Time Will Do」です。


Roy Wood - Any Old Time Will Do

 

  ”僕はここにいる 君とワインを飲みながら 

         僕の立ち位置もはっきりしないまま

    ああ、君が眠いんだったら僕は待つよ

         僕に与えられた時間はほとんどない

    チャンスを無駄にして来てしまった

         君にはいつだってかわりはないんだろうね

 

         ここに歌いに来たよ 僕は歌手じゃないけどね

   だけど歌うと寂しさが消えて無くなることがあるんだ

         ああ、眠いから 君を待つよ   

    僕に与えられた時間はほとんどない

    チャンスを無駄にして来てしまった  

          君はいつでもいんだろうけど

       

   いつもずっと長い時間をかけて

   君の瞳を見つめていたから

   僕は気づかなかったんだ

   僕は日の出を見たことがなかったんだ   

 

   君はここにいる 僕をなんとか見つけようとして 

   音楽はずっと何年も僕のたった一人の恋人だった

     僕に与えられた時間はほとんどない

     チャンスを無駄にして来てしまった  

           君はいつでもいいんだろうけど

 

   いつもずっと長い時間をかけて

   君の瞳を見つめていたから

   僕は気づかなかったんだ

   僕は日の出を見たことがなかったんだ   

 

   ときどき 窓の外を見る

   だけど僕のたった一つの世界は

   見たり聞いたりしてきた歌だけ

   眠いけど 君を待つことにするよ

   僕に与えられた時間はほとんどない

     チャンスを無駄にして来てしまったのは、本当さ  

           君はいつでもいいんだろうけど          ”(拙訳)

 

  

 ロイ・ウッドはジェフ・リンに目をかけ、E.L.Oのコンセプトを考えた創設者であり、個性的なフィル・スペクター・フォロワーであり、イギリスの定番クリスマス・ソングの作者です。

popups.hatenablog.com

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   という風に、”とっかかり”は十分にある人なんですが、素晴らしいポップスのクリエイターであるという、本質的な部分では過小評価されている気がしてしかたがありません。

 彼が書いた曲がチャート1位3作をはじめとして20作がチャートインしている本国イギリスでも彼のことを過小評価されているアーティストだと書いている記事が複数あります。

 彼の盟友であり、彼が結果として成功に導く手助けをするになったジェフ・リンと比較してみるのも、その理由を知る手がかりになるのかもしれません。

 ジェフ・リンはビートルズだけを愛しひたすら追求しながら、それをシンフォニックなサウンド、後年はシンセをメインにしたスペイシーなサウンドに反映させることで

新たなスタイルを作り上げました。

 ただのビートルズ・マニアで終わらせずに、コツコツと綿密に自分の世界を構築したことが、彼を成功に導いたように僕は思います。

 

 それに対してロイ・ウッドは1960年代で一番影響を受けたのはビーチ・ボーイズだと語っています。また、彼の作品から当然フィル・スペクターも相当好きだったことは想像できます。

 

 どっちが”ポップス好き”かといったら、断然ジェフ・リンよりロイ・ウッドだと思います。

 ジェフ・リンは、ポップが求められた時代(1980年前後)に誰よりも見事に対応して見せましたが、基本的に彼はひとつのトータルとしての”音世界を構築する”匠としての仕事に長けていたわけで、その後は多くの大物アーティストからプロデュースを求められることになるのは必然的なことだったように思います。

 

 それに対してロイ・ウッドはポップス愛好家で、アイディア・マンです。時流の中で新しいスタイルと自分の愛するポップスを合体させてゆくスタイル。完成度より面白さ、斬新さに重きを置いていたように思えます。

 それに、なんといっても奇抜なメイクと衣装でイメージ作りしていたこともあだになっていたかもしれません。

   「Any Old Time Will Do」も、内容は内気な男子のラブ・ソングなのに、アルバムジャケットとのギャップがすごいわけです。

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 (*上記のアルバム「Mustard」もそうですが、彼のソロ・アルバムは基本彼が全楽器を演奏しています)

 

 ロイ・ウッドはまず、ザ・ムーヴというグループを結成し、初シングルから5曲連続チャートのトップ5入りという華々しいデビューを飾りました。

 ザ・ムーヴのブレイク前に彼らの地元バーミンガムで対バンしたのがエルトン・ジョン。彼は当時”ブルーソロジー”というバンドのキーボーディストとしてカバー曲をメインに演奏していました。

 ロイ・ウッドの書いた曲は素晴らしく、エルトンはこう思ったそうです。

「ザ・ムーヴを観ていて、啓示のようなものを受けたのを覚えている。これがそうだ、だろ?これが進む道だ。これこそ僕がやるべきことだ。」

                    (「ME エルトン・ジョン自伝」)

 あのエルトン・ジョンを激しくインスパイアし自作自演へと導いたほどの、才能の持ち主、それがロイ・ウッドだったわけです。

 

 そして、ロイ・ウッドの大きな魅力、それは自らの”音楽ファン気質”が作品に大きく投影されていることだと僕は思います。

 このブログで紹介している、ポップスの多くが、熱心なポップス・ファンだったクリエイターによって作られています。

 

 最後に、アルバム「Mustard」から「Any Old Time Will Do」同様、シングルになりながら全然売れなかった曲。しかし、フィル・スペクタービーチ・ボーイズを愛する気持ちが猛烈に伝わってきます。。

 


Look Thru The Eyes Of A Fool - Roy Wood