おはようございます。
今日は村田和人の「電話しても」です。
これは村田和人のデビュー曲。彼が浪人時代、19から20歳頃に書いた曲だそうです。
デビューが26歳とやや遅めでしたので、曲を書いてから録音しリリースするまで結構な時間が経っています。
実は彼が大学2年の頃にこの曲の入ったデモを作って、それがフリーのプロデューサーを介して山下達郎に渡す機会があったそうです。彼はこの「電話しても」のアレンジャーです。
しかし、そのプロデューサーとのつながりがなくなってしまい、そのままになってしまいました。
山下本人はこの「電話しても」を大変気に入っていたらしく、村田がデビューしなければ自分で歌おうとすら思っていたそうです。
それから数年経って、山下と同じレコード会社の人間が、村田のライヴを観に来て気に入り、彼をレコード会社に連れて来たことがきかっけで、二人の”縁”は復活します。
村田のボーカルに、山下のアレンジがつけば、そっくりになってしまうという担当者の危惧から、アレンジャーに鈴木茂と井上鑑が選ばれアルバムが完成しました。
しかし、その音源を聴いた山下から村田の直接連絡が入り、これで満足しているのかと尋ねられ、気にいていない曲を村田があげると、それを山下が編曲し直したそうです。
山下のレコーディング・スタジオに村田が遊びに行った時に、「電話しても」のアレンジはそうじゃない、とその場で山下がギターを弾きアレンジを始めた、という話もあります。
どちらにしろ、数年前にデモをもらって曲を気に入っていた山下の頭の中にはもともと、「電話しても」のアレンジのイメージは出来上がっていたのでしょう。
鈴木茂がアレンジしたというデモ・ヴァージョンも、以前アルバムがリイシューされた時にボーナス・トラックとして収録されていました。
この聴き比べは興味深いものです。
テンポ感やギターのリフなど、おおざっぱにみたら劇的な違いはないような感じですが、印象は大きく変わります。
鈴木アレンジのほうがかえってシュガーベイブっぽい都会的なシティポップス感が強く、少し叙情的なウェットな感じがします。
山下アレンジは、もっと乾いていてレイドバックしています。
個人的にはサウンドだけ言えば鈴木アレンジもすごく好みなんですが、村田のボーカルが映えるのはやはり圧倒的に山下アレンジだな、と思います。
本当にポップスはアレンジが肝なんだな、と思います。
ちなみに、「電話しても」が収録されたアルバム「また明日」制作時に、山下は「For You」をレコーディングしていたそうで、村田はスタジオに毎晩通ってレコーディングの様子を最初から最後まで見て、コーラスの重ね方など様々なノウハウをそこで学んだそうです。
そして次作「ひとかけらの夏」で山下にフルでプロデュースしてもらったあと、今まで学んだことを糧に、3作目の「MY CREW」からはセルフ・プロデュースに挑むわけです。
2014年、杉真理との屋外でのライヴ映像。この2年後、2016年に彼は亡くなってしまいます。