まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「Dead End - Love Flowers Prophecy」ゴダイゴ(1977)

 おはようございます。

 今日は、ブレイク以前のゴダイゴの作品をもう1曲ピックアップします。

 


Dead End - Love Flowers Prophecy

 

 "夜の炎のように 愛が感情を照らし出す

  何が間違っていて 何が正しいのか やがて君にもわかるだろう

  ”怖れ”を消し去るんだ 僕たちのビジョンを見えなくするから

  今日は愛の中にとどまってほしい 全ては君が決めること

 

   花は育ち 花は与える でも君にその意味はわかるかい?

   心を持ち上げ 開け放とう そうすれば君の魂はきらめきだす

  ”怖れ”を消し去るんだ 僕たちのビジョンを見えなくするから

  今日は愛の中にとどまってほしい 全ては君が決めること

 

    愛は秩序だと君は教えられてきたね 人生は庭園のようであるべきだとも

   君が立ち去ってしまうなら  それはくだらない考えだ

 でも、君の決意の中に花があるなら 人生はどんな風になるだろう?

 

    このドアを開けてくれ 僕を外に出してくれ

 僕が叫んでいるのが聞こえないかい? そこに誰かいないのか? どこかに

    混乱して わけがわからない  うちのめされている

  閉じ込められて 身動きできない 逃げ道もない

 前にも後ろにも行けない 外に出たいんだ  僕は袋小路にいるんだ”(拙訳)

 

 

 彼らのファーストアルバム「新創世記」は当初タケカワユキヒデのソロ作品として制作を始めたものでしたので、次の「Dead End」がゴダイゴの正式なファースト・アルバムという解釈もあるようです。

 僕は「西遊記」以降彼らがブレイクした後に、遡ってこの曲を知りましたが、こっちの方がかっこいいなあと思ったのを覚えています。

 特にこの「Dead End」という曲の、ダークなスリリングさとポップさの混ざり具合が絶妙なんですよね。

 その後こういう曲はゴダイゴは作っていないですが、これはメイン・ソングライターのタケカワユキヒデがあまり持っていない面を、苦労して捻出したものだったからのようです。

 これは僕の推測ですが「新創世記」はもともとタケカワのソロだったので、彼の資質が大きく出ているものになり、「Dead End」はリーダーミッキー吉野が舵を握って、”ゴダイゴ”としてのカラーやコンセプトをしっかり示すことを優先したのではないでしょうか。

 詳しいファンの方のサイトでこういう記述がありました。

 

「根っからのポップ人間であるタケカワユキヒデにとってはあまり理解できない世界であったらしく、91年頃のインタビューでは「作っている時に僕は全くわかんなかった。何言ってんのかわかんないし、何んか暗いなーって感じだけで。 デッド・エンドって言葉自体もあんまし好きじゃなかった。(中略)異様に暗く嫌だなぁと思いながら、夜中に一人で書いてました。(笑)」と語っている。 書く曲がみんなミッキー吉野から「もっと暗く!」と突き返されるので、かなり苦労をしたらしい」

 

 吉野が「もっと暗く!」と突き返した、というくだりは興味深いですね。

 その後のタケカワの音楽を聴いていくと、彼にはダークな要素はほとんどないですよね。よく言えばポール・マッカートニーといい勝負くらいに、天然なおおらかさを感じます。

 ゴダイゴの表の顔は曲を書き歌うタケカワですが、それを裏で包み込むように支えているのが吉野です。

 彼は十代から天才と呼ばれたキーボーディストですが、インタビューを読むと、コンセプトやマーケティングなどいろいろ多岐にわたって考える人のようで「Dead End」のときは、彼が作りたいものを作るという気合が強かったのではないかと思います。

 

 のちに吉野は自分の曲よりタケカワの曲の方がうまくアレンジができると語っていましたが、その後はやはりタケカワの個性を存分に出した方がいい、という判断をするようになっていったのかもしれません。

 それによって、ポップでピースフルなグループ「ゴダイゴ」のイメージが形成されていったのではないかと。

 これは僕の感想ですが、タケカワは感覚的というか天才肌なのでしょうか、ソロになると自由すぎるというか、焦点がいまいち絞れていない感じがします。

 やはり、吉野が裏でコントロールするという、両者の拮抗が化学反応になっていたのではないかと思います。

 

 そういう意味では、「Dead End」は”吉野色の強い”タケカワ作品として貴重なものなのかもしれません。

 

 そして、彼らは翌年「西遊記」で大ブレイクするわけですが、「西遊記」を音楽で表現するというのは、吉野がバークレーにいたころから温めていたアイディアだったそうです。たくさんの人種が集まったアメリカで暮らすうちに、アジアの人間としてのアイデンティティに自覚的になったのだと語っています。

 その彼のところに「西遊記」の話が来るわけですから、不思議なものです。

また、「西遊記」の前年に彼らは「水滸伝」というTVドラマの音楽をやっています。

このドラマはイギリスでの放映され、彼らの演奏する「水滸伝のテーマ」はヒットチャートで37位まで上がっています。(A面はピーター・マックJRというシンガーの主題歌でB面が彼ら。ボーカルはトミー・シュナイダー)


THE WATER MARGIN ENGLISH VERSION.wmv

 この吉野のアレンジは「西遊記」につながるものがありますね。

 

 そして彼らは日本語歌詞の「ガンダーラ」と英語詞の「モンキー・マジック」をヒットさせるわけです。

 この頃は原田真二も活躍していましたし、CMでは山下達郎などの曲もどんどん使われていて、日本のポップスが一番”洋楽に近かった”時代だったのじゃないかと、今振り返って思います。

 

 そして、僕はそれが日本のポップスの”進化”だと長い間信じていて、その後の日本のポップスの流れは”退化”だと決めつけていたところがあったのですが、文化がそんな直線的な動きをするわけはなく、複雑な時流の変化を反映させながら”日本独自のポップス”を模索しつつ絶え間なく変化し続けているだけなんだな、と今では思っています。

 

 

DEAD END

DEAD END

 

 

 

GODIEGO SINGLES VOL.2 -SIDE B SELECTION-

GODIEGO SINGLES VOL.2 -SIDE B SELECTION-

  • 発売日: 2013/08/07
  • メディア: MP3 ダウンロード