まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「愛は止まらない(Nothing's Gonna Stop Us Now)」スターシップ(1987)

 おはようございます。

 今日はスターシップ。1987年の全米NO.1ヒット、映画「マネキン」の主題歌でした。

「愛は止まらない(Nothing's Gonna Stop Us Now)」を。


Starship - Nothing's Gonna Stop Us Now (Official Music Video)

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Lookin' in your eyes I see a paradise
This world that I found is too good to be true
Standin' here beside you
Want so much to give you this love in my heart
That I'm feelin' for you


Let 'em say we're crazy, I don't care 'bout that
Put your hand in my hand
Baby, don't ever look back
Let the world around us just fall apart
Baby, we can make it if we're heart to heart


And we can build this dream together
Standing strong forever
Nothing's gonna stop us now
And if this world runs out of lovers
We'll still have each other
Nothing's gonna stop us
Nothing's gonna stop us now

 

I'm so glad I found you, I'm not gonna lose you
Whatever it takes I will stay here with you
Take it to the good times
See it through the bad times
Whatever it takes is what I'm gonna do

 


Let 'em say we're crazy
What do they know?
Put your arms around me
Baby, don't ever let go
Let the world around us just fall apart
Baby, we can make it if we're heart to heart


And we can build this dream together
Standing strong forever
Nothing's gonna stop us now
And if this world runs out of lovers
We'll still have each other
Nothing's gonna stop us
Nothing's gonna stop us


Ooh, all that I need is you
All that I ever need
And all that I want to do
Is hold you forever and ever and ever, hey


And we can build this dream together
Standing strong forever
Nothing's gonna stop us now
And if this world runs out of lovers
We'll still have each other
Nothing's gonna stop us
Nothing's gonna stop us

 

And we can build this dream together
Standing strong forever
Nothing's gonna stop us now
If this world runs out of lovers
We'll still have each other
Nothing's gonna stop us

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君の瞳をのぞきこむと楽園が見える
僕が見つけたこの世界は、
あまりにも素晴らしい
君の隣に立って
この胸の愛を君に捧げたいんだ
それが君への思い


二人はおかしいってみんなに言わせておけばいい
気にしちゃいない
あなたの手を私の手に重ねる
ベイビー、もう振り返らないで
私たちの周りの世界なんて壊してしまうの
ベイビー 心が通じれば、きっとできる


そして一緒にこの夢を作ろう
永遠に力強くそびえる夢を
もう誰にも止められない
もしこの世界から恋人たちがいなくなっても
私たちにはまだお互いがいる
誰も私たちを止められない
もう誰にも止められない

 

君に会えて本当に嬉しい
決して離さないよ
どんなことがあっても、僕は君とここにいる
いい時が来るまで持ちこたえよう
辛い時期を乗り越えよう
何が必要でも、僕はやってみせる

 

二人はおかしいってみんなに言わせておけばいい
気にしちゃいない
あなたの手を私の手に重ねる
ベイビー、もう振り返らないで
私たちの周りの世界なんて壊してしまうの
ベイビー 心が通じれば、きっとできる


そして一緒にこの夢を作ろう
永遠に力強くそびえる夢を
もう誰にも止められない
もしこの世界から恋人たちがいなくなっても
私たちにはまだお互いがいる
誰も私たちを止められない
もう誰にも止められない


僕に必要なのは君だけ
僕に必要なのは
僕の望みは 君を抱きしめること
ずっとずっと、、


そして一緒にこの夢を作ろう
永遠に力強くそびえる夢を
もう誰にも止められない
もしこの世界から恋人たちがいなくなっても
私たちにはまだお互いがいる
誰も私たちを止められない
もう誰にも止められない

 


そして一緒にこの夢を作ろう
永遠に強く立ち続ける
もう誰にも止められない
もしこの世界から恋人がいなくなったら
私たちにはまだお互いがいる
誰も私たちを止められない

      (拙訳)

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  1970年代後半にジャファーソン・スターシップのボーカル、マーティ・バリンとグレイス・スリックが離れ、かわりにエルヴィン・ビショップの「愛に狂って」のボーカルで知られる、ミッキー・トーマスが加入し、バンドのカラーが一気に変わります。 

 

  時代はTOTO、ジャーニーなどポップなハード・ロック(産業ロックなどとも呼ばれていました)が大ブレイクしていて、ミッキーのヴォーカルもそのサウンドにぴったりだったということも大きかったのでしょう、ジェファーソンもそっちにシフトします。

 

「ジェーン」 


Jefferson Starship - Jane (Official Audio)

  その後、グレイス・スリックが復帰、”男女ツインボーカルの産業ロック”スタイルになりますが、創設メンバーにして中心人物のポール・カントナーの指向する音楽と乖離しはじめ、彼が制作の主導権も握れなくなっていったため、カントナーは結局バンドを辞めることになります。

 結局、バンド側とカントナーとの間で訴訟にまで発展し、最終的にバンドは「ジェファーソン」も「エアプレイン」は使えなくなり、バンド名が「スターシップ」に変わることになりました。

 そして、プロデューサーのピーター・ウルフがバンドの主導権を握るようになります。この人はもともとはフランク・ザッパのキーボーディストだったのですが、80年代にはエル・デバージ「フーズ・ジョニー」など軽快な典型的な80’sポップスを作っています。そして彼の起用が商業的には大成功し全米NO.1ヒットが生まれます。

 

「シスコはロックシティ(We Built This City)」


Starship - We Built This City (Official Music Video)

 僕が注目したいのはグレイス・スリックです。ジェファーソン・エアプレイン時代のオリジナル・メンバーはほぼ全員去って全く違う音楽性になったバンドに、彼女は残ったわけです。前年リリースした自身のソロ・アルバム「Software」でピーターと仕事をしていたというのも大きな理由でしょう。

 

 しかし、それに加えて、新しい時代の流行の音楽を真正面からやってやろうという気概を僕は感じます。彼女の娘がこの頃十代でデュラン・デュランが好きだったらしいので、そういう人気アーティストたちと自分も渡り合う姿を娘に見せたいと思ったのかもしれません。

 ”ウッドストック””モンタレー・ポップ・フェスティバル””オルタモント・フリーコンサート”などロック史に残るイベントに出演しジャニス・ジョプリンジミ・ヘンドリックスなどとともに1960年代後半の間違いなく”ロックのアイコン”の一人であった彼女にしてみたら、80年代の売れ線のポップソングは歯ごたえのない音楽だと、内心は思っていたんじゃないかとは推測します。

 しかし、このとき彼女は45歳です。音楽性の違いでチマチマもめてる(?)男性メンバーとは、肝っ玉が違ったのかもなあ、などと思います(そういう彼女も最後は音楽性の違いでバンド辞めてしまうのですが、、)。

 

 ジェファーソン・エアプレインが大好きだったファンは、たぶん100人中100人がスターシップを認めないというか、全然違うバンドだ思っているはずだと思うんですが、時代の変化を受け入れ全然違う音楽でも堂々と歌って見せるグレイスに僕は感服していまうんですよね。

 

 さて、この「愛は止まらない」は1980年代後半から90年代にかけて間違いなくNO.1ヒット・メイカーだった、ダイアン・ウォーレン、そして「カリフォルニアの青い空」のアルバートハモンドの共作です。二人ともに作詞・作曲家で、詞曲両方書ける人同志の共作だったというのも興味深いです。

 「ミス・ア・シング(I Don't Want to Miss a Thing) 」(エアロスミス)など数々の大ヒットを書いたダイアン・ウォーレンにとって初めての全米1位がこの曲でした。

 

 アルバートハモンドはこう回想しています。

 「映画監督の(マイケル・ゴットリーブが)『マネキン』という映画の脚本をダイアンと僕にくれたんだ。映画の最後には、アンドリュー・マッカーシーキム・キャトラルが演じるキャラクターが結婚することになっていたんだ。僕も長年付き合っている彼女と結婚する予定だったので、ダイアンと僕は2人の結婚をテーマにした曲を作ろうと思ったんだ。その脚本によると、みんなが結婚しないためにあらゆる手段を講じていて、僕と長年の恋人との状況は映画ととてもよく似ていたのさ。そうして生まれたのがこの曲で、自分の結婚式でもこの曲を使ったんだよ」

 (rediscoverthe80s.com  November 12, 2021)

 

  そして、ウォーレンとハモンドは、最初からデュエット曲として「愛は止まらない」を書いたようです。

ローラ・ブラニガンとジョン・パー、あるいはパティ・ラベルマイケル・マクドナルドに依頼することも考えたが、RCAのA&R担当者が、すでに男女のシンガーが1人ずついるスターシップを提案したのだ。スターシップのメインのプロデューサー、ピーター・ウルフが「愛は止まらない」のデモ・バージョンを気に入らなかったので、バンドは、ホイットニー・ヒューストンの 「恋は手さぐり(How Will I Know) 」が大ヒットしたばかりのナラダ・マイケル・ウォルデンと一緒にレコーディングをした。ウォルデンはこの曲を気に入っていた。『Fred Bronson's Billboard Book Of Number 1 Hits』の中でウォルデンは「サウンドが本当にいい感じで、大きくて、広い。エコーがかかっていてね。すぐにフィル・スペクターのことを思い浮かべたよ。これは、フィル・スペクターの真似をして世界を感動させるビッグチャンスだと思ったんだ」

(STEREOGUM  FEBRUARY 10, 2021)

 スペクター・サウンドとはかなり違う気はしますが、エコーが深めでダイナミックな仕上がりなのは間違い無いですね。

 また、ウォルデンはこう語っています。

「僕はグレース・スリックがいた60年代的なものはいつも好きだったよ。彼女はとても率直な女性さ。僕たちはみんなベイエリア出身だから、家族みたいなものなんだ。このトラックを作ったとき、実は僕がドラムを叩いていた。グレースに来てもらったときに、上下逆にして、低音パートではなく、高音パートを歌ってもらうようにしたのさ。彼女に一番高いパートを任せたら、見事に歌いこなしたんだ。その時、この曲は大ヒットすると確信したんだよ。スタジオで僕がハッピーになったら、彼女もハッピーになったんだ」

 (Songfacts)

 

 

 そして、そのころ、結果的に宇宙船(もともとは飛行機)を乗っ取られてしまった、創立者にして中心メンバーのポール・ケルトナー、マーティ・バリン、そこにやはり結成メンバーのジャック・キャサディも加わり、3人の姓の頭文字をとった「KBCバンド」を結成します。1986年リリースの彼らのアルバムには、なんとオフコースの「さよなら」のカバーが入っています。稲垣潤一をカバーしたことで日本のポップスを好きになったらしいマーティの選曲だと思われます。


KBC Band [US, AOR 1986] Sayonara

 KBCバンドはほどなくして解散してしまいますが、1989年にはケルトナーを中心にジェファーソン・エアプレインが再結成、マーティ・バリン、そして、さすがに「スターシップ」に飽きたのか、一時引退を考えていたというグレイス・スリックも参加しました。

 そのアルバムに入っていた曲が「サマー・オブ・ラヴ」。

サマー・オブ・ラヴは1967年夏にアメリカで起こった社会現象。ヒッピーと呼ばれる若者を中心に、反戦を訴え、ドラッグやフリーセックスを肯定し、全米各地から集まった若者が共同生活をしたりしていました。ロックと深く関わっていたムーヴメントで、その中心バンドがジェファーソン・エアプレインだったんですね。

 ”サマー・オブ・ラヴ それは特別な何かだった

     僕たちはとても若く とても自由だった

 サマー・オブ・ラヴ 僕はその一部だった

 僕たちにはたくさんの夢があった 叶ったのはほんの少しだったとしても

  僕はまだあの頃の音楽を信じている そして今も耳にする”(拙訳)

 

 何だかんだありましたが、20年たって彼らは自分たちの原点を確認したわけですね。

 (アルバムにはTOTOのメンバーもしっかり参加していて、スターシップに対抗しようという意気も感じますが、、)

 

 


Jefferson Airplane - Summer of love

 

 

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