まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「Loving is Easy (feat. ベニー・シングス) 」レックス・オレンジ・カウンティ(2017)

 おはようございます。

 今日は、新しい時代の”POP"とはこういうもんだよ、と気持ちよく、鮮やかに作りだしてくれる逸材、レックス・オレンジ・カウンティベニー・シングスをフィーチャーした「Loving is Easy」です。


Rex Orange County - Loving is Easy (feat. Benny Sings) [Official Video]

 

Loving is easy
You had me fucked up
It used to be so hard to see
Yeah, loving is easy
When everything's perfect
Please don't change a single little thing for me


Listen, girl
When you can't even hide it
And it didn't take forever to find it
I was all on my own
Almost glad to be alone
Until love came in on time, on time


So loving is easy
You had me fucked up
It used to be so hard to see
Yeah, loving is easy
When everything's perfect
Please don't change a single little thing for me


So listen, girl
When you can't even hide it
And it didn't take forever to find it
I was all on my own
Almost glad to be alone
Until love came in on time, oh, on time

Loving is easy
You had me fucked up
It used to be so hard to see
Yeah, loving is easy
When everything's perfect
Please don't change a single little thing for me

***********************************************************

愛することは簡単
キミは僕をめちゃくちゃにした
かつてはそんなことわからなかった
ああ、愛することは簡単さ
すべてが完璧なとき
僕のためにどんな小さなことひとつでも変えないで


聞いてくれ、ガール
キミが隠すことさえできないとき
それを見つけるのに、いつまでも時間はかからなかった
僕はたった一人きりだった
一人でほとんどよかったと思っていた
愛が時間通りにやってくるまで、時間通りに

 

だから、愛することは簡単
キミは僕をめちゃくちゃにした
かつてはそんなことわからなかった
ああ、愛することは簡単さ
すべてが完璧なとき
僕のためにどんな小さなことひとつでも変えないで


聞いてくれ、ガール
キミが隠すことさえできないとき
それを見つけるのに、いつまでも時間はかからなかった
僕はたった一人きりだった
一人でほとんどよかったと思っていた
愛が時間通りにやってくるまで、時間通りに

 

愛することは簡単
キミは僕をめちゃくちゃにした
かつてはそんなことわからなかった
ああ、愛することは簡単さ
すべてが完璧なとき
僕のためにどんな小さなことひとつでも変えないで

                        (拙訳)

***********************************************************

 

 彼の音楽を聴いて考えたことがありました。

 それはヒップホップをポピュラー・ミュージックとしてとらえる、ということです。

 ヒップホップは少なくともアメリカではかれこれ30年くらい、ヒットチャート上で最も人気のあるジャンルなわけです。

  90年代にR&Bはヒップホップに吸収され、その中のひとつのジャンルになったと言われています。70年代に作られたコンピューター会社が巨大になり老舗電機メーカーを吸収合併したみたいな感じでしょうか(?)。

 

 でも、考えてみるとヒップホップはR&Bだけじゃなくポップ・ミュージック全体を飲み込んだ、その言い方が大げさなら、全体に深く深く浸透しているのは間違いないと思います。

 例えば、たぶんいま世界で一番人気のあるシンガーソングライター、エド・シーランにもヒップホップの影響は強く感じるわけです。

 

 ヒップホップが音楽の”芯”まで食い込んでいるかどうか?

 

 それが昔のポップ・ミュージックと今のポップ・ミュージックの決定的な違いであり、今の洋楽と日本のポップスとの宿命的な違いなんじゃないか、と僕は思うわけです。

 

 レックス・オレンジ・カウンティを聴いて思うのは、ヒップホップを”ポピュラー・ミュージック”として当たり前のように聴いてきた世代の若者が、現代では”ニッチ”である古いポップスを掘り下げながら、それを自由にコラージュするように、作っていった音楽だということです。古い年代のアーティストには決して真似ることのない”芸当”ですよね。

 

 彼の初期の作品「UNO」にすでにそれが見事に現れています。ヒップホップの手法を取り入れるとかいうことじゃなく、ヒップホップとポップスが最初から溶け合っている感じがします。こういうのはきっと、もっと上の世代の人間にはできないですよね。

www.youtube.com

 

 もうひとつ感じるのは、現代のポップスは、”パーソナルにカスタマイズされた感じ”をそのまま聴かせたほうがいいんじゃないか、ということです。普遍的な完成品、いわゆる”万人ウケ”なんて目指そうとしないほうが、どうもよさそうです。

 

 昔は不特定多数の聴衆にウケるように、ラジオやテレビで流れることを一番に想定して、さまざまな”プロ”の手で選別し加工して完成品を作っていったわけです。

 でも、そういうプロの手でちゃんと普遍化したような曲は、スマホでサブスクで聴くとなんか面白くなく聴こえてしまうんですよね。

 逆にパーソナルな感じが残っている曲のほうが、聴いている側がアーティストとのダイレクトにつながっているような錯覚が感じられて面白いです。

 作りこみ過ぎたサウンドより、わりとユルい感じのビートが多いのも、サブスクをイヤホンで、という聴き方と関係が大きいようにも思えます。

 

 そういえば、ユルい曲と言えば、このブログでもピックアップした「I Don't Care」を彼がカバーしている映像があります。すごくいいです。


Rex Orange County - I Don't Care (Ed Sheeran & Justin Bieber cover) in the Live Lounge

 遅くなりましたが、一応、彼のプロフィールを。

 本名。アレキサンダー・オコナー。イギリス、ハンプシャー出身の21歳。オコナー(O'Connor)から「The OC」と先生が彼にあだ名をつけたらしく、The OCはカリフォルニアのオレンジ・カウンティの略称でもあって、同名の人気ドラマもあることから、その芸名を考えたそうです。 

  幼い頃、家のステレオからはクィーンやアバが流れ、父がディープ・パープルやジミ・ヘンドリックスを聴かせてくれて、独学でピアノでビリー・ジョエルを弾いてみたりしていたそうで、あと、グリーンデイやウィーザーといったバンドも好きだったそうです。

 そして、卒業生にアデルやエイミー・ワインハウスなどがいるパフォーミング・アーツの学校BRIT SCHOOLに入り、ドラムやソング・ライティングも始めました。

 また、彼はやはりヒップホップもよく聴くそうで、特にトラックのコード感をよくチェックするとのこと。

 

 今回、ピックアップしたのはベニー・シングスとの共演。彼はオランダのアーティストで、日本でもポップス・マニアにはかなり人気の高い人です。レックスがずっと彼のファンだったことからコラボが実現し、べにーの住むアムステルダムで作業は行われたそうです。

 憧れのポップ・マエストロとの共同作業したせいか、彼のレパートリーの中では、最もオーソドックスなポップスに仕上がっているように思います。

 

  マエストロといえば、彼はこの曲の翌年2019年にランディ・ニューマンとニューマン作の「君は友だち(You've Got a Friend in Me)」を共演していますので、それを最後に。

www.youtube.com

 

 追記:2022年に彼はニュー・アルバム「Who Cares?」をリリース。全曲がベニー・シングスとの共作になっています。HIP-HOPの人気アーティストで、山下達郎の「Fragile」をサンプリングしたことでも知られるタイラー・ザ・クリエイターをフィーチャーした「Open The Winodow」がシングルとしてリリースされています。

www.youtube.com

popups.hatenablog.com

popups.hatenablog.com

popups.hatenablog.com