まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「サイモン・セッズ(Simon Says)」1910フルーツガム・カンパニー(1967)

 おはようございます。

 今日は1910フルーツガム・カンパニーの「サイモン・セッズ」です。

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I'd like to play a game
That is so much fun
And it's not so very hard to do
The name of the game is Simple Simon says
And I would like for you to play it to

Put your hands in the air
Simple Simon says
Shake them all about
Simple Simon says
Do it when Simon says
Simple Simon says
And you will never be out

Simple Simon says
Put your hands on your hips
Let your back bone slip
Simon says

Simple Simon says
Put your hands on your hips
Let your back bone slip
Simon says

 

Put your hands on your head
Simple Simon says
Bring them down by your side
Simple Simon says
Shake them to your left
Simple Simon Says
Now shake them to your right

Put your hands on your head
Simple Simon says
Bring them down by your side
Simple Simon says
Shake them to your left
Simple Simon Says
Now shake them to your right

 

Now that you have learnt
To play this game with me
You can see its not so hard to do
Lets try it once again
This time more carefully
And I hope the winner will be you

Clap your hands in the air
Simple Simon says
Do it double time
Simple Simon says
Slow it down like before
Simple Simon says
Ah, your looking fine
Simple Simon says


Now clap them high in the air
Simple Simon says
Do it double time
Simple Simon says
Slow it down like before
Simple Simon says
Ah, you're looking fine

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ゲームをやってみたいんだ
とっても楽しいよ
そんない難しことは全然ないよ
ゲームの名前は、”間抜けなサイモンが言いました”
君にもやってみてほしいんだ

両手を上げて
”間抜けなサイモンが言いました”
その手をぶらぶら振って
”間抜けなサイモンが言いました”
サイモンさんが言ったらやるんだよ
”間抜けなサイモンが言いました”
君はもう抜け出せない

”間抜けなサイモンが言いました”
両手をお尻に当てて
背骨をスリップさせて
サイモンが言いました

シンプルなサイモンさんのコメント
両手を腰に当てる
背骨を滑らせる
サイモンが言う

 

両手を頭の上に乗せて
”間抜けなサイモンが言いました”
それを両脇に下ろして
”間抜けなサイモンが言いました”
それを左に振って
”間抜けなサイモンが言いました”
今度は右に振って

 

両手を頭の上に乗せて
”間抜けなサイモンが言いました”
それを両脇に下ろして
”間抜けなサイモンが言いました”
それを左に振って
”間抜けなサイモンが言いました”
今度は右に振って

 

僕とやるこのゲームの遊び方
もうおぼえたよね
そんなに難しくないってわかったはずさ
もう一回やってみよう
今度はもっと注意して
君が勝つことを祈ってるよ

手拍子をして
”間抜けなサイモンが言いました”
それを倍の速さで
”間抜けなサイモンが言いました”
前の速さに戻して
ああ、上手だね
”間抜けなサイモンが言いました”

                       (拙訳)

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 ここのところ、このブログでは”1967年”にスポットを当てていますが、この年の年末(ビートルズの「ハロー・グッドバイ」が大ヒットしていました)にリリースされ翌年にかけて大ヒットしたのがこの「サイモン・セッズ」でした。

 子供からローティーンにターゲットを絞って作られたわかりやすいポップスを”バブルガム・ポップ”と呼びますが、その代名詞的な存在がこの1910フルーツガム・カンパニーの「サイモン・セッズ」で、1967年というのはバブルガム・ポップの生まれた年でもあります。

 

   商業音楽のターゲットの中心はティーンエイジャー、というのは今では常識のように思われていますが、実は昔は”大人の楽しみ”だったんです。なぜかというと、子供はお金をもってなかったわけですから。

 それが、1950年代にロックンロールの爆発的人気とともに主導権が移行し始め、60年代には10代がリスナーの主役になりました。すると、ポップ・ミュージックも成長と言いますか成熟し始め、ビートルズがアイドルからアーティストへ脱皮し、ジミヘン、ドアーズ、レッド・ツェッペリンなどアーティスティックな人たちがどんどん台頭してきました。

 僕なりの大雑把な例えなんですが、中高生ターゲットだったのが大学生好みに音楽シーンが変わってきたと言得るんじゃないでしょうか。

 

 その成熟し始めた音楽シーンに逆行する動きではありますが、音楽シーンの中ですっぽりと空いてしまった、言わばノーマーク状態になった低年齢層にターゲットを絞ることにってバブルガム・ポップはまんまと成功を収めたのです。

 この時代では、キャッチーなポップスはすでに主流ではなく、カウンター(反動)的な存在になりつつあったわけですね。

 ただし、ビートルズの「ハロー・グッドバイ」やモンキーズなどによって、低年齢層のポップスへの興味は”活性化”はしていたと思います。そして、難解になってきた音楽シーンには内心ついていけてないなと感じていたリスナーはハイティーンや大人にもいたようで、想定よりも広い層にウケて、「サイモン・セッズ」は大ヒットすることになります。

 

 メンバーのフロイド・マーカスは”Songfacts”のインタビューでこう語っています。

 

「こうした曲がリリースされたとき、特に68年の「サイモン・セッズ」は、たくさんの人がたいして中身がない、と感じ、受け入れなかったんだ。でも思い返してみると、僕らはちょうどいいタイミングだと思っていた、というのも、あの5年間はヘビーな音楽が飽きられていた時期だったのさ。ジミヘンがいて、ドアーズがいて、ツェッペリンが登場したのが69年頃。ビートルズはポップなグループから『サージェント・ペパー』へと変貌を遂げた。世の中はどんどんヘビーになっていった。みんな、そういうものから一息つきたかったんだ。「サイモン・セッズ」、「1- 2- 3 Red Light」、「May I Take a Giant Step」が出たとき、僕らはあるマーケットに向けて演奏したんだ。それはおそらく、音楽がたくさん出てくる中で、業界で無視されていた10代の若い人たちだったのだろう。だけど、年上の人にも多く受け入れられたと思います。私たちがツアーに出かけると、たちのファンは小さな子供たちだけではなかった。18歳、19歳、20歳といった私たちと同世代の、音楽に夢中になっている女の子や男の子たちもいたんだ」

 

 仕掛けたプロデューサーはジェリー・カセネッツとジェフ・カッツの2人。二人のファミリーネームがKということで、のちに”スーパーKプロダクション”と名乗るようになりました。

 彼らは1960年代前半にアリゾナ大学で出会い、デイヴ・クラーク・ファイヴをアリゾナ大学に招聘するコンサートプロモーターが最初の仕事だったそうです。その後、マンハッタンのブロードウェイに小さなオフィスを構え、バブルガム・ミュージックのコンセプトを考え、ブッダ・レコードの音楽業界きっての”山師”ニール・ボガード(のちにディスコ・ブームでドナ・サマーヴィレッジ・ピープルなどを当てた人です)の元で制作を始めました。

 

 1910フルーツガム・カンパニーは、彼らの戦略のために集められたスタジオミュージシャンたちで、いわゆる覆面バンドだったという説が有力とされていましたが、元々はJeckell And The Hydesというバンドとしてすでに存在していました。ただし、大ヒット曲のいくつかはスタジオ・ミュージシャンが演奏したものであったのは確かなようです。

 

  「サイモン・セッズ」は全米チャート最高4位、350万枚も売り上げました。確かに曲はわかりやすいですが何故そこまで売れたのか日本人にはわかりづらいところがあります。

 実は「サイモン・セッズ」とはアメリカの子供に大変ポピュラーな遊びだったそうです。まず、グループの中で「サイモン」役を決め、サイモンは他のメンバーに指示を出します。「両手を頭の上に乗せて」とか。しかし、メンバーは最初に「サイモン・セッズ」と言ったときにだけ従って、何もつけないときには従っちゃいけない、そういう遊びです。

 歌詞もその遊びを聴き手と一緒にやる内容で、もはや「おかあさんといっしょ」の曲と一緒のレベルです。

 

 ただ、ゲームは”Simon Says"ですが、歌の中では”Simple Simon Says"と言っています。

 ”Simple Simon"というのは、イギリスのマザーグースの一つで、こんな歌です。

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まぬけなサイモンはパイ売りに出会って、味見したいと言ったけど、お金を持ってなかった、、みたいな歌詞です。

 メロディは日本人には「アルプス一万尺」で知られていますね。ちなみに「アルプス一万尺」と「Simple Simon」の原曲は「Yankee Doodle(ヤンキー・ドゥードゥル)」という曲のようです。

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 話が脱線しましたが、この曲の中で"Simple Simon Says"と歌っているのは、曲の作者が面白がって二つをミックスしたのか、それとも、この当時すでにこの遊びの中でこういう言い方もあったのかは不明です。

 

 それから、僕が面白かったのは、歌詞に

”Put your hands on your hips
Let your back bone slip”

(お尻に両手を当てて、背骨をスリップさせて)

と出てきますが、これウィルソン・ピケットの代表曲「ダンス天国(Land of 1000 Dances)」(1966年全米6位 R&B1位)に出てくるフレーズです。

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 こういう”遊び”もこの曲がウケる要因にさりげなく、ですがなっていたんですね。

 

 ちなみに彼らは他のシングル曲「1- 2- 3 Red Light 」(全米5位)や「May I Take a Giant Step」(全米63位)も、テーマはやはり”子供に馴染みのある遊び”から取られています。他の曲も学校で子供達がよく使う言葉を反映させたものが多いんですよね。

 実に明快なコンセプトですね。

   

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 彼らの曲をもう1曲。この曲のタイトルから”バブルガム・ポップ”という呼び名がついたという説もありますが、日本のマニア(?)には、筒美京平が「サザエさん」のエンディング・テーマ「サザエさん一家」に、このイントロを流用(?)したということでも有名な「バブルガム・ワールド」を。


1910 Fruitgum Company-Bubblegum World

Simon Says

Simon Says

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