おはようございます。
今日はスガシカオの「午後のパレード」です。
*********************
彼が初めて買ったCDはバグルスの「ラジオ・スターの悲劇」だったそうです。
ただ、学校ですごく流行っていたからで、特にすごく衝撃を受けたわけでもないと語っています。
彼はジャズ・ギターから楽器を始め、高校時代はノイズ・パンク・バンドをやり、それからファンク・ソウルにハマるという、王道のポップスに夢中になった経験がないまま、Jポップ屈指のクリエイターになったという異色の存在です。そんな彼が最初に買ったのが、80年代ポップスの流れを作った超重要曲というのも何か運命じゃないか、などと僕はついついこじつけしたくなるのですが、、。
確かに、彼のレパートリーには、いわゆる”ど真ん中のポップス”は皆無です。ど真ん中のポップスをやることを入念に避けているというか、自分はそういうアーティストではないと頑なにこだわっているふしがあります。もちろんそこが魅力でもあります。
そんな彼のレパートリーの中で、強いてあげると”ど真ん中のポップス”に近い曲がこの「午後のパレード」じゃないでしょうか。
しかし、このスガ史上最もノリのいいポップ・チューンを作るまでには、長いスランプと葛藤の時期があったようです。スタッフとの揉め事が担となり、2年くらい全く曲がかけなかったとのこと。過去の自分、成功した”スガシカオ像”との戦いもあったと言います。
「やっぱり、それまでは自分が求められているものからなかなか抜け出せなかったんですよ。閉塞的なもの、密室感のあるものというかね」(「愛と幻想のレスポール」スガシカオ)
そこで彼は、自分の作業スタジオを、窓の大きいところに変えて機材も一新したという。そして、引っ越し中にできたのがこの曲。そして、引っ越してから最初の曲はTV「プロフェッショナル仕事の流儀」で有名な「Progress」だったといいます。
そして「午後のパレード」そして「Progres」の別ヴァージョンも入ったアルバム「PARADE」について彼はこう語っています。
「「よし、ここは一発、ポップスとスガシカオの融合だ」みたいにして作った一枚だった。振り切れてたんですよね」(「愛と幻想のレスポール」スガシカオ)
大瀧詠一の「君は天然色」はまさに”背水の陣”で作られたものでしたが、本当にたくさんの人を喜ばせる明るいポップスというのは、”ちょっと売れ線やってみようか”くらいの動機じゃとても作れるものじゃなく、そこまでの”負の蓄積”が必要で、そこから振り切れた時にようやくできるものなのかもしれません。
「午後のパレード」はディスコ・ビートですが、彼はディスコものをずっとやりたかったけれど、コケるとかっこ悪いのでずっとためらっていたとも語っています。しかし、聴いてみるといわゆる世間が思うベタなディスコものとは違っていて、ジャミロクワイっぽさを感じます。実際、ストリングスはジャミロクワイをやっているサイモン・ヘイルがアレンジを手がけ、ジャミロの時と同じメンバーで演奏しているようです。
またベースが有賀啓雄、ドラムスが屋敷豪太というリズム隊も魅力的です。
ちなみに、この歌われている”パレード”は彼がハワイで見たパレードがモチーフになっているそうです。
また何年後になるのかはわかりませんが、また”振り切れた”ポップなスガシカオの新曲を聴きたいなあ、と個人的には思っています。