おはようございます。
今日もミルトン・ナシメント。彼のレパートリーの中でもとりわけポップな「マリア・マリア」です。
”マリア マリア
あなたは贈り物 ある種の魔法
僕たちに警告する力
地球上のあらゆる女性と同じように
生きて 愛する 価値のある人 ”
ミルトン・ナシメントの初来日公演は1988年のことで、日比谷野音で行われたライヴには僕も行きました。
かなり後ろの席だったのですが、この「マリア・マリア」が始まると前の方のお客さんが楽しそうに踊り出し、列を組んで客席を練り歩いていた光景を今でもおぼえています。
じっくりと歌声を聴く曲が多い、彼のライヴの中では、楽しく盛り上がるレパートリーとしてこの「マリア・マリア」は欠かせないものだったようです。
元々は1975年頃、ブラジルのコンテンポラリー・ダンス・グループ”グルーポ・コルポ”からバレエの新作を一緒に作ろうという依頼があって、そのために作られたひとつがこの「マリア・マリア」でした。ミルトンの盟友で、このバレエの脚本を書いたフェルナンド・ブランチが歌詞を書き、ミルトンが音楽を手がけました。
そのバレエのテーマは「全てのマリアを、その全てのかたちで」というもので、聖母マリアを核に、様々な”マリア”が登場するものだったようです。
そのバレエのタイトル自体が「マリア・マリア」でしたので、この曲は主題歌のようなものだったのかもしれません。
「マリア・マリア」は当時のバレエの常識を覆すような確信的なもので、大きな話題になりブラジル国外でも公演を行うほどの反響があったようです。
MEMÓRIAS DO DESCOBRIMENTO - MARIA MARIA - GRUPO CORPO
「マリア・マリア」は、サウンド・トラックとして録音はされましたがリリースはされず、1978年の彼のアルバム「クルービ・ダ・エスキーナ2」で陽の目を見ました。
しかし、そのサウンド・トラックの音源も昨年ついにリリースされています。
Milton Nascimento - Maria Maria
その後、グルーポ・コルポはブラジルを代表するアーティスト達と作品を作り続け、2008年には来日公演も果たしています。
さて、僕がこの「マリア・マリア」に惹かれる理由は、その”ビートルズ感”にあります。
ビートルズ風の楽曲はそれこそ星の数ほどあるわけなんですが、彼の場合猛烈に独特な感じがあるんですよね。
しかも、彼の曲の場合は、ビートルズでもあきらかにポール・マッカートニーが好きだって感じが伝わって来ます。
どんなアーティストも”ビートルズ風”の曲をやれば、ビートルズの色にかなり引っ張られてしまうのが普通ですが、彼の場合は自分の”色”を維持しながら、取り込んでいる感じがするのです。
他のどんなアーティストとも違う味わいがある気がします。
同じようなテイストの曲は他にもあります。1972年発売の彼の代表作の一つ「クルービ・ダ・エスキーナ」に収録されています。
ブラジル最高の女性シンガーと呼ばれるエリス・レジーナも「マリア・マリア」をカバー。より情熱的に、ダンサブルになっています。ちなみに、彼女はまだ無名だったミルトンの曲を真っ先に取り上げた(「Cancao Do Sal(塩の歌)」名曲です)人でした。
1983年のミルトンの貴重なライヴ映像。大変人気のあった曲だというのが伝わってきます。
Milton Nascimento Maria Maria ao vivo 1983
2018年にリリースされたアコースティック・ヴァージョン。グルーポ・コルポのために作ったときの、本来の「マリア・マリア」のイメージの映像なのかもしれません。
Milton Nascimento - Maria, Maria (Acústico)