おはようございます。
今日はジョイスの「フェミニーナ」です。
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ママ、説明して、教えてよ、"女性 "になるってどういうこと?
- それは、あなたの髪型でも、自分をやさしくなでることでもなくて
いつもひとりの女の子でいることよ
- ママ、だから、教えてよ、終わりはどうなるの?
- それは、同じ場所で角を曲がって、またやり直すときになったら終わりなの。
後で切ることができるように人生の糸を織って
二度と戻ってこれない世界に身を投じる
ママ、説明して、教えてよ、"女性 "になるってどういうこと?
- それは、あなたの髪型でも、自分をやさしくなでることでもなくて
いつもひとりの女の子でいることよ
- ママ、だから、教えてよ、終わりはどうなるの?
- それは、同じ場所で角を曲がって、またやり直すときになったら終わりなの。
世界のごちそうをテーブルに並べて
そして、また火をつけて、すべてを燃やす
ママ、説明して、教えてよ、"女性 "になるってどういうこと?
- それは、あなたの髪型でも、自分をやさしくなでることでもなくて
いつもひとりの女の子であることよ
- ママ、だから、教えてよ、終わりはどうなるの?
- それは、同じ場所で角を曲がって、またやり直すときになったら終わりなの。
(ポルトガル語がわからないので、英語訳や他の方の翻訳を参考にしながら書いた意訳だと思っていただければと思います)
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「フェミニーナ」というタイトルだから女性について歌った曲なんだろうな、とは思いつつポルトガル語がわからないので、ただ夏の午後によく似合う曲のひとつとして長年好んでひたすら”ぼうっ”と聴いてきたのですが、今回初めて歌詞と対峙して見て、興味深いものだったことにいまさらながら気づきました。
母と娘の対話形式で、母は女性であることは外見でなく、ただ女の子としてただ存在することであるといい、
その道は、一つの角を曲がると最初の場所に戻ってやり直すようなものだと語っています。
他に、切り離すためにわざわざ人生の糸を紡ぐ、とか、世界のご馳走をテーブルに並べて全て燃やしてしまうとか、コツコツと積み上げたものがいつか大きくなるというような価値観ではなく、常に儚く無常であることを伝えようとしているようにさえ思えます。ちょっと哲学的な歌詞なので、受け手によって捉え方は様々だとは思いますが。
彼女はこの曲についてこう語っています。
「私がデビューした時、女性の歌手は単なる歌い手であり、自分の思想を歌うことは許されなかった。それでも、私は自分の詩で、自分の声で、自分のコードで、自分のアレンジで、歌を表現したかったの」
「男性と女性の違いはあるけれども、世の中を性別で分けるのは少し違うと思うの。人種や文化での差別もしかり。自分が黒人であるとか、日本人であるとか、根本的な違いは何もないのよ。【フェミニーナ】を書いたのは1977年のことだけど、あの曲はまさにそのことについて書いたのよ。子どもが母親に「ママ、教えて、教えて、女性になるってどういうこと?」と尋ねている。母親が「髪型や見た目のことではないのよ。あなたの中にいつもあるの」と答える。「自分自身のことは自分で見つけなさい」と歌っているの」
そして、彼女のお母さんについてはこう語っています。
「とても厳しい母で、学校で学んだことを逐一報告するのが日課だった。自立した女性になってもらいたかったのね。母は私に「自分の人生は自分で決めなさい」という教訓を与えてくれたの」
(Real Sound 2014.07.28 )
毎日、母親に報告する習慣があったことが、この曲の対話形式という構成につながっているのかもしれません。
ジョイスは本名はジョイス・シルヴェイラ・モレーノといい、1948年にリオデジャネイロで生まれました。15歳から”サンバカーナ”というグループのメンバーとして初めてのレコーディングをします。
大学でジャーナリズムを学びながら20歳の時(1968年)にアルバム「ジョイス」でデビューします。
1972年にギタリストのネルソン・アンジェロとの結婚を機に活動はスローダウンしましたが、1975年に二人は別れ、彼女は本格的に音楽活動を再開しました。
そして1978年にミルトン・ナシメント、1979年にエリス・レジーナ、マリア・ベターーニアと、ブラジルを代表するシンガーが彼女の曲を取り上げます。
ミルトン・ナシメント「ミステリオス」
マリア・ベターニア「ブラジルの色」
そして、こうした追い風の中、ブラジル録音のソロ作品としては実に11年ぶりに制作されたのが、この「フェミニーナ」が収録されたアルバム「フェミニーナ」だったのです。
この当時のブラジルの音楽界の女性シンガーのほとんどが、他に人が書いた曲を作っていました。そんな中で、全編自作曲というのはかなり珍しかったようです。
女性のあり方を問う「フェミニーナ」という曲をアルバムのメインにしたのは、彼女なりの強い意志表明だったのだと思います。
ちなみに、アルバムにはミルトン、エリス、マリアに書いた曲も収録されています。
翌年にはこのアルバムと姉妹のような佇まいのアルバム「水と光」をリリースし、彼女はアーティストとしてのステイタスを確立しました。
ジョイス、そしてこの「フェミニーナ」は日本でも人気が高く、彼女は日本にたびたびライヴを行なっていて、常に盛況です。
また、1990年代のイギリスのアシッド・ジャズのムーヴメントでも彼女は再評価され、シーンの中心人物ジャイルス・ピーターソンによって人気になったのは、「フェミニーナ」に収録されていたこの曲でした。