まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「Count Your Blessings」アシュフォード&シンプソン(1986)

 おはようございます。

 今日はソングライター・チームそしてデュオとしても大成功した夫婦アシュフォード&シンプソンです。全米チャート84位と彼らの曲の中では目立たなかったものですが、ぜひ紹介させてください。


Ashford & Simpson ..Count Your Blessings ..1986

 

 ”学ばなきゃ 苦い経験から

 絶対に忘れちゃいけない 自分は恵まれているって

  学ばなきゃ 教訓を

 絶対に忘れちゃいけない 良かったことを思い出すことを

 

    愛してるって相手にそんなに言ってないでしょ

 シンプルなことが大切なの

 たとえば最後にふれあったのはいつか 最後にキスしたのは

 こんな風に抱きしめたのはってね

 

 私は愛する人をもう少しで失うところだったの

 目新しいものにばかり目を奪われて

 あなたが同じ間違いをする前に

 私に言わせてね

 

 相手が不平を言わないからって

 それは傷ついてないってことじゃないの

 忘れるなんて最悪 いつも最優先にして

 何を求めているのか考えながら

    満足させてあげて

 
 もしふたりの意見が合わないなら さよならに近づいている証拠ね

    あなたが今の生活を勝ち取るためにどれだけかかったのか考えるの

 長い年月あなたがやってきたのは、お互いの涙を乾かすことだった

 いろいろ思い出していけば あなたはもう全部持っていることに気づくはずよ

 

 Count Your Blessing 、Blessing(神様から与えられた恵み)を指折り数えるということで、悪いことがあって悲観的になったときに使うフレーズのようです。

 日本でもやなせたかしさんの有名な歌詞に

「もし自信をなくしてくじけそうになったら いいことだけいいことだけ思い出せ」

                       (アンパンマンたいそう)

 というのがありますが、こういう感覚は国は関係なく、人間みんな一緒なのかもしれないですね。

 

 

 

 さて、素晴らしい実績があるのに、日本ではそれほど知られていないアーティストは少なくないですが、彼らもそうかもしれません。

 彼らの作った代表的な曲といえば、マーヴィン・ゲイ&タミー・テレルの曲を僕は思い浮かべます。


Ain't No Mountain High Enough (extra HQ) - Marvin Gaye & Tammi Terrell


Marvin Gaye & Tammi Terrell - Ain't Nothing Like the Real Thing


Your Precious Love

   同一アーティストの曲3連発でこれ以上の至福感を感じれるものは他にないんじゃないかとさえ思ってしまいます。歌っているマーヴィンもタミーも実生活は決してハッピーではなかったことを考えると、ちょっと切なくもなるのですが、、、。

 

 さて、ニコラス・アシュフォードとヴァレリー・シンプソンはニューヨーク、ハーレムの教会で出会いコンビを組み始めたそうですが、初めての大ヒットはレイ・チャールズの「Let's Go Get Stoned」。R&BチャートNO.1になりました。


Ray Charles - Let's Go Get Stoned

 これに目をつけたのがモータウンです。レーベルのメイン・ソングライター・チーム、ホランド-ドジャー-ホランドの3人はスカウトもやっていたようで、彼らに会いにデトロイトからニューヨークにやってきたそうです。そして、二人のデモを聴くと契約したいと申し出たそうです。

 そしてこのビッグ・チャンスをものにするために必死に二人で書き上げたのが「Ain't No Moutain High Enough」だったそうです。

 この曲が出たときには二人は相当な手応えを感じたらしく、ニックは”金の卵”と呼んでいたようです。ダスティ・スプリングフィールドが曲を探しにニューヨークに来たときもこの曲を弾いて聴かせるだけで渡さなかったそうです。

 

 さて、モータウンの主力ライターとして活動し契約が終わると1973年からデュオとしてアーティスト活動を開始します(その前にヴァレリーはソロ・アルバムをモータウンでリリースしています)。彼らは作家になる前に"ヴァレリー&ニック”という名義で一度デュオでデビューしましたが成功しなかったので、万全を期しての雪辱戦でもあったのでしょう。


Valerie & Nick - It Ain’t Like That - Glover: 3005 DJ

 その後、アメリカではコンスタントにヒットを飛ばして、アーティストとしても知名度をあげるわけですが、夫婦で作家としてもアーティストとしても大成功したのは彼らだけでしょう。

 

 彼らの曲は本当にたくさんありますが、全体的に言えるのは”心が弾むような”ポジティヴなバイブレーションを感じる曲が多いということです。それは彼らの人間性によるところもあるのかもしれませんが、多くの部分は彼らがチャンスを掴むために必死に作り上げ研磨していった結果として到達したものだったわけです。だからこそ、それが独自の”音楽的秘伝のレシピ”としなり長期間にわたる活躍を可能にしたのでしょう。

  

 ちなみに、ニコラスが主に作詞をヴァレリーが作曲を手がけています。この歌もヴァレリーがメインで歌っていますので、女性の話し言葉で和訳してみたのですが、本当はこの強面のおじさんが書いている歌詞なんだよなあ、と思うとなかなか不思議な感じがします。