まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「Pretender」Official髭男dism(2019)

 おはようございます。

  今日は、昨年の下半期、日本のストリーミングチャートでずっとトップを走っていたこの曲です。


Official髭男dism - Pretender[Official Video]

 去年の日本のNO.1ヒットと言っていいこの曲をわざわざピックアップするのもなあ、と迷ってのですが、正月に去年リリースされた日本のポップスで一番良かったのはなんだろう?などとと個人的にろいろ考えていたら、最終的にこの曲になってのです。

 しかも、年末の歌番組で見るまで、この曲をいいとは思わなかったんです。それまではサビのメロディを耳にしていただけで、正直そんなに興味湧きませんでした。ぱっと聴きで判断しちゃいけませんね、、

 でも、フルサイズで聴くと、本当によくできていることがわかりました。

 Aメロ、Bメロ、サビ、それぞれがキャッチーで目立っていて、そこにさりげない大サビがダメ押しをしてくる、文句のつけようがない構成です。

 曲全体を貫く勢いの爽快さは、ミスチルの「イノセント・ワールド」を初めて聴いたとき以来の感覚でした。右肩上がりの若い才能が、一気に頂上に駆け上がる時期にだけ作れるような曲だと思いました。

 インタビューを読むと、曲の中で生ドラムと打ち込みを使い分けたり、ピアノの音色なども変えて、AメロからBメロへの変化を作ったり、細部までこだわって作られているようです。

 

 古今東西のポップスをこのブログでピックアップしながら思うのは、今の時代はメロディがキャッチーなだけでは大衆にアピールしないんじゃないかということです。ポップスが今の時代に通用させるために、必要なものをこの「Pretender」は教えてくれているような気がします。

 それは3つ。

 変化があって飽きさせない曲の構成、

 いろんなジャンルが溶け合っているミックスチャー感覚、

 そして何よりも大事なのはリズム、グルーヴ感 です。

 

 このバンドのボーカルでメイン・ソングライター藤原聡は、ピアノだけじゃなくマルチプレイヤーで、特にドラムスに魅かれていたそうです。

 そして、高校時代に、大人たちのやっているスティーヴィー・ワンダーとE,W&Fのコピーバンドでキーボードをやっていたことがあるそうで、他にマイケル・ジャクソンが好きだと語っているインタビューもありました。

 ブラック・ミュージックが根っこにあるんですね。ある雑誌で2019年の個人的なベスト・ソングをあげる企画では、アンダーソン・パークやサム・ヘンショウといった最先端のR&Bアーティストをピックアップしていて、かなりコアなファンであるようです。そして、ブラックミュージックでもポジティブねバイブレーションのあるものを好んでいるよえに思います。

 


Anderson .Paak - Make It Better (ft. Smokey Robinson) (Official Video)


Samm Henshaw - Only One to Blame (Visualiser)

 しかし、R&Bを前面に出さずに、曲の”エンジン”の役割としてそこにロックバンドのサウンドとJPOPのメロディーを乗せることで、このバンドの独特のミクスチャー感が生まれているのだと思います。

 それから、藤原はフロントマンではありますが、ミスチルバンプスピッツといったバンドに比べて、バンドの中でそれほど突出していない印象があります。実際、インタビューを読むと、藤原の創作においても他のメンバーの意見をしっかりとりいれていて、メンバーが対等な感じを強く受けます。

 それが、またミクスチャー感を生んでいるようにも思えます。

 King Gnuもそうですが、一人のメンバーが目立ち過ぎないこと、他のメンバーもただの演奏者じゃなく有機的な繋がりを感じるということも、今後のバンドのあり方として大事なのかも、などとも思えてきます。

 

 

Pretender

Pretender