まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「今宵の君は(The Way You Look Tonight)」マルーン5(2010)

 おはようございます。

 今日はアメリカのポピュラー・ミュージックの大スタンダード曲です。

「今宵の君は(The Way You Look Tonight)」。今日はマルーン5のカバーで。


The Way You Look Tonight- Adam Levine

Some day, when I'm awfully low
When the world is cold
I will feel a glow just thinking of you
And the way you look tonight


Yes, you're lovely, with your smile so warm
And your cheeks so soft
There is nothing for me, but to love you
And the way you look tonight


With each word, your tenderness grows
Tearing my fear apart
And that laugh wrinkles your nose
Touches my foolish heart


Lovely, never, never change
Keep that breathless charm
Won't you please arrange it? 'Cause I love you
Just the way you look tonight

 

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いつか、僕がひどく落ち込んで
世界が冷たいときでも
満ち足りた気持ちになれるのさ
君のことを、今夜の君の姿を想うだけで


そうさ、君は愛おしい、その笑顔はとても温かくて
頬はとても柔らかい
僕には何もないのさ、愛する以外に
君のことを、今夜の君の姿を


言葉を重ねるごとに、君の優しさが増してゆく
僕のおそれを引き裂いてゆく
鼻にしわを寄せて笑う顔が
僕の愚かな心に触れるのさ


愛しい人よ、決して、決して変わらないで
息もできないほどの魅力もそのままで
どうかそうしていてくれないか? それは君を愛しているから
今夜の君のその姿を

                       (拙訳)

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   この曲は「バレンタインデー」(Valentine's Day 2010)という映画のサウンドトラックに収録されていました。

 ジェシカ・アルバブラッドリー・クーパージェイミー・フォックスジェニファー・ガーナーアン・ハサウェイアシュトン・カッチャージュリア・ロバーツテイラー・スウィフトなどそうそうたるメンバーが集まった恋愛オムニバス映画です。

 

 マルーン5は”ロック・バンド”という枠を超え、様々なジャンルとクロスオーヴァーした活動をしてきていますが、この場合は”余興”と言ってはなんですが、あくまでも企画ありきのものだったとは思います。

 ただ、こういうスタンダードな曲を歌うとヴォーカルのアダム・レヴィーンは、シンプルにシンガーとしてとても魅力的であることがあらためてわかるような気がします。

 

 さて、この「今宵の君は」が発表されたのは1936年でした。フレッド・アステア主演の映画「有頂天時代(Swing Time)」で使われ、その年のアカデミー賞の最優秀歌曲賞も受賞する大ヒットになりました。


The Way You Look Tonight

 

   何らかのメディアを通して大衆に広まり、それが大きなビジネスになってゆくという"ポップ・ミュージック"や”ポップス”のルーツをたどっていくと、アメリカン・ポピュラー・ソングに行き着きます。

 NYブロード・ウェイのミュージカルとLAのハリウッドで作られた映画を通して、数々のヒット曲やスタンダード曲が生み出された、そんな時代の音楽ですね。1920年代から1950年代くらいのアメリカの流行歌です。

 

 「今宵の君を」を作曲したのはジェローム・カーンアメリカン・ポピュラー・ソングの黄金時代の幕開けとなった伝説のミュージカル「ショウ・ボート」(1927年)を手掛けた人です。また、日本人には映画「アメリカン・グラフィティ」に使われた「煙が目にしみる」も有名ですね。

 

 作詞はドロシー・フィールズ。彼女はミュージカルや映画の楽曲の歌詞を400曲以上書いたというこの時代の代表的な作詞家の一人です。

 

 それにしても、1930年代~50年代の古いミュージカルや映画音楽の曲は、今もカバーされることが多いですね。ベテランだけでなく、若いアーティストからも。

 

 どうしてだろう?と考えてみると、この時代に”ポピュラー・ソング”のひな型、原型にして理想形、完成形が作られたからじゃないかと思います。

 

 曲も歌詞も、とてもわかりやすくシンプルなのに、高度で洗練されています。歌詞とメロディーの組み合わせ方ということでは、もはや極められてしまっている感さえあります。

 その後のポピュラー・ミュージックは、メロディにきれいに言葉を合わせるのではなくて、いかに効果的に崩すか、意外性を持たせるか、とか、そういった方向に進んでいったように思えます。

 

 もう一つ、黄金期の映画やミュージカルは、日常生活とはまったく切り離された”夢の世界”として大衆にとって重要な機能を果たしていて(もちろん、今もその意義はあるのですが)、それに使われる音楽というのは大変重要な役割を担っていました。

 

 作り手の生々しいエゴやリアルな日常などといいうものが入る余地のない、作品のテーマに完全に寄り添った、プロフェッショナルな”作り物”だったわけですね。

 パーソナルなものではなく、普遍的な表現物なんですね。だからこそ、いろんなアーティストがさまざまな解釈ができる、ということなんだと思います。

 

 それに加えて、アメリカの一番輝いていた時代を象徴するものであった、という”郷愁感”も、今よくカバーされている背景にはあるように思います。

 

 経済が上向きで、誰もがきらびやかな生活に無邪気に憧れることができた時代はとっくに過ぎ去り、映画やテレビやステージでは、”夢の世界”を描くより、リアルな日常やダークなファンタジーを描くことの方が圧倒的に増えた時代には、ポップスの出番が少なくなってきたのは当然のことかもしれない、とも思います。

 

 でもやはり、その反動として、たとえそれが郷愁だったとしても、古き良き時代のポップスを歌うこと自体はなくならないような気もします。

 

 さて、この「今宵の君は」は、本当にたくさんのアーティストがカバーしていて、素晴らしい録音が多いです。

 その中から、マルーン5のヴァージョンのベースになったと思われるフランク・シナトラ、そしてロック界からロッド・スチュワート、そして、21世紀に入って古いスタンダードを歌うムーヴメントの中心となったマイケル・ブーブレのヴァージョンを続けて。

 


Frank Sinatra - The Way You Look Tonight


Rod Stewart - The Way You Look Tonight


Michael Bublé - The Way You Look Tonight

 

 

The Way You Look Tonight

The Way You Look Tonight

 
The Way You Look Tonight

The Way You Look Tonight

 
The Way You Look Tonight

The Way You Look Tonight

  • アーティスト:マイケル・ブーブレ
  • 出版社/メーカー: 143/Reprise
  • 発売日: 2009/10/07
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

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