まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「ライク・ア・ヴァージン(Like A Virgin)」マドンナ(1984)

 おはようございます。

   今日もマドンナです。彼女を一躍”時の人”にした「ライク・ア・ヴァージン」を。


Madonna - Like A Virgin (Official Music Video)

 

   ” 荒野を越えてきたの 何とかやりとげたの 

   どのくらいさまよっていたかさえわからない あなたを見つけるまでに

 

      私は打ちのめされて 不完全で 

   ずっとそうだったから 悲しくてブルーだった

   だけどあなたが感じさせてくれた 輝いた新しい気分

 

       ヴァージンみたいに 初めて触れられたように

  ヴァージンみたいに あなたの鼓動が響く 私の鼓動のすぐとなりで

 

  私の愛を全部あげるわ ボーイ

  恐怖心なんてすぐに消えてゆく

  愛をあなたのためにずっととっておいたの

  だって愛だけはダメになったりしないから

  

  あなたは最高 そして私のもの

  私を強くしてくれる そして大胆にさせるの

  あなたの愛が溶かしてくれた あなたの愛が溶かしてくれたの

  怖くて凍えていた心を

 

  ヴァージンみたいに 初めて触れられたように

  ヴァージンみたいに あなたの鼓動が響く 私の鼓動のすぐとなりで

 

  あなたは最高 そして私のもの そして私は死ぬまであなたのもの

  あなたが思わせてくれた 自分のすべてを見せてもいいって 

 

  ヴァージンみたいに 初めて触れられたように

  ヴァージンみたいに あなたの鼓動が響く 私の鼓動のすぐとなりで

 

  ヴァージンみたいに ヴァージンみたいに

  最高の気分 あなたが抱きしめてくれると

  あなたの鼓動が聴こえる あなたが愛してくれる”   (拙訳)

 

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I made it through the wilderness
Somehow I made it through
Didn't know how lost I was
Until I found you

I was beat
Incomplete
I'd been had, I was sad and blue
But you made me feel
you made me feel
Shiny and new

 like a virgin
Touched for the very first time
Like a virgin
When your heart beats
Next to mine

Gonna give you all my love, boy
My fear is fading fast
Been saving it all for you
'Cause only love can last

You're so fine
And you're mine
Make me strong, yeah you make me bold
your love thawed out
your love thawed out
What was scared and cold

Like a virgin, hey
Touched for the very first time
Like a virgin
With your heartbeat
Next to mine

You're so fine
And you're mine
I'll be yours
'Til the end of time
'Cause you made me feel
Yeah, you made me feel
I've nothing to hide

Like a virgin, hey
Touched for the very first time
Like a virgin
With your heartbeat
Next to mine

Like a virgin, Like a virgin
Feels so good inside
When you hold me
And your heart beats
And you love me

 

Writer/s: Billy Steinberg, Tom Kelly

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 彼女の歩みを振り返ると、アマチュア時代から一貫しているのは、自分にプラスになりそうな才能を見つけると、自らグイグイ行って自分のブレーンに取りこみ、十分にその力を吸い取ってしまう(?)と、また次の才能を嗅ぎつけて向かってゆく、それを繰り返しているということです。

 

 そう言ってしまうと、ただ他人の才能を利用するだけのしたたかな野心家、と思えてしまいますが、彼女の場合、その分自分自身が誰よりも努力するわけですね。恐ろしいくらい努力を惜しまない、そして、野心がぜんぜん枯れない。新しい才能を取り入れるながら、その都度自分自身をもアップデートさせ続けているわけです。

 どんな優れた才能でも古くなることから逃れることはできません。しかし、唯一彼女のような方法であれば長い間”旬”でいることは可能なのかもしれません。しかし、それは誰でもできることではないでしょう。

 

 さて、ファースト・アルバムが売れてさて次のアルバムの制作に入るときに、彼女は最初のプロデューサー、レジー・ルーカスを容赦なく切り捨てます。彼はアルバムからの最後のシングルで全米トップ10に入る大ヒットとなった「ボーダーライン」の作者でもあるのに、です。

  彼女に言わせると、レジーは素晴らしいプロデューサーだけど、R&Bしかできないからだそうです。そして、彼女が選んだのが、シックのナイル・ロジャースでした。

 

popups.hatenablog.com

  マドンナはシックの大ファンだったと言っています。そして、彼がこのときロック・アーティストのデヴィッド・ボウイをプロデュースして(「レッツ・ダンス」)大当たりしていたことも、大きかったでしょう。彼女はファーストアルバムのダンス・クィーン的なイメージからもう一つ上のステージを望んでいたからです。

 あと、彼女が言及しているのは見たことはありませんが、彼女が自身のスタイルを作るときに多くを”パクった”と言われている、かつての彼女の憧れの存在、ブロンディーのデビー・ハリーのソロ・アルバム(1981)をナイルがプロデュースしていたこともその理由の一つじゃないかと僕は推測しています。デビーのアルバムはコケたけど、私なら売れる、彼女ならそれくらい考えても不思議じゃありません(?)。

 

 

 そして、出来上がったシングルがこの「ライク・ア・ヴァージン」。確かにこの1曲だけで彼女はダンス・クィーンからポップ・スターに転身した、そんな鮮烈な印象を持たせる曲でした。そして、ナイルもディスコの巨匠からポップスの大ヒット・プロデューサーになったわけです。

   ちなみにこのアルバムのミックス作業中、ナイルはスタジオにいなかったことも結構あったそうですが、マドンナは最初から最後までずっとスタジオにいて、なにか真剣に学び取ろうとしていたそうです。

その後の彼女の成功の秘訣を垣間見るようなエピソードです。

 

 それから、この曲を書いたソングライターにも触れておく必要があるでしょう。

トム・ケリー(作曲)とビリー・スタインバーグ(作詞)というソングライター・チームが書いていて、彼らは80年代を代表するコンビでした。

 

 例えばこんな曲も書いています。


Cyndi Lauper - True Colors (Video)


The Bangles - Eternal Flame (Official Video)

  僕はずっと「ライク・ア・ヴァージン」は、セクシーなマドンナにわざと歌わせるギャップの面白さを狙った戦略的な曲だとずっと思っていたのですが、違ったようです。

  ”荒野を越えてきたの 何とかやりとげたの 

 どのくらいさまよっていたかさえわからない あなたを見つけるまで”

 これは、作詞家のビリー本人が、実際に人間関係の深刻な問題に巻き込まれていて、新しい出会いのおかげでやっと抜け出したという、そんな気持ちを歌詞にしたことから始まりました。彼本人はマドンナはおろか女性が歌うことも想定していなかったそうです。赤いピックアップ・トラックを一人で運転しているときに思い付いたとも語っています。

 そして、それを作曲家のトムに渡したときに、歌詞の内容からバラードに向いているけど、”ライク・ア・ヴァージン”というフレーズがバラードにはなじまないので、落としどころを決めかねていたようです。とりあえずメロディーも決まりデモを作ったのですが、そのヴァージョンのテンポは遅かったといいます。

 そして、それをレコード会社の人間に渡したところマドンナに会うんじゃないかという話になったわけです。

 

 この曲、メロディだけを聴くと、そんなにドラマティックでも”つかみ”が強いわけじゃないです。多分デモも地味だったんじゃないでしょうか。ナイル・ロジャースはシングル向きじゃないと思ったようですが、聴いていくうちに妙に耳に残るようになってひょっとしたら?と思ったと語っています。

 そしてその”地味な曲”をアレンジし、マドンナらしい歌い方に加え、マリリン・モンローばりに”Hoo"とか”Hey"とかアクセントをいれたりすることで、ものすごくキャッチーな曲に変身したわけです。

 

 最初は、大きな困難を乗り越えた男性がまっさらな気持ちになったことを”ヴァージンみたいだ”という風に例えて作った曲が、最終的には、男性経験がすごそうな(?)セクシーなシンガーが”ヴァージンみたい”と歌うことのギャップがインパクトになって大ヒットになるわけですから、ほんとにポップ・ミュージックというものは不思議ですね。

 

 

 

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