まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「おしゃれフリーク(Le Freak)」シック(1978)

 おはようございます。

 今日はシックの「おしゃれフリーク」。数あるディスコ・ナンバーの中でも最大級のヒットで、ビルボードが2013年に出した55年間の歴代TOP100の21位、これはディスコものでは最高位です。


CHIC - Le Freak (Official Music Video)

Ah, freak out
Le freak, c'est chic
Freak out
Ah, freak out
Le freak, c'est chic
Freak out


Have you heard about the new dance craze
Listen to us, I'm sure you'll be amazed
Big fun to be had by everyone
It's up to you, it surely can be done
Young and old are doing it, I'm told
Just one try, and you too will be sold
It's called Le Freak, they're doing it night and day
Allow us, we'll show you the way


Ah, freak out
Le freak, c'est chic
Freak out
Ah, freak out
Le freak, c'est chic
Freak out


All that pressure got you down
Has your head spinning all around
Feel the rhythm, check the rhyme
Come on along and have a real good time
Like the days of "Stompin' at the Savoy"
Now we freak, oh what a joy
Just come on down, to the 54
And find a spot out on the floor


Ah, freak out
Le freak, c'est chic
Freak out

Now freak
I said freak
Now freak

All that pressure got you down
Has your head spinning all around
Feel the rhythm, check the ride
Come on along and have a real good time
Like the days of "Stompin' at the Savoy"
Now we freak, oh what a joy
Just come on down, to the 54
And find a spot out on the floor

Ah, freak out
Le freak, c'est chic
Freak out
Ah, freak out
Le freak, c'est chic
Freak out

*****************************************************************************

ああ、やばい
ル・フリーク、それはシック
ビビっちゃう
ああ、やばい
ル・フリークはシック
ビビっちゃう


新しい流行のダンス知ってる?
よく聞いて、きっと驚くわ
誰もがすごい楽しめるの
あなた次第だけど、きっとできるわ
老いも若きもやってるって聞いたわ
一度やるだけ、あなたもわかるわ
ル・フリークと呼ばれるダンス、夜も昼もやってる
まかせて、やり方教えてあげる


ああ、やばい
ル・フリーク、それはシック
ビビっちゃう
ああ、やばい
ル・フリークはシック
ビビっちゃう


あのプレッシャーにやられちゃって
頭がクラクラしてるのね
リズムを感じて、ライムをチェックして
さあおいで、楽しい時間を過ごそう
"サヴォイでストンプ "の頃みたいに
今、私たちは興奮状態 なんて楽しいの
おいでよ、スタジオ54に
そして、フロアで踊る場所を見つけるの

 

ああ、やばい
ル・フリーク、それはシック
ビビっちゃう
ああ、やばい
ル・フリークはシック
ビビっちゃう               (拙訳)

*****************************************************************************

 

”黒人版ロキシー・ミュージック”の特大ヒット曲

 

 シックはもともとジャズ・フュージョンのプレイヤーであったナイル・ロジャース(ギター)とバーナード・エドワーズ(ベース)を中心に結成されました。彼らは”The Bigg Apple Band"というグループをやっていましたが、ナイル・ロジャースがイギリス滞在中にロキシー・ミュージックのライヴを見て、”黒人版ロキシー・ミュージック”というコンセプトを思いつきます。

 

 ロキシー・ミュージックは、メンバーもお客さんも全て美しく着飾っていて、目にするあらゆるイメージが統一されていて、ナイルはそこに惹かれたそうです。


Roxy Music - Both Ends Burning

 彼はそういうイメージに合った外見のメンバーを集め、ベートーヴェンの「運命」のディスコ・ヴァージョンをやって話題になっていた”ウォルター・マーフィー&The Bigg Apple Band"が現れたこともあって(その「運命」は「サタデー・ナイト・フィーバー」のサントラ盤に収録されています)、フランス語に堪能だった当時の彼女の発案で、バンド名を”Chic”に変えます(ナイル自身はその名前は嫌だったそうです)。

  そしてデビュー曲「ダンス・ダンス・ダンス」がいきなり大ヒットします。


CHIC - Dance, Dance, Dance (Official Music Video)

 

 そして、彼らに目をつけたモデルでシンガーのグレイス・ジョーンズが制作の打ち合わせをしたいと、この曲の歌詞にも出てくる「スタジオ54」という当時セレブたちが集まることで有名なディスコに二人を呼び出します。1977年の大晦日で、彼らは一番高い服を着て行ったそうです。

 

 しかし、彼女がゲストリストに名前を入れ忘れたせいで、彼らは門前払いを食らいます。すごすごとナイルのアパートメントに戻った二人は、むしゃくしゃした気持ちを晴らそうとシャンパンを飲みながらジャム・セッションを始めたそうです。シンプルなリフのグルーヴに合わせて当初は”Fuck Off"と言っていたそうですが、いい曲になりそうな感じがしたのでしょう、”Fuck Off"じゃさすがにまずいということで、”Freak Off”にして、それもよくないということで”Freak Out"にたどり着き、「おしゃれフリーク」の原型が出来上がったのだそうです。

 

「おしゃれフリーク」の出来が良かったので、それまでシックのセカンドアルバムからのシングル候補にしていた「He's The Greatest Dancer」をシスター・スレッジにあげることにしたようです(こちらも大ヒットしました)。

 


Sister Sledge - He's The Greatest Dancer

 

   "黒人版ロキシー・ミュージック”というコンセプトも見事ですが、彼らの素晴らしさはやはりそのサウンド・スタイルです。

 サウンドとしては割合”なんでもあり”だったディスコに、文体というか、”音楽的な骨格”をもたらしたのが彼らだったのだと思います。

 

 ダンス・ミュージックの”ミニマリズム”とでも呼んだ方がいいのでしょうか、ギターのカッティングだけ、またはベースラインだけで”ディスコ”だとわかる、そんなスタイルを彼らが編み出したと言ってもいいんじゃないでしょうか。

 

 この二人は、まさに”ディスコの匠”のような存在です。シンプルに聴こえても、実は誰も真似ができない技能を身につけています。

 

 ナイルもエドワードはジャズ、フュージョン系、そしてドラムスのトニー・トンプソンはロック系の人で、いわばディスコの部外者です。でも、だからこそかえって、客観的な目線でディスコ・ミュージックを分析し、再構築できたのかもしれません。

 

 彼らのレコーディングは息詰まると、いったんすべて捨ててシンプルなところからやり直すというやり方だったようです。

 ”シンプルを極める”

 それはナイル・ロジャースの原点が反映されているのかもしれません。

 ギターを始めた時に彼は左手は全く使わず、右手だけでひたすらリズムの練習を何週間もしたといいいます。そして、開放弦の音階だけで作れるパターンをひたすら徹底的に模索したと言います。

 彼のプレイは基本的にギターの6本の弦のうち3本だけを使っているそうです(有名なヒット曲には2本で作られたものもあるそう)。そして、曲の間、右手は止まることはないそうです

 

 シンプルを極めたからこそ、時間に淘汰されることなく、若い世代からリスペクトされているわけです。

 

 最後は、ディスコの、いや、今日に至るクラブ・ミュージックの大元となる「骨格」を提示したと僕が考えている、彼らの代表曲「グッド・タイムス」を。

 

www.youtube.com

 

 

 

popups.hatenablog.com

popups.hatenablog.com

popups.hatenablog.com

popups.hatenablog.com