まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「おしゃれフリーク(Le Freak)」シック(1978)

 おはようございます。

 今日はシックの「おしゃれフリーク」。数あるディスコ・ナンバーの中でも最大級のヒットで、ビルボードが2013年に出した55年間の歴代TOP100の21位、これはディスコものでは最高位です。

 シックはもともとジャズ・フュージョンのプレイヤーであったナイル・ロジャース(ギター)とバーナード・エドワーズ(ベース)を中心に結成されました。彼らは”The Bigg Apple Band"というグループをやっていましたが、ナイル・ロジャースがイギリス滞在中にロキシー・ミュージックのライヴを見て、”黒人版ロキシー・ミュージック”というコンセプトを思いつきます。

 ロキシー・ミュージックは、メンバーもお客さんも全て美しく着飾っていて、目にするあらゆるイメージが統一されていて、ナイルはそこに惹かれたそうです。


Roxy Music - Both Ends Burning

 彼はそういうイメージに合った外見のメンバーを集め、ベートーヴェンの「運命」のディスコ・ヴァージョンをやって話題になっていた”ウォルター・マーフィー&The Bigg Apple Band"が現れたこともあって(その「運命」は「サタデー・ナイト・フィーバー」のサントラ盤に収録されています)、フランス語に堪能だった当時の彼女の発案で、バンド名を”Chic”に変えます(ナイル自身はその名前は嫌だったそうです)。

  そしてデビュー曲「ダンス・ダンス・ダンス」がいきなり大ヒットします。


CHIC - Dance, Dance, Dance (Official Music Video)

 そして、彼らに目をつけたモデルでシンガーのグレイス・ジョーンズが制作の打ち合わせをしたいと、「スタジオ54」という当時セレブたちが集まることで有名なディスコに二人を呼び出します。1977年の大晦日で、彼らは一番高い服を着て行ったそうです。

 しかし、彼女がゲストリストに名前を入れ忘れたせいで、彼らは門前払いを食らいます。すごすごとナイルのアパートメントに戻った二人は、むしゃくしゃした気持ちを晴らそうとシャンパンを飲みながらジャム・セッションを始めたそうです。シンプルなリフのグルーヴに合わせて当初は”Fuck Off"と言っていたそうですが、いい曲になりそうな感じがしたのでしょう、”Fuck Off"じゃさすがにまずいということで、”Freak Off”にして、それもよくないということで”Freak Out"にたどり着き、「おしゃれフリーク」の原型が出来上がったのだそうです。

「おしゃれフリーク」の出来が良かったので、それまでシックのセカンドアルバムからのシングル候補にしていた「He's The Greatest Dancer」をシスター・スレッジにあげることにしたようです(こちらも大ヒットしました)。

 


Sister Sledge - He's The Greatest Dancer

   "黒人版ロキシー・ミュージック”というコンセプトも見事ですが、彼らの素晴らしさはやはりそのサウンド・スタイルです。

 サウンドとしては割合”なんでもあり”だったディスコに、文体というか、”音楽的な骨格”をもたらしたのが彼らだったのだと思います。

 音楽の”ミニマリズム”とでも呼んだ方がいいのでしょうか、ギターのカッティングだけ、またはベースラインだけで”ディスコ”だとわかる”かたち”を彼らが編み出しました。

 この二人は、僕は”ディスコの匠”のような存在です。シンプルに聴こえても、実は誰も真似ができない技能を身につけています。

 ナイルもエドワードはジャズ、フュージョン系、そしてドラムスのトニー・トンプソンはロック系の人で、いわばディスコの部外者です。でも、だからこそかえって、客観的な目線でディスコ・ミュージックを分析し、再構築できたのかもしれません。

 

 彼らのレコーディングは息詰まると、いったんすべて捨ててシンプルなところからやり直すというやり方だったようです。

 ”シンプルを極める”

 それはナイル・ロジャースの原点が反映されているのかもしれません。

 ギターを始めた時に彼は左手は全く使わず、右手だけでひたすらリズムの練習を何週間もしたといいいます。そして、開放弦の音階だけで作れるパターンをひたすら徹底的に模索したと言います。

 彼のプレイは基本的にギターの6本の弦のうち3本だけを使っているそうです(有名なヒット曲には2本で作られたものもあるそう)。そして、曲の間、右手は止まることはないそうです

 

 シンプルを極めたからこそ、時間に淘汰されることなく、若い世代からリスペクトされているわけです。

 

 


CHIC - Le Freak (Official Music Video)

 

Le Freak

Le Freak